第30話

 


「エ、エリアル様のお気に入りぃーーーーー!!?」


「なんだってーーーーーー!!」


「そ、そんなバカな。」


「エリアル様は特別な人を作らないと思ってたのにぃーーーー!!!?」


「エリアル様ぁ~~~~~~!!」


ギルドは一瞬の静寂の後に火がついたように鳴き叫ぶ冒険者たちで収集がつかなくなってく。


中には泣き出してしまっている冒険者までいる。


・・・エリアルちゃんってそんなに人気が高かったのだろうか。


しかし、エリアルちゃんと友達になっただけでその反応は・・・。と考えてハタと止まる。


そう言えば、今はもう友達ではなかった。


神のいたずらかいつの間にかエリアルちゃんとは恋人になってしまっていたんだった。


これは・・・言えない。


エリアルちゃんと恋人だなんて言ったらどんなことになるだろうか。


考えただけで悲惨なことには違いない。


「どうやってエリアル様に取り入ったんだよぉ~~~!!」


「エリアル様!エリアル様ぁ~~~~~!!!」


「呼んだかしら?」


ギルド内の冒険者たちがエリアルちゃんの名前を叫びだすと、ギルドの入口からエリアルちゃんの声が聞こえてきた。


そこにいた面々はギギギギギッと音がしそうなほどぎこちなくエリアルちゃんの声がした方を向いた。


静寂が再び辺りを包み込む。


そうしてしばらくの間がたち、


「「「「「エリアル様っ!!!!」」」」」


男どもはエリアルちゃんの姿を確認して歓喜の悲鳴を上げた。


そして瞬く間にエリアルちゃんの周りに人だかりができる。


「むぅ。私より人気があるなんて許せませんね。」


エリアルちゃんに群がる冒険者たちの姿を見て、ニャーネルさんが頬を膨らませてポツリと呟いた。


「エリアル様っ!そこにいる男とはどういう関係なんですかっ!?」


「ギルマスからエリアル様のお気に入りだという話を聞いたんですが、嘘ですよね!?嘘だって言ってくださいっ!!」


「エリアル様っ!!」


「エリアル様っ!!」


辺りはエリアルちゃんの登場で余計に騒がしくなった。


エリアルちゃんは冒険者たちに囲まれているが余裕の表情で辺りを見回している。


その顔には笑みまで浮かんでいる。


エリアルちゃんはこのような状況に慣れているのだろうか。


ニヤリッ


と、エリアルちゃんがオレの方を見て唇の端を上げた。


その表情を見たオレは背筋に冷たい汗が流れおち、何やら嫌な予感がした。


そして、その予感は的中した。


エリアルちゃんが急にオレに抱き着いてきたのだ。


「え、エリアルちゃんっ!?」


ギュッと抱き着くエリアルちゃん。


その瞬間、辺りからは野太い悲鳴が聞こえてきた。


「エンディミオン様は私のダーリンだから手を出さないでくださる?」


ぎゅっとエリアルちゃんがオレに抱き着いたまま辺りを見回して爆弾発言をした。


エリアルちゃんの爆弾発言の投下でさらにギルド内の事態は悪化していく。


混乱している冒険者が辺りを奇声を上げて走り回る。


また、ある冒険者は打ちひしがれてその場にうずくまって涙を流している。


また、ある冒険者は悲壮感を漂わせながらふらふらとギルドを出て行ってしまった。


「エリアルちゃん。やりすぎ・・・。」


屍累々の様を見て、オレはげんなりと呟いた。


「さて、他の冒険者がいなくなったところで、ニャーネルとガーランドに話があるわ。防音の効いた部屋を用意してくださるかしら?」


 


 


 


 


☆☆☆


 


 


 


エリアルちゃんの鶴の一声で用意された部屋はギルドの3階にある一室だった。


なんでもここでは重要な会議をおこなう場なのだとか。


そのため、防音設備も効いているということだ。


ただ、オレたちしかいないのに部屋が広すぎるのが難点だ。


ちなみにオレたちと言うのはエリアルちゃんとニャーネルさんとガーランドさんとミーシャさん、それにマコッチとオレの6人だ。


この場を用意していったいエリアルちゃんは何を話そうとしているのだろうか。


「まずは座りましょう。」


エリアルちゃんはそう言って近場の椅子に腰かけた。


それに続いてオレたちも近場の椅子に座る。


そしてエリアルちゃんが何を言い出すのかという不安いっぱいな表情でエリアルちゃんを見つめた。


「最近・・・というか今日ね。今日実装された猫のぬいぐるみって知っているかしら?ああ、ニャーネルさんは知っているわよね?」


どうやら話題は猫のぬいぐるみのことのようである。


確か、ミーシャさんがニャーネルさんが作ったというようなことを言っていたような気がするが・・・。


【猫のぬいぐるみ】と聞いて、ニャーネルさんの肩がビクッと跳ね上がる。


ガーランドさんがチラリと視線をニャーネルさんに向けた。


「・・・知ってるわ。」


ニャーネルさんは観念したように小さく呟いた。


「その効果も知っているわね?」


「・・・ええ。お知らせに書いてあったもの。」


え?


お知らせに書いてあったの?


オレ、お知らせなんて見なかったから知らなかった。


見てたら不用意にエリアルちゃんに渡すようなことはしなかったのに。


「そうね。では猫のぬいぐるみを今日ゲットできた幸運な人は何人いるの?」


「それはっ・・・。」


そんなことは運営でない限りはわからないだろう。


「では質問内容を変えるわ。今日、誰かが猫のぬいぐるみをゲットできる確率は?」


エリアルちゃんの射るような視線がニャーネルさんに向けられた。


「・・・0.00001%。全アカウントのうち1人もらえればいい方よ。」


「そう。やっぱりね。じゃあ、虹色の軌跡が得られる確率は?」


「・・・0.0001%。今、持っている人は10人にも満たないわ。」


「そう。では、その二つを一週間以内に得られる確率は?」


 


 


 


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