第193話 デスノートに気を取られた


「デス、ノート?」


「はい、デスノートです!」


「そうかー、デスノートかー」


 今のやりとりにこれといった意味はないのだが、デスノートという明らかに名前からして強いスキルを獲得してしまったとなると、こんな反応にもなってしまうだろう。


 それに、このデスノートを悪魔の装備を着用することで手に入る、というのも問題なのだ。強くないわけがない。


「それで、効果はどういう感じだ?」


「はい、効果は相手の名前を知ることによって相手を殺すことができる、というものです。相手の死因も指定可能ですが、使用者が死ぬと、デスノートで殺してきた相手の死因を全て体験する、ともありますね」


「つ、強い……」


 ぶっ壊れ、とまでは行かないが、名前を知るだけで殺せるのは悍ましい。もう殺し放題じゃなかろうか・


 ただ、その代償が悪魔っぽいなと感じた。言ってしまえば代償はゼロのようなものなのだ。システム的に何か弱体化を食らうわけでもないからな。


 それでも、この代償は確実に響いてくる。相手を倒せば倒すほどそれは重くなるし、死というものは常に付き纏ってくるからな。


 一人でもデスノートで殺してしまったら、地獄の始まりだな。デスノートで簡単に殺せることを覚えてしまった上に、自分が死ぬときはそれを体験しなければならない。


「なあ、このデスノートは一日一回までなのか?」


「んー、いえ特にそういう縛りはないようです」


 これはこれはまさに悪魔の所業だな。このスキルを手にしたものは浮かれて何人かは確実に殺してしまうのだろう。そして全能感に溺れてさらに殺戮を繰り返す。


 そして、時が経ち忘れて頃にそれはやってくる。自分の死を何倍にも膨らませて……


 この代償が絶妙にいやらしいんだよな。賢いものならば使わないのだろうが、、、さて、彼はこのデスノートを行使するのだろうか?


「あ、先輩、彼が移動しました。向かう先は恐らく……悪魔の研究所ですね」


 ほう、まだすぐには使わないか。まあ、それもそうだな。躊躇っているのだろうな。これは流石の彼にも手が余る代物だろう。


 なんせ彼は死ねば死ぬほど強くなるからな。その度に変な死因を体験されるのは困ったものだろうからな。


「あ、彼が心臓を渡していますね、あれ? 悪魔なんて倒していましたっけ?」


「ん? 悪魔?」


「あぁっ! そうだ! 帰らずの塔の最後の敵悪魔でしたよ! 彼はそいつの心臓を持って帰っていたのか! あれ、ってことはもしかして?」


「も、もしかして?」


 不味いぞ、なんだか嫌な予感が体全身から感じる。やめてくれ、やめてくれ!


「あ、ほらね。彼が無限魔力を獲得しましたよ」


「無限魔力、だと……?」

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