第25話

「な、なんかのバグかなぁ………?エリアルちゃんがオレの恋人になってるんだけど。」


「えっ!?」


ステータス画面を見るとエリアルちゃんがオレの恋人になっていた。


どうしてだろうか、オレにはミーシャさんと言う彼女がいるというのに。


マコッチも驚いて声をあげた。


「な、なんで!?どうして!?猫のぬいぐるみを渡すと相手と恋人同士になれるけど!!けど!!既に恋人がいる人とは恋人になれなかったはずなのに!!」


「はい!?」


マコッチの言葉にオレは目を見張った。


まさか、猫のぬいぐるみを渡すと相手と恋人になるだなんて思いもしなかったのだ。


それに、確かミーシャさんがこのゲームで恋人同士になるのは難易度が高いって言ってたし。


虹色の輝石のような渡した相手と恋人同士になるアイテムは希少だといっていた。


そんなアイテムが何故に次から次へとオレの元に来るのだろうか。あり得ないだろう。


「えっと、猫のぬいぐるみってレアアイテムだったの?」


「そうなのよ。恋人がなかなか出来ないという苦情が多発してたから、今朝から実装されたアイテムなのよ。入手方法は不明だったんだけど………。」


「あ、ミーシャさん。」


オレの疑問に答えてくれたのは、マコッチでもエリアルちゃんでもなくミーシャさんだった。


やばい。


気まずい。


ミーシャさんがいるのにエリアルちゃんとも恋人になってしまうだなんて、本当に気まずい。


「エンディミオン様ったら、私のいない間に彼女を増やすだなんて………。」


ミーシャさんはオレを見て困ったような顔をする。


「でも、猫のぬいぐるみを持っていても用途がわからなければエリアル様のようなぬいぐるみが似合う幼い少女に渡してしまうわよね。うん。仕方ないわ。」


「あ、うん。そうなんだ。可愛いぬいぐるみだったから、オレが持ってるよりエリアルちゃんに渡した方が有効活用できるかなと思って………。こんなつもりでは………。」


「仕方ないわ。しかたない、仕方がないのよ。」


ミーシャさんはまるで自分に言い聞かすように呟いている。


「ご、ごめん。ミーシャさんオレが………。」


「エンディミオン様は謝ることはないわ。謝るのはニャーネルよ。」


「へ?ニャーネルさん?」


「まあ!何故かしら?」


「なんでニャーネルさん?」


ミーシャさんが、オレが二人目の恋人を作ってしまった原因がニャーネルさんにあるという。


どうしてだろうか。


ニャーネルさんにオレは会った記憶もないのに。


「だって、猫のぬいぐるみをプレゼントしたら恋人になるようにしようって言い出して実装したのは、ニャーネルなのよ。ガーランドに言ってニャーネルを叱ってもらわなければ。」


「え?」


「え?」


「まあ!?」


ミーシャさんの言葉きオレ達は驚きの声をあげた。


まさか、ギルドにいるニャーネルさんが運営側だとは思わなかったのだ。


マコッチもエリアルちゃんもニャーネルさんが運営側だとは知らなくて驚いたのだろう。


でも、なんでミーシャさんがニャーネルさんが運営側だということを知っているのだろうか。


しかも、猫のぬいぐるみの件がニャーネルさんのせいだということもなぜ知っているのだろうか。


「ミーシャさんって運営の人?」


いち早く声を出したのはマコッチだった。


ああ、そうか。


ミーシャさんが運営側なら、ニャーネルさんのことも知っていて当然だろう。


マコッチの言葉にオレは納得した。


「え、ええ!?ち、違いますよぉ!!(運営ってバレちゃいけないのになんでバレるのっ!?)」


ミーシャさんは運営とはバレてはいけなかったのか、大慌てで否定をしている。


でも、その否定の仕方だと、あまり説得力がない。


むしろ、自分は運営側だと言っているようなものだ。


「ふぅん。そうなのね。納得だわ。でも、ニャーネルってばたまには良いことをするのね。見直したわ。」


エリアルちゃんは、そう言って嬉しそうに微笑んでいた。


ミーシャさんとニャーネルさんが運営側と知ってもそれほど気にしていないらしい。


でも、ニャーネルさんとミーシャさんが運営側ということは、ガーランドさんもきっと運営側の人間なんだろう。


「まあ、いっか。」


「な、なにがですか?(やっぱりエンディミオン様は私が運営側の人間だったら嫌なのでしょうか?)」


「ミーシャさんが運営側だとしても違ったとしてもってこと。ミーシャさんは、ミーシャさんだからね。」


結局はそういうことだ。


ミーシャさんが運営側だろうか、運営側じゃなかろうが何も変わらない。


「エンディミオン様・・・。(エンディミオン様は本当に優しい。現実の彼氏もこんなに優しい人だったらいいのにな。って、彼氏いないけどさ。)」


ミーシャさんは何故か感極まったように、潤んだ目でオレを見つめてくる。


ん?オレ、なんかしたっけ・・・?


「ニャーネルさんが、運営側。ニャーネルさんが、猫のぬいぐるみのアイテム制作者。ニャーネルさんが・・・。」


マコッチはオレたちから離れて何やらブツブツと小さく呟いていた。


そうして、何やら考え込んでいたかと思ったら、勢いよく顔をあげた。


「ちょっとあたし、ギルドに行ってきます。」


「え?あ、ああ。気を付けてな。」


そうして、マコッチはギルドの方にかけていってしまった。


急にどうしたんだろうか。


なにか急用でも思い出したのだろうか。


そう思ってオレはマコッチを見送った。


「ところで、エンディミオン様。マコッチさんとエリアルちゃんと一日中デートするって本当ですか?」


「えっ・・・。」


どうやらEXP2倍のチケットのやりとりからミーシャさんは聞いていたようだ。


どうしようか。


ミーシャさんとのレベル差を縮めたいからマコッチを誘ったのに。


っていうか、デートってなに!?


デートじゃないんだけどっ!!単に短期パーティ組んでレベル上げをしにいくだけなんだけど。


「えっと、ミーシャさんも一緒にどうですか?」


「ありがとう。いつかしら?」


「まだ、日にちは決めていないんです。マコッチ行っちゃったし。」


「そう、じゃあ。決まったら教えてね。ただ、引っ越しが今週の土曜日だからその日だったら無理だから諦めるわ。」


ミーシャさんは残念そうに呟いた。


「そっか。土曜日が引っ越しなんですね。手伝いはいりますか?」


ん?


土曜日、引っ越し・・・?


ミーシャさんに手伝いを申し込んでいる場合じゃないじゃないか。


その日は美琴姉さんの引っ越しの手伝いだったんだ。


「大丈夫よ。引っ越し業者も来るし、それに

弟も手伝いに来るからね。」


ミーシャさんはそう言って笑った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る