第127話 魔神、第二形態
第二形態に移行した魔神。
魔神の開いた口から垂れるよだれで、
さすがの俺も、このよだれの直撃は避けたい。
ということで今度は後ろに回って、魔神の左足のアキレス
リンガレングのおかげで魔神の動きが鈍いのはありがたいが、正直攻撃に参加してもらいたい気持ちもある。
一撃、二撃。
三撃めの攻撃をしようと、エクスキューショナーを振り上げた時に、魔神が反応した。足かせについた巨大な鎖をじゃらじゃらいわせてスッと左足を上げて俺を踏みつけてきた。
リンガレングの拘束が弱まったのか?
俺の位置が分からぬまま踏みつけたようで事なきを得たが、何せ巨大な足だ、まかり間違えれば踏みつぶされる。
魔神の足はエクスキューショナーで30センチ程度しか切り込めない硬い足だ。物理耐性最大のこの俺が踏んづけられて潰れるかどうか、潰れたとして復活できるのかは分からないが、復活できたとしてもしばらく
まだ縫い付けられた目が開いていないところを見ると、次に来る魔神の第三形態は、今度は目が開いて、何かそれ系統の攻撃が来ることが予想される。
ん? 何か頭上が明るくなって来た? ヤヴァい!
魔神が口を開けたその先に巨大な火球ができ上がりつつある。魔神の狙いは遠距離攻撃を繰り返しているトルシェの可能性が高い。
俺はやや後方に離れて
『トルシェ、後ろに下がれ! 火球が飛んで来るかもしれない』
俺の言葉は声ではないので、ちゃんと攻撃中のトルシェに届いたようだ。慌ててトルシェが後退し始めたが
間に合え!
さらに俺の意識と知覚が加速し、俺自身の身体能力もそれに引きずられるように高まった。
いま、魔神が火球を打ち出した。
ゴゴゴゴーー!
高速化した知覚の中で重低音を伴った火球がやはりトルシェに向かって放たれた。
間に合え!
俺がこの位置から火球を阻止するためには、相当高い位置まで飛び上がる必要がある。
ここで、ジャンプだ! とう!
前回のジャンプでは3メートルの外壁に手が届かなかったが、今回は何とか思い通りの高度まで飛び上がることができた。
向かって来る巨大な火球に向けて、エクスキューショナーを振るう。
ドドーン!
エクスキューショナーで火球を
もちろん俺は吹きとばされてぐるぐる回転している。幸い、手足は胴体にくっ付いたままだし、ナイト・ストーカーの正面側がいくぶん
空中でくるくる回っているときに目にしたトルシェは、尻餅をついていただが、ケガをしているようではない。俺の左手の指輪も光っていない。
『トルシェ、聞こえるか?』
『はい』
『今の攻撃の前、ヤツは口の前で火球を一度溜めていた。今度ヤツがアレで攻撃しそうになったら、そこに穿孔光弾を撃ち込め!』
『はい!』
俺も爆発で吹き飛ばされてずいぶん飛んだようで、空中で回転しながらトルシェと会話できてしまった。
俺は飛行方向とは関係なく回転していたためか、うまく
ようやく、転がり止まったと思ったら、後ろの方で爆発音がした。振り返ると、魔神の顔の前から、砕けた火球が下にこぼれていくところだった。これでヤツもうかつに火球を撃てまい。
俺の方は、とにかく急いで戦列復帰だ。
魔神の立つところまで駆けていく。見上げると、アズランが魔神の肩口から耳の後ろを伝わり、
アズランが『断罪の意思』を魔神の右目に突き入れた。ナイスだ、アズラン。
ギャアアオオーーン!
これはかなり効いたようで、魔神が悲鳴のような
今の大音声を聞いて少しやる気が出てきたのだが、やはり今のはただの
『断罪の意思』が突き入れられた魔神の右目から茶色の液体が流れ出て、顔を伝わって床に
これまで魔神の頭上で舞っていたフェアは、アズランの指示があったのか魔神の顔の高さまで下りてきて、茶色の体液が流れ出続ける傷口に向かって鱗粉を翅を使って器用に吹き付け始めた。ナイスフォローだ。アズランの方は残った左目の方に移動を始めた。トルシェは攻撃を一時控え、水袋から、『暗黒の聖水』を口に流し込み始めた。
しばらく様子を見ていた俺も魔神の背中側にもう一度回り込んで、先ほどと同じように、魔神の左足のアキレス腱を狙ってエクシュキューショナーを振るう。ナイト・ストーカーの隙間からは、また黒い瘴気とともにコロの触手が伸びて、瘴気で傷んだ魔神を少しずつ捕食していく。
『マスター、もう少しで、第二形態を破ります。次が魔神の最終形態。第三形態です』
リンガレングの声が頭の中に聞こえてきた。
『リンガレング、どうにか攻撃に参加できないか?』
『申し訳ありません。先ほど、魔神の動きを制止するため拘束具をさらに強化した関係でエネルギー吸収ユニットの一部が
部品がいかれてしまったのか。まずいな。
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