第57話
そう。
マコッチの恋人欄になぜかニャーネルさんの名前が記載されていたのだ。
マコッチも同じように見えているということは、オレの見間違いではなさそうだ。
同じようにニャーネルさんの恋人欄を見てみると、こちらはマコッチとオレの名前が記載されていた。
「ど、どうしてっ!?どうしてなのぉー。」
マコッチは力が抜けたようにネズミのぬいぐるみを抱きしめてその場にへたり込んでしまう。
「ごめんなさいね。このネズミのぬいぐるみは他のプレイヤーに渡した時点で男女関係なく恋人関係になってしまうのよ。そして、一度プレゼントされたネズミのぬいぐるみは他の人にプレゼントすることはできない仕組みになっているの。ちなみに、このネズミのぬいぐるみを取得する方法は今のところガチャのみね。そのうちイベントの商品としての配布も考えているけどね。」
ニャーネルさんはそう言って、パチンッとウインクをした。
っていうか、ニャーネルさん。
それならそうと、マコッチに希望を抱かせる前にハッキリと言えばいいのに。そうすればマコッチがここまで悲しむこともなかっただろうに。
まったく、ニャーネルさんってば遊びすぎだよ。
「ちなみに今回、悪だぬきのぬいぐるみというアイテムも追加したよ。このアイテムは課金アイテムだから課金してくれれば誰でも手に入れることができるわ。」
ニャーネルさんがマコッチに向けてにっこりと笑みを浮かべながら告げる。
なんだか、その笑みも胡散臭く感じてしまうのは気のせいだろうか。
しかも、【悪だぬき】ってなんだよ。
名前からして良いアイテムじゃないような気がしてならないんだけど。
「・・・悪だぬきのぬいぐるみ?」
マコッチは新たなアイテムの出現に恐る恐る顔を上げた。
マコッチの頬に残る涙の後がなんとも痛ましい。
「そっ。悪だぬきのぬいぐるみ。1個1000円の課金アイテムでーす。」
ニャーネルさんはマコッチの涙を見ても心が痛まないのか、いつも通りのテンションでマコッチにアイテムを紹介している。
しかし、悪だぬきのぬいぐるみってネーミングセンス悪すぎだろう。
名前からしてあまり良い効果をもたらすぬいぐるみではないような気がするのだが。
「課金・・・アイテム?それで・・・エンディミオン様が私の恋人になるの?」
ゆらりとマコッチが立ち上がり、ニャーネルさんに問いかける。
「ん~。まあ、直接的には無理だねぇ。悪だぬきのぬいぐるみを渡してもネズミのぬいぐるみみたいに恋人にはなれないかなぁ。」
「じゃあ、その課金アイテムって何なんですか?」
なんだ。
恋人になるアイテムじゃないのか。
じゃあ、いったいどんな効果があるアイテムなのだろうか。
このタイミングでニャーネルさんがすすめてくるのだから、勘ぐってしまう。
「ふっふっふっ。聞いて驚いてちょうだい。この悪だぬきのぬいぐるみをプレゼントすると、プレゼントされた相手は恋人との破局イベントが発生するのよ!!」
「えええええっ!?なにそれ!!?」
「はっ!?えっ!?」
声高らかにニャーネルさんが告げた内容にマコッチとオレは驚きを隠せない。
まさか恋人同士を破局するためのイベントを発生させるアイテムだなんて・・・。
社長さんよくそんなアイテムを作成して課金アイテムにすることを許可したな・・・。
って待てよ。ニャーネルさんのことだから、社長さんに許可を取ってないとか・・・?
あり得るな。
だって、ニャーネルさんだもんなぁ。
「そ、そそそそそそれちょうーだいっ!!」
マコッチが身を乗り出してニャーネルさんに向かって手を差し出す。
ああ、そうか。
マコッチがニャーネルさんから悪だぬきのぬいぐるみを貰えば、もれなくニャーネルさんとの破局イベントが待っているからか。
だから、マコッチはそんなに乗り気なんだな。
そんなんにニャーネルさんと恋人同士だということは嫌だったのだろうか。
「んー。恋人同士だとぉ、プレゼントできませんっ!」
「そ、そんなぁ!!課金するしかないのね。」
「そういうことぉ~。」
にまぁ~とニャーネルさんがどこか胡散臭い満面の笑みを浮かべる。
おいおいおい。
ニャーネルさんってば、マコッチをわざと自分の恋人にしておいて破局させるために悪だぬきのぬいぐるみを課金させるとは・・・。
なんてアコギな商売なんだろうか。
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