第7話 その魔王出会いにつき
「お兄ちゃん、帰りましたよ。」
木造でモクモクと煙の上がる煙突のついた小さな一軒家には鉄を打つ鉛の音が響き渡っていた。
少女は木の扉を前に押して開ける。
扉を開けると、頭に白いタオルを巻いた半裸の男がいた。男は額から汗を垂れ流しながら何かをひたすら打つ。
「おっ!帰ったか我が妹よぉぉお!」
男は勢い良くその場から少女に飛び付く。
顔を少女の服に埋め込み左右に振る。
「ちょっっお兄ちゃんっ!やめてくださいよっ!」
少女はその頭を両手で掴みひっぺがそうとする。
「今日はっ、お客さんも来ているんですからっ」
「何だとッッ!?」
声がこもっている。顔を少女の服に埋め込んだままで喋る。
「とりあえず顔を離してくれませんか…臭いです。」
「そうかそうか、いい臭いだろぉお」
「日本語分かりますか。後語尾が気持ち悪いので止めてください。」
「あ、あの~」
後ろからルルが声を掛ける。ルルと魔王は今だに家の内部に入っていなかったからだ。
「女の声ッッ!?」
「うぉっ!ちょっ!何するんですか!」
男は少女に顔を埋め込んだまま家の内部に入っていく。
1度扉が閉まった。
「勇者様…どうします?」
魔王はルルの肩を軽く二回叩いた。
魔王の顔は酷く強張っている。
「どうしました…?勇者様」
「ルル……この家には入ってはいけない……ッッ」
「いやまぁ…あの女の子は大丈夫だと思いますよ。」
魔王は目をつむり顔を左右に振る。
「臭いがするんだ……」
「臭い……ですか……?」
魔王は目を開けてルルを見つめる。
「あぁ……
「聞いてません勇者様」
中から男の声が聞こえて来る。
「お客さん…どうぞっ!入ってください!」
ルルと俺は少し見つめ合い扉を開く。
少し頭を下げよそよそしく入る
「あ、あの~お邪魔します~?」
そこにはさっきの少女と男が2人の並んで立っていた。
男は頭にタオルを巻いていた。
青い髪が首元まであり少し身長が高く、キリッとした目に高い鼻。はたから見れば少しイケメンとでも言うべきであろう。
「お得意様にございますね!本日はどういったご用件でしょうかっ!?」
男は指を鳴らし前髪をかき上げる。
そこにはキラキラとした何かが見えたが確実に幻想だ。
ルルが少し手を胸にかざしお辞儀をする。
「私はルルです。」
魔王もそれに続き一歩前には進み喋る。
「俺は……へーっと勇者ゾー」
「私の名前はニコラスと言いますルルさん。」
男はルルに近付き手を取る。
ルルは少し苦笑いをした。
「おいテメェ何無視してんだごらぉ」
魔王はニコラスを蹴り飛ばす。
「フッ……男には興味が無いっ……失せろ」
魔王はニコラスの頬を千切れんばかりに引っ張る。
「何だお前はルルに触りやがってぇぇえ」
負けじとニコラスもやり返す。
「貴様こそ我が妹に気安く喋りかけるな」
それを横目に少女がルルに近付く。
「私はカナエ。よろしくねルルさん。」
ルルは笑顔ではにかむ
「えぇ…よろしくねっ!」
日が暮れ、夜になり4人がテーブルを囲う。
「そうか……刀を買いに来たわけじゃ無いのか……」
ニコラスが頭を抱えテーブルにだれる。
「だから最初に言ったじゃないですか……」
カナエは4人分のシチューを木の器に入れ、持ってき、テーブルに並べた。
「美味しく出来てないかもですけど……」
ルルはそのシチューをゆっくりと口に運ぶ。
「ううん!そんな事無いっ……美味しいですよカナエさんっ!」
「なら良かったですっ。」
カナエは少し笑顔でルルを見つめた。
魔王は口にシチューを運びながら2人に質問をぶつける。
「所で2人は何してるんだ…?」
「見て分からんのか、刀を打っているんだ。」
ニコラスが呆れた表情で答える。
「ボクはその手伝いですよ」
だから昼部からまきを……
「刀鍛冶って何するんだ…?」
魔王は食いぎみに聞く。
「仕方が無い俺が教えてやろうっ」
刀鍛冶 は単なる職人ではなく、霊感を受けた芸術家であり、その仕事場は聖なる場所であった。彼らは毎日、神仏に祈り、身を清めてから仕事にかかった。いわゆる「その心魂気迫を打って 錬鉄 錬 冶 した」のである。 槌 を振るい、水につけ、 砥石 で 研く、その一つ一つの動作が厳粛な宗教的な行為であった。
「これが刀鍛冶だ」
ニコラスが指を上に向ける。
「コピペしてきただけだろこれ」
「しかし貴様は何でこんな美人と旅をしているんだ」
ルルは笑顔でニコラスに手を振る
「ええっと…ゆ、勇者になったからかな」
魔王は目を反らしたどたどしく言う。
何だ……歯切れが悪いな…
ニコラスは椅子から立ち上がり魔王を指差す。
「貴様が召喚された勇者だと!?そんな訳無いだろ!?」
「いや……そんな事言われても……」
実際俺、魔王何ですけど……
ワープする場所ミスっただけなんですけど…
ルルは少し苦笑いをした。
「ウフフ……本当に勇者様ですよ」
「何だと!?……信じられん……」
ニコラスは頭を抱え再び席に着く。
「こんな……変態露出…まぁルルさんが言うなら本当だろう……」
「おい、今何て言おうとしたおい」
カナエが後ろを通りすぎる。
「ボク、お風呂入ってきますね。」
「あぁ…ちょっと待って!私も一緒に入ってもいい?」
ルルは立ち上がりカナエを追う。
「えっ…まぁいいですけど…」
「ウフフ…ありがとうね」
2人は浴室に歩いていく。
テーブルには2人が残っていた。
ニコラスが口を開く。
「おい変人……」
「何だシスコン…」
2人は真剣な表情をし、手を合わせ顎を乗せる。
「俺達も行くぞ……」
「あぁ……分かった……」
「貴様……何処へ行くか分かるのか……」
「フッ……当たり前だろ兄弟……」
「俺達はいい友になれそうだな……」
2人は立ち上がり前を向く。
その表情からはどんな困難にも立ち向かうという固い意思を汲み取ることが出来る程だ。
行くぞ……
いざ……
――
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