第6話 三角関係とプラスαな関係。episode2

私、水瀬愛理みなせあいりは、ストーカーではありません。


先輩を追って近くに越して来り。休日に、先輩のアパートの方を双眼鏡で覗いてたり。

してるけど、ストーカーじゃないです。


ストーカーていうのは、ずっと特定の人を気づかれないように付きまどう行為。ですよね。私、確かにちょっとは追ったりしたことはあるけど、四六時中先輩にまとわり……? か、会社はほら、仕事じゃないですか。同じ職場なんだから、一緒にいるのはこれは仕方がないです。


そ、それにいつもそんなことばかりしているわけじゃないですし。コス(コスプレ)の準備や企画だってやっているんだから、忙しんですよね。


――――はぁ。やっぱり私って、変なんでしょうか?


日ごとに、先輩のことが頭の中から外せなくなちゃっている自分がいるんですよ。

こんなことってなかったことなんですけど。

そりゃね。今まで付き合った彼氏はいましたよ。でもね。こんなにも悩まさせる男の人って初めてなんだよなぁ。


山田浩太やまだこうた。とびっきりのイケメン? という訳じゃないんだけど。この小さな愛理のハートがね―――脈打つんですよ。ドキンドキンってね。


女子高生じゃあるまいし。もうそんな年じゃないんだけど。それにさ、男の人との関係はそのなんていうか……経験だって何度もあるんだけど。

まぁ、その経験があるからどうっていう訳じゃないんだけどね。でもさ、体なら自信があるんだよ、女子高生の小娘なんかと比較してほしくない。


体を見せることに快感を覚え、見られることに興奮を覚えて――――。じゃなくてコスは衣装を見てほしいていうのが大きな目的? いや、そのキャラになりきっている自分を見てほしいていうのが本当の狙いなんだけど、カメラ向けられると、ぞくっとして気持ちいいんだよね。


だからさ、体はあんな子にはまけないていう自信はある。


あんな子。

女子高生の女の子。

先輩の隣に住む女子高生。

疑心暗鬼なこの気持ちは角るばかり。


あんな女子高生と、親しげに笑う先輩の顔を見ているのが、我慢できなくなってきた。


あの日、私は先輩と隣に住むターゲットの女子高生が一緒に出掛けたのを目撃……いやいや覗いていたのではない。たまたま双眼鏡に映っていたのだ。

――――そこはあんまり突っ込まないでほしいんだけど。


そのあとを追っている自分がいたんだよね。駅の方に商店街の方に行く二人の姿。休日のこの日に二人でお出かけ。これはもしかしてデートと言うやつですか?


先輩、先輩って確か二十七歳でしたよね。

女子高生とデート。これって犯罪……ですよ。

職質されて、逮捕されちゃいますよ。淫行条例違反ですよ。うわぁ、先輩ってもしかしてロリ趣味もあったりしちゃうんですか? だったら私、あなたのためにヘビロリでもなんでもしちゃいますけど。

趣旨が違う? そうですか。ですよね。


で、偶然を装い、声をかけたんです。

案の定大嘘をつかれました。従妹って言われましたよ。従妹じゃないことくらい分かっています。


正直ムカッと来ちゃいました。


だから繭ちゃんさらおうと思ってうちに呼んだんですけど、先輩も一緒についてくることに。

そこでもうバレバレです。私の住まいの位置。


でもほら、それは偶然を装うって言うことで、まさか先輩の家がすぐ近くだったなんて思っていませんでしたぁ。の一言で済まそうとする私。ちょっと無理があったかもしれないけど、まぁそこんとこにはうとそうなんで先輩。何とかごまかせたんだと思うんですよ。


でもね、本当は先輩に今のこの私の距離関係と言うか、すぐ近くに暮していて、いつも先輩のこと見つめているんだよって言う事言いたくてたまらないんですよ。この気持ち抑えるのってほんと苦しんですよ。……わかります先輩。


私は先輩が好き。好きなんです。


その一言が言えなくて、もどかしんです。それなのに、先輩はこんなピチピチの女子高生と楽しそうにしているじゃないですか。

はぁ~、やっぱり若さには勝てないのかなぁ。て、でもね女子高生はやっぱりまずいでしょ。


ここは年相応なと言うかちょうど釣り合う私で手を打ってくださいよ。

なんてもうわらをもすがる様な感じなんです。


だからすべてをこの際、さらけ出したんです。私の秘密。

会社ではおとなしく地味にしている私が、本当はコスプレやっていること。その姿をあなたに見せた事。本当の姿をあなたに暴露しちゃった事。後悔はしていません。


ドン引きされるかなって、おっかなかったのは事実。それでもかすかな望みは持っていた。もしかして、先輩って意外とオタク要素持っているんじゃないのかなって。

そしたらさ――――ドンピシャ!! 先輩がもろド級のオタクだったていう事実を知って、ああ、仲間だったんだ。そうじゃなくて、なんか私を受け入れてくれたような。そんな気持ちでいっぱいになってパット前が明るくなちゃったんですよ。


だからそれ以来猫かぶるのやめたんです。

ほんとの私で先輩と付き合いたい。


素の裸の私を見てほしい。……裸、先輩なら即許すんですけど。既成事実作ってもいいですよ。囁くように言う私。


先輩だったらこの体系崩してもいいんですよ。

もしコスプレができなくなっても、あなたの為だけに私は着飾りますから。


うふふ、先輩と私の子かぁ。いいなぁ、それ本当に現実になればいいなぁ。なんて妄想だけが先行してしまう。

だけど、私の前にはばかるライバルは強敵! 現役女子高生でありながら、料理は完璧に旨い。


女子高生はまだ子供。なんて思っていたら、彼女にはそれは通用しない感じありあり。

いったいあの子は何をしてきたんだろう。私があの子と同じくらいの時、ほんと何にも考えていなかったな。親に甘えて我儘ばかりやって反抗してばかり。それなのに、あの子。繭ちゃんは一人の女性として自立していた。


負けたくないなぁ。


友達の彼氏をも奪ったことのある私。初めて自分に負の気持ちを抱かせてしまう女子高生。それが繭ちゃん。


二人は否定しているけど、繭ちゃんは間違いなく先輩のこと……。


その言葉を口にするのも悔しいし、怖い。そんな存在なのだ。

梨積繭なしづみまゆ。最強の私のライバル。

そして……良き私の親友でもある。



正々堂々。私は彼女と戦う。

戦いたい。

山田浩太やまだこうた


あなたをかけて。

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