第47話 前略、嘘でしょ!?と正気かお前!?と

「よし!上々!」


 装備変更、装備変更、振る、振る。

 久しぶりの戦いにもあたしの相棒たちはしっかりとついてきてくれた。

 武器と一緒に服も返ってきた、今や慣れ親しんだ冒険者な服装に。

 うん、今のあたしはこっちの方がしっくりとくる。


「ここで!踏み込む!」


 スキさえあれば最速の踏み込みを。

 折れず手に馴染む武器は、あたしの戦いをしっかりとしたものにしてくれる。


「おらぁ!」


 後ろの方ではギンとタイザンさんが戦ってる、お陰であたしは、目の前のチュウテツさんに集中できる。


「頼もしいね、まったく」


 さぁ、そろそろ必殺技でも……


「うぉぉおお!『気合バースト』!!!」


「だっせぇぇぇえええ!!!」


 あまりにダサい名前に振り返る。

 

 ギンは飛び上がり、木刀を力の限り振り下ろしていた。

 いや、嘘でしょ!?『気合バースト』!?


「ちょっと嘘でしょ!?おい!金髪!」


 思わず呼び寄せる、これは審議が必要だ。


「なんだよ!文句あんのかよ!」


「あるに決まってるでしょ!」


 『気合バースト』が許されるなら『セツナドライブ』ありでしょ!むしろ8億倍マシだよ!


「じゃあセツナの必殺技はなんていうんだよ」


 あたしの文句にギンの質問、ふむ……

 『セツナドライブ』は前に見せたし、これを否定されるとキツイ。踏み込みは必殺技と呼ぶには少し地味だ。

 よし、ならリリアンたちとあたし、どちらのネーミングセンス上か試してみようか。


「セ、セツナスラッシャー……」


「クソダセェじゃねぇか!」


「ギンに言われたくないよ!」


「「なんだとやるか!!」」


 お互いに武器を向ける。

 なんてった、敵はここにいたのか、まずはこの金髪から仕留めよう。


「「いつまでやってんだ!!」」


 別々の方向から2人のバンチョーが襲いかかってくる、まったくもって同感だ。ん?そういえば学ラン持ちはバンチョーでいいんだよね?

 まぁどうでもいいか。

 こんなの、戦いの最中にする会話ではないだろう。


「なぁセツナ!」


「怒られたのにまだ無駄話を続けるつもり?」


 今度はギンから呼び寄せられる、状況がわかっていないのだろうか。


「大事な話なんだ」


 仕方ない!振り払い、距離を保ち、話を続ける。


「あのメイドとセツナはどういった関係なんだ?彼女か?」


「それって今じゃなきゃだめかな!?」


 そんなに大事!?今じゃなきゃいけないかな!?

 アホな金髪に、時間を作ったことを後悔する。


「そんな訳ないでしょ……女の子だし……はっ!」


 そこまで言って気がつく。

 女の子同士→大事な話。

 恋の悩み→→同じような。

 ここは戦場→つまり相手は……?


「わかったよギン。それで?意中の相手はどっちなの?」


「正気かお前!?」


「こっちのセリフだよ!」


 戦いの中いきなり同性愛を告白される身にもなってほしい。

 そしてそれを、あたしとリリアンに当てはめないでほしい。

 

 あたしたちは、相棒……戦友……友達……知り合い……

 うん、悪魔と荷物持ち。荷物持ったことないけど。


「そろそろ決めるよ!」


 金髪のバカは放っておいて。集中しよう。


 駆け出し、近接に持ち込む、装備変更を繰り返し手数を増やす。後はブーストのスキを……

 ってあたしはこれしかないな。


「取り柄が1つだけなのもあたしらしいか!」


 よし!ここで新技を……


「ヌンっ!」


「嘘ぉ!!」


 あたしが踏み込むよりも先にハンマーが下から、地面に掠らせながら昇ってくる!?

 あぁ!そういえば必殺技は何回か見せてたね!


「死んでたまるかぁ!」


 振り上げた剣を装備変更、盾に、受けて!上に!


「飛ぶ!」


 そのまま天井まで吹き飛び、勢いのまま天井を蹴る!後は!


「ぶった斬る!『セツナブースト』(落ちてくるver)!!!」


 本物じゃないけど、気分は必殺技で!

 あたしの渾身のダイブはチュウテツさんの反応を超えて、刀身を頭頂部に届かせていた。

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