第38話
「えっ?………キャッティーニャ………オンライン?」
知ってるもなにも、オレがマコトから教えてもらって今、プレイしているのがキャッティーニャオンラインだ。
まさか、美琴姉さんがキャッティーニャオンラインの運営側だったなんて。
どうして、数あるゲームの中で美琴姉さんはキャッティーニャオンラインの運営なんだろう。
あれ?
ということは、寧々子さんもキャッティーニャオンラインの運営?
「うん。知らないかな?」
「………知ってる。毎日プレイしてるから。」
「わぁ!ほんとう!!じゃあもしかして明日マコトちゃんと遊ぶのはキャッティーニャオンライン?」
「………うん。」
ちょっと待って。
頭の中が今、すごく混乱しているんだ。
美琴姉さんの問いかけに答えることは出来るが、まるでうわの空だ。
だって、キャッティーニャオンラインの運営だよ?
オレ、運営側じゃないかって人三人は見当がついているんだ。
オレの彼女のミーシャさんに、ギルドの受付嬢のニャーネルさん。そして、ギルマスのガーランドさん。
キャッティーニャオンラインの運営が何人いるかわからないけれども、三人も知っているってことは多い方なんじゃないだろうか。
って!!
あれ?
あれれ?
今、ものすごい仮説が思い浮かんでしまった。
その仮説というのは、ミーシャさんが美琴姉さんだという仮説だ。
ミーシャさんと美琴姉さんの年齢が一緒。
これは一致したとしても別人でも別におかしくはないだろう。
次にミーシャさんの弟の年齢がオレと同じこと。
これも、それほどおかしなことではない。
兄弟がいる家庭も多いのだから。
次に引っ越しする日が今日だってこと。
これに関してもものすごい偶然だな。と、思うことは出来る。
だけど、今知った美琴姉さんがキャッティーニャオンラインの運営だということ。
これは美琴姉さんがミーシャさんだという確率がかなり高いんじゃないだろうか。
さすがにここまで一致してしまったら、本人なんじゃないかと思ってしまう。
いや、でも、まさか………。
「優斗?どうしたの?」
「えっ、あ、ううん。なんでもない。」
「そう?」
突然うわの空になってしまったオレを不思議そうにみる美琴姉さん。
どうしようか。
オレは混乱してきてしまった。
もし、ミーシャさんが美琴姉さんだったらオレはどうすればいいんだろうか。
オレ、ミーシャさんのこととても気になってたんだ。
ゲームの中での恋人だけど、現実でも恋人にしたいくらいだった。
性格も所作もオレの理想そのもので、だからいつかミーシャさんとリアルでも会いたいと思っていた。
………思っていたんだ。
そして、もしよかったらリアルでも付き合えないかって思ってたんだ。
それなのに、ミーシャさんが美琴姉さん?
美琴姉さんがミーシャさん?
「優斗?ほんとにどうしたの?大丈夫?」
美琴姉さんがうつ向いてしまったオレの顔を心配そうに覗きこんでくる。
「あ………あの………美琴姉さん。………あの………。」
美琴姉さんがミーシャさんなのか確認した方がいいのだろうか。
でも、もし美琴姉さんがミーシャさんだとしたら確認するのがこわい。
肯定されてしまったらどうすればいいんだろうか。
ミーシャさんが美琴姉さんだと確定してしまったら、オレは今まで通り美琴姉さんを姉さんとして見れるのだろうか。
「ほんとにどうしたの?優斗?キャッティーニャオンラインが原因?」
心配そうにオレを見つめる美琴姉さんとミーシャさんの笑顔がダブって見える。
オレはブンブンと頭を横に振った。
違う。違う違う違う。
美琴姉さんはミーシャさんじゃない。
ミーシャさんは美琴姉さんじゃない。
違う。違うんだ。
だから、オレはミーシャさんと恋人でも問題はないんだ。
「………なんでもないんだ。ただ、オレが今夢中になっているゲームの運営に美琴姉さんが関わってるって知って混乱してるだけなんだ。思ってもみなかったら。」
「そう?それだけ?」
美琴姉さんは、鋭い。
ことオレのことに関しては、母さんですら気づかないことに美琴姉さんの方が先に気づいてしまう。
オレがクラスメイトに虐められていた時もそうだ。
いち早く美琴姉さんが気づいたんだった。
「それだけ。マコトもキャッティーニャオンラインにハマってるから、マコトも知ったらきっと驚くと思うよ。」
「そうね。」
オレは話題をマコトのことにすり替える。
美琴姉さんはまだオレのことを疑っているようだったが、オレが話したくないことを察したのか、これ以上は追求されなかった。
「優斗、私もね。運営だってこと隠してキャッティーニャオンラインをテストプレイしてるのよ。もしかしたらそのうち優斗にキャッティーニャオンラインで会うかもしれないわね。」
「そうだね。オレ、美琴姉さんだってすぐにわかるかな。」
「ふふっ。どうかしらね?でも、私はきっと優斗だってすぐにわかるよ。だって、優斗のことが大好きだから。」
美琴姉さんは、そう言ってオレの頭をそっと撫でた。
オレの髪を撫でる美琴姉さんの優しい手。
小さい頃からオレを守ってくれた手。
その手にオレは身をまかせるように、頭をすりよせた。
ねぇ。美琴姉さん。
キャッティーニャオンラインでの美琴姉さんの恋人がオレだったら、美琴姉さんはどうする?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます