第94話 冒険者ギルド、そんなー、うそだろ?
『それじゃあ、三人そろって渦に入るからな。アズランはフェアの面倒をちゃんと見てな』
「はーい」「はい」
『ここでいまさらこんなことを言うのは変だが、フェアは街に入れて大丈夫なのか? なんか
「従魔?」
『いや、知らないならそれでいいんだ』
「フェアのことなら、こんなゴツいダークンさんが平気で街に入っているのに、可愛らしいフェアが入ってはいけないわけないじゃないですか」
「問題ないはず。です!」
『なんだか
「もしも、フェアにちょっかいをかけてくるようなヤツがいたら、私が責任をもって処理します」
『処理するのはアズランの勝手だが、証拠は残すなよ』
「人目のないところで処理しますから大丈夫です」
『ほどほどにな。それじゃあ、改めて。行くぞ!』
「はーい」「はい!」
渦から出た先、ダンジョンの外はちょうど正午ごろだったようで、太陽がいっぱいだ。
これだけ明るいと、選んでくれた二人には悪いが、あのマントを羽織らなくてすむのでありがたい。
今回は、かなりの量のモンスターを狩ったので、ある程度ここの買い取り窓口に
その話の内容が、
「とうとう15階層に到達したらしいぞ」
「最初に到達したのはどっちだ?」
「『
「やっぱりそうか」
……
ん? こいつら何を言ってるんだ。俺たちはまだギルドに行ってないぞ。『万夫不当』? 15階層に到達?
『ダークンさん、なんか変なこと周りで話してるんですけど』
『そうだな。ここは後にして、急いで冒険者ギルドに行ってみよう』
『はい』『はい』
いきなり列を外れ走り出した俺たちに、周りの冒険者が驚きながらも文句を言い始めたので、一度立ち止まって、振り返って右から左までざっと顔を
すぐに先を行く二人に追いつき冒険者ギルドに急いだ。むろんアズランは俺とトルシェの走りに合わせてくれている。
街中を全身鎧と小柄な二人の
息が切れたわけではないが、息せき切らせたくらいのつもりで冒険者ギルドに飛び込み受付の列の並んだ。
俺たちのただならぬ雰囲気に恐れをなしたのか、二人の超絶美少女のご
窓口にいたのは、運のいいことに前回俺たちに、『新階層チェック球』を手渡した窓口嬢だったので、
「『新階層チェック球』見てもらえます?」
「返却ですね。えーと、この前は
「ダンジョンの呪いで、二人とも真っ白になっちゃった。この子はアズランのペット」
「そ、そうだったんですか。お大事に。それと可愛いペットですね」
いったん額の汗をハンカチで拭いた受付嬢が作り笑いを浮かべつつ、
「『新階層チェック球』ですね、少々お待ちください。……、傷もないようですので預かりしていま・し・?、……、20!」
受付嬢の突然の大きな声にホールや列に並んでいた連中が一斉にこっちを向いた。
「失礼しました。こんな短い期間で本当に20階層に到達したんですね」
「それもそうなんだけど、『万夫不当』が15階層に到達したとか噂で聞いたんだけど。うちが14階層の階段前のモンスターをたおして最初に15階層に到着したのに何かおかしくない?」
「いえ、『万夫不当』は今日の朝方お見えになって、提出された『新階層チェック球』が15だったのを確認して、報奨金などはすでに支払われています」
「それはおかしいじゃない、われわれが先なのに」
「『新階層チェック球』が提出された順に処理されますので、こればかりは致し方ありません」
『トルシェ、これは仕方がない。
『いえ、良くは知らないんです』
『そうか。それなら仕方がないが、そのうち出くわすこともあるだろ』
「それじゃあ、16階層から20階層までの報奨金をお願いします。アズランは道を覚えてるよね?」
「もちろん」
「16+17+18+19+20で金貨9千枚。当ギルドですぐに現金でお支払いできる金額ではありませんから、商業ギルドに口座があれば預かり金とともにそちらに振り込みます。各層の階段までの道順については、
「商業ギルドには口座がないので、後で作っておきます」
「それでしたら、口座番号をお知らせください。製図室にご案内しますのでカウンター横の出入り口から中にお入りください。そこの部分のカウンターが上に持ち上がりますから、どうぞ」
カウンターの板を上に上げて、中に入った俺たちは、受付嬢の後に続き製図室とやらに入った。真ん中に四角いテーブルが置いてありその上に厚紙が重ねておいてある。
「覚えている範囲で、1階層当たり1枚紙を使って、階段から階段までの道筋をお書きください。適当でも構いません。大切なのは下り階段前のモンスターをたおすことですから。完成したらお呼びください」
そう言って受付嬢はわれわれを残して部屋から出ていった。
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