第95話 前略、友達と再会と

「手伝いますか?」


 弾かれ、元の位置まで戻ったあたしの後ろからリリアンの声が聞こえる。


「大丈夫!」


 すぐさま立て直し駆け出す、まだまだ余裕がある。

 リリアンに後ろで控えていてもらっているのは保険だ、ラルム君はまだリリアンが強い事を知らないはずだからね。


 言ってしまえばあたしが戦うよりも、リリアンが一人で、もしくは一緒に戦った方がいいに決まってる。

 それでも……


「あたしのやることみたいだからねっ!」


 我ながら、本当によく分からない。でもそれでいいや。


「それにしても厄介だ!」


 魔術師というのはなんとも戦いづらい。

 本人からしたら努力の成果だとしても、使われる側としてはなんとも羨ましくて、手強い。

  

「見たことある魔術ばっかりだね、新技とかはないのかな?」


 それでも渡り合える。

 なんとか対応できている。自身の成長もあるのだろうが、一番の理由は見たことがあるのだ、その魔術たちを。


「ありませんよ、そんな余裕はなかったですから」


 例えば、蛇のようにうねり、襲いかかる炎や。

 例えば、矢のようにあたしを狙う水や。

 例えば、天災ように降る雷。

 例えば、刃のように飛ぶ風。

 例えば、大地が意思をもったような自在な土。

 杖や自身にかける強化魔術、シトリーが使っていたような爆発。

 オリジナルのものなのか、独自で作ったものなのかは分からないけど。

 

 その全てをあたしは見たことがある。

 だって一緒に戦った仲間だから。


「そいつは残念!」


 少しづつ軽口もでてくる、本当は面倒な事にならなくてよかった。

 やはりろくに使えない身としては、魔術は脅威でしかないのだ。


「あたしは大分成長したよ、いろいろあってさ」


「えぇ、そうでしょう。相変わらず退屈しない人ですね」


 会話が続く、少しづつ顔がほころぶ。

 ようやく、やっとのこと友達と再会できた気がする。

 再会とは本来こうあるべきなのだ。こんなふうに会えなかった期間の話をして、ぎごちなくとも笑顔で。

 今やっている事は置いておいて、感情としてはようやくラルム君に会えた。


「あたしも魔術を覚えたんだ、昨日急いでね」


「昨日!なんという無茶を……もう少し自分を大切にするべきですよ」


「そのくらい必死だったんだよ。いや、あの高さから落ちるとは思わなかったけどさ」


 本当に想定外だった、でも上手くいったので問題ない。

 頃合いだろうか、話してみようもう一度。


「もうこんな事やめてさ、戻ろうよ。やってしまった事はあたしがなんとかするし、なによりポムポムもシトリーも心配してたよ」


「…………」


 今度は感情に身を任せてじゃなくて、伝えたい事を伝えよう。

 平和的な解決を諦めるには、ちょっとばかり早すぎる。 

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