第124話 戦いは終わった。
リンガレングが魔王ハムザサールを
それと同時に、数種類のペンキを混ぜてかきまわしたような感じで周囲の
気が付くと、そこは迷宮都市の南の林の中。
最初に俺たちが黒い渦に飛び込んだ場所だった。ただ違うのは、そこには黒い渦がもはやなかったことだ。見回すと、誰一人欠けることなく林の中に戻ってこれたようだ。
『何とかなったな』
「今回は大変でした」
「フェアも無事でよかったー」
『リンガレング、ありがとう』
『リンガレングはマスターのために存在しています』
リンガレングはいつのまにか、先ほどまでの赤みがかった状態から今まで通りの銀色、青足に戻っていた。
リンガレングを丸くして収納し、しばらくトルシェと俺が
黒い渦の中に突入してからずいぶん時間が経ったような気がしていたが、まだ日は中天あたりで輝いている。まさか丸一日潜っていたのか?
いまさらそんなことは、どっちでもいいか。
「腕が吹き飛んじゃったときにはびっくりしましたが、こうやって自分の手が再生していくのを見ていると実に
まーたトルシェがのん気なことを言い始めたよ。
『そういえばトルシェは以前、どこかの冒険者が「ヒール・オール」だかの魔法を使ったのを見た時、自分でもできそうだとか言ってなかったか? そうそう、あのパーティーは「
「あれー、そういえばそうでしたね。自分で治せばよかったんだ。勝手に治るものだからそのことに思い至りませんでした。せっかくだから、試しに『ヒール・オール』で治しちゃいましょう。えーと、こんな感じだったような。……、『ヒール・オール!』」
トルシェにかかれば「ヒール・オール」も簡単な魔法だったようだ。
ほー。見る間にトルシェの左手の手首から先の骨が再生されて行き、その骨の周りを赤い筋肉やその他の組織が指先に向かって
「これはこれで見てると面白いですね。おうー、爪もきれいに切りそろえられてる。今度爪が伸びすぎたら、手首から先を切り取って『ヒール・オール』したら簡単そう」
俺もその発想はすごいと思う。トルシェが言うように簡単だとは思うが、
『トルシェも回復したようだし、そろそろ拠点に戻ろうか?』
「
こうして、俺たちの魔王討伐は幕を下ろした。
街の近くまで戻ってきたところ、崩れた南側の外壁の外側には
三人揃ってその先の崩れた外壁を越えて
『なあ、俺たちも片付けを手伝わなくてもいいかな?』
「ダークンさん、どうしちゃったんです?」
『いや、あの
俺たちというより
「あれは、今は亡き魔王ハムザサールの悪の軍団がやったことですから、われわれには全く落ち度はございません」
いなくなったものに、責任を押し付けるのはよくあることだよな。それじゃあそういうことにしてしまいますか。皆さん頑張ってください。
それだと、どうも後味が悪いな。
『「キューブ」で収納するだけだから手伝って行かないか? 中にお宝が眠っているかもしれないぞ。本当はコロに食べさせれば簡単なんだがな。コロだと金目の物とガラクタの区別がつかないだろうし』
「やりましょう、お片付け!」
わかりやすい性格は操縦しやすい性格ともいう。
「はーい、はいはい。お片付けしますから、そこの人、危ないですからどいてくださーい!」
そういっては、
みるみる
『収納キューブ』は一辺100メートルの立方体に相当する容量がある。相当な容量と思うが、その『キューブ』の容量を心配するレベルだ。
実際は、トルシェは、
一時間ほど、お片付けの手伝いという名のお宝回収作業で、ほとんどの
俺たちの『収納キューブ』の異常なほどの収納量に多くの連中が驚いている。その収納量をいいことに勝手にお宝を自分のものにしてしまうトルシェに対してきつい目をむけるやからもいたが、近くにいる俺を見てか、直接何か言って来る者はいなかった。それどころかほとんどの連中には、逆に大いに感謝されていたようだ。
もしもエルフがいたら、エルフ最上位種のグウィン・ハイネスであるトルシェに対してきつい眼などしようものなら、
『こんなところだな。そろそろ帰るか?』
「はーい」「はい」
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