第93話 鑑定2


 アズランにも役立ちそうな装備が手に入った。次は4つ目の銅の宝箱。銅の宝箱はこれで最後だ。


『トルシェ、次頼む』


「はい、はーい」


 相変わらず、手袋をキュッキュさせながら軽い返事だ。


<鑑定石>

鑑定結果:

名称:宝箱

種別:銅

特性:施錠されていない。


「これも罠の類はないみたいです。銅の宝箱は全部罠がなかったですね」


『銅の宝箱には本当に罠がないのかもしれないな』


 トルシェが開いた四個目の宝箱の中に入っていたのは、黒い指輪だった。


 鑑定結果は、


<鑑定石>

鑑定結果:

名称:回復の指輪-1

種別:金の指輪

特性:体力が徐々に失われていく呪いの指輪


 でたよ、呪いの指輪。トルシェから受け取った指輪をよーく見たが呪いの指輪というわりに|禍々まがまがしさがない。それに、俺に呪いが効くとは思えないがどうなんだろう? 試しにはめてみるか。右のガントレットを外して、空いている薬指にはめてみた。


「あっ! ダークンさん、呪いの指輪をはめちゃったんですか?」


『ウォッ! 何も危険とか考えずに気付いたら何気なく指輪をはめていた。これも呪いの効果なのか?』


「きっとそうですよ。それで、指輪をはめてどこか具合は悪くなりましたか?」


『いや、全然。なんか体が芯から温まるというか、ほっこり気持ちがいい。いやー実に爽快そうかいだ』


「やっぱり、われわれには呪い系統は祝福になるんですね」


「これも、われらがしゅの奇跡ですね」


『そうだな。こういう時は、ちゃんと礼拝だ。二礼二拍手パコパコ一礼』


 片手ガントレットで拍手したら変な音がしてしまった。



 さーて、礼拝もして、最後のお待ちかね、銀の宝箱だ。


『トルシェ、最後のいっちゃってください』


「はーい」


<鑑定石>

鑑定結果:

名称:宝箱

種別:銀

特性:施錠されている。開錠に失敗すると毒針が箱から撃ちだされる。


 やっと、罠が来たよ。毒針なら俺には効かないだろう。


『トルシェ、アズラン、危ないから少し離れていてくれるか? これから俺が箱を開けてみるから』


「はーい」「気を付けてください」


 宝箱の蓋に手をかけて、ふと、床に置いたコロちゃんの鉄箱が目に入った。


 コロに箱を食べさせればこれから宝箱を安全に開けられるんじゃないか?


 やってみよう。


『俺が開けようと思ってたんだが、いいことを思いついたんだ。コロに宝箱の箱だけ食べさせてみる』


金物かなものを食べますかね?」


『好きじゃないかもしれないが、そりゃあ食べるだろう』


 コロを鉄箱から取り出して、銀の宝箱の上に置いてやり、


『コロ、この箱だけ食べてくれるか』


 俺の言うことは分かるはずだから、これで問題ないだろう。


 と、宝箱を見ていると、あっという間にコロに食べられて宝箱の蓋が無くなってしまった。思惑おもわく通りうまくいったようだ。


 そのまま角砂糖が紅茶の中で溶けて崩れるように宝箱がコロに食べられていき、あとに残って床に転がったのは、革袋だった。袋を開けてみると中には茶色の丸薬がたくさん入っていた。見た感じは正〇丸にそっくりだ。俺には臭いが分からないので、セーフ。


 鑑定結果は、


<鑑定石>

鑑定結果:

名称:カダンの万能薬

種別:飲み薬

特性:ほとんどの毒・病気に効く万能薬


『これも薬だから、トルシェが一応持っていてくれるか』


「はい」


 宝箱を食べ終わったコロは自分で鉄箱の中に入って行った。賢い。


「そういえば、ここの拠点を作ったウマール・ハルジットと、カダンやビスマそれにタセって伝説の人たちはみんな同じ時代の人たちらしくて一緒に仕事をしていた時期もあったようです」


『伝説はいろいろ都合よくこじつけていくからな。とはいえ、ウマール・ハルジットも実在していたし、他の連中の名前のついたアイテムもあったし案外ホントの話かもしれないな。それじゃあ鑑定も終わったことだし、二人は風呂にでも入って来いよ』


「はーい」「はい」



 二人が風呂に入っている間、暇な俺は料理を作ってやることにした。と言っても難しいものは出来ないので、ステーキと付け合わせの野菜くらいだ。今回はちゃんと塩、コショウを振ったのでそれなりにうまくできたんじゃなかろうか。


『トルシェ、風呂から出て、体を拭いて乾かしたらとりあえず下着くらい着た方がいいんじゃないか?』


「この開放感がたまらないんです。ここに敵やモンスターがいるんなら別ですが、仲間しかいないここで、服なんて着てたらもったいないじゃないですか」


『そうかい。そんなら好きにしろ』


「えへへ。お許しが出ました!」


 こいつは、もう野人だよ。『グウィン・ハイネス』? 『エルフ種はグウィン・ハイネスの言葉に逆らうことはできない』。エルフの連中こいつに頭が上がらないのか。こういってはなんだが、おかわいそうに。


 そういうことで、マッパが一人、下着姿が一人、食事を始めた。


「いただきます」「いただきます」


 ……


「ごちそうさまでした」「ごちそうさまでした」


 喜んで食べてもらってなにより。


『二人とも、一寝入ひとねいりして、それから冒険者ギルドに行って報酬ほうしゅうをいただこう』


「はーい」「その前に食器を洗ってしまいます」


「わたしもー」



 片づけを終った二人はすぐに各々のベッドにもぐりこんで眠ったようだ。


 フェアは、ちゃんとアズランの枕元まくらもとで一緒になって横になっていた。こういうところは俺のコロにはできないな。ちょっとだけうらやましいぞ。


 で、二人が眠っている間の俺は、骨音楽で暇つぶし。


 ♪カンカンカーン、カンカンカーン!♪


 ♪……♪



 気持ち6時間ほどで、二人が起きだしてきたので、


『何か食べるなら用意するが?』


「いえ、食事はいいです」「私も」


 大きく切った肉だったから、もたれたかな?


『それじゃあ、準備してくれ』


 アズランは下着のようなものを着ているが、進化して白い肌になったトルシェは、風呂上りからずっとマッパでうろついていたので、かしてやった。



 やっと準備が整ったようで、それでは街に、冒険者ギルドに出発だ。


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