第3話 SSZS


「せ、先輩! さっきの彼が面白いことしてますよ!」


「ん? さっきの彼? ってことはステータスを振らなかった彼か? どうせすぐにステータスを振ったんじゃないのか?」


「ち、違いますよ! そんな事で呼ぶ訳無いじゃないですか! まず、SSZSが彼に無謀なる者、という称号を与えたんです! 凄くないですか? スズちゃんも彼に注目しているという事ですよ!」


「ほ、本当か! 確かに、ステータスを全く振らずにゲームをスタートするということは、ありそうで無かったからな……それにしても、SSZSも彼に注目しているのか……実際、効果は大したことは無いが、それでも、SSZSが称号を与えた、ということだけでも、注目に値するな……」


 説明しよう、SSZSとは、スキル称号自動獲得システム、のことである。これは、読んで字の如くプレイヤー、一人一人の行動を参照し、自動的にスキルや称号を獲得させるシステムのことだ。


 それぞれのプレイヤーの行動に加え、その時の心理状況まで考慮されて獲得スキル等が決定されるため、一見、同じ行動に見えても獲得したスキルは違う、ということはザラにある。そして、それが今このゲームの売りの一つにもなっているのだが。


 我々は、スキルに関して、従来と同じようにある特定の行動に応じてスキルを獲得させていく、という一般的なシステムを採用しようとしていた。しかし、それに対して異を唱えたの人がいたのだ。それが彼女、そう、あの後輩だ。


 彼女は従来の方法では最初は良くとも、いずれ飽きられる、プレイヤー一人一人に夢を見させなければならない、そう主張した。最初は反対意見が多かったが、彼女の発言は理にかなったものだったのだろう。いつしか、素晴らしいゲームにするにはこれが必要だと、皆が感じるようになっていた。


 その背景には、それを実現しようと夜遅くまで残って、完成させようとする、彼女の姿も大きかったのだろう。その姿が皆の心を動かしたと私は思っている。まあ、本人に言っても、否定するだけだろうがね。


 そして、今こうして、SSZSがこのゲームの中枢を担っていると言っても過言ではない程に、その重要性を高めてきた。


 SSZSは略称であるにも関わらず、非常に言いづらい。そのため、呼びやすいように様々な、別名、渾名がつけられている。人によってはそのままいう人もいるが、それはあくまでも、少数派だ。多くの人は自分が呼びやすい名前を付けている。


 ある人は、スーズと呼んだり、ある人はスリーエスゼット、という人もいる。多くの人がスーズだが、私を含め少数派がスリーエスゼットを使っている。主流なのはこの二つだが、細かく見れば沢山ある。例えば、産みの親である後輩は愛称も込めてスズちゃんと呼んでいる。これは彼女ならではの呼び方だろう。その他にも、元の名前から取ってスキル称号システム、とシンプルに呼ぶ人もいるな。


「ぱい、先輩、せーんーぱーいーー!!」


「うぉっ! すまんすまん、悪いな」


「悪いな、じゃないですよー! すぐに人の話を聞かずに自分の世界に入り込むんですからー、人の話くらい最後まで聞いてくださいよ、全く」


「いや、本当に悪いと思ってる。昔からの癖なんだから、お前も良く知ってるだろう。それで、その続きは?」


 後輩は悪い奴じゃないんだが、少々説教癖があるのがな、玉に瑕といったところだな。


「はぁ、もう、そうですけど、少しは改善しようとしてくださいよね!

 話の続きですが、その彼、なんと自殺をしてるんです。しかも延々と、見てるこっちの方が気が狂いそうになるくらい、絶叫しながら、何度も死んでいくんですよ。

 し、か、も、なんとこの人痛覚設定を100%に設定しているんです」

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