第35話 魔力操作、穿孔光弾
上の階層への階段を上りながらも、トルシェは俺に言われた魔力操作の練習を続けている。そろそろ、なにか新しい練習方法を示してやらねば専属コーチとしての
横目でトルシェの火の玉の出し入れを見てみると、なんだか、最初の時よりも明らかに手のひらより離れたところに火の玉が出来ている。
今までわからなかったが、俺にはコーチングの才能が眠っていたようだ。眠れる
やっと300段上り切った。
フウー
登りに疲れたのか、火の玉作りに疲れたのかわからないがトルシェが大きく息を吹き出した。いまでは、手の先10センチくらいのところで火の玉が作れるようになっている。トルシェ、恐ろしい子。
『ダークンさんの言う通り、だんだん遠くに火の玉を出せるようになってきました』
『だろ』
信じる者は救われる。世の中には、たまに信じたばっかりに、足をすくわれるヤツがいるようだがな。
『あとな、火の玉なんだけど、もっと熱くなった方が
『そうでしょうね。わたしもそう思いますが、いままで熱くしようとか考えたことも有りませんでした』
『そうなのか。なんだか、せっかくの魔法なのに改善というのか、改良が進んでいないようだな』
『それは、魔法に関する事柄は研究も含めすべて、「魔術師ギルド」が独占しているためだと思います』
『あるんだ、
『いえ、父親が
『トルシェは
『苦労したんでしょうが、こうして、ダークンさんに命を救ってもらったし、その後「眷属」になって幸せです。ですから昔のことはもうどうでもいいです』
『そうか、幸せか。幸せならよかった。
『それでは、もっと火の玉が熱くなるようにやってみます』
『まてまて、今の火の玉は
『青い炎ですか?』
『そう、青い炎。一度に、青は難しいだろうから、そうだな、白っぽい黄色の炎でいってみるか?』
『それじゃあ、試してみます』
『ちょっと待て、向こうから音がする。ゴブリンだろうから、トルシェに任す。できれば、白っぽい黄色の炎を意識してな』
『やってみます』
俺たち二人とも、姿勢を低くして通路の交差点にゴブリンが現れるのを待っている。トルシェが仕留めそこなった時のバックアップに、俺は両手の武器の握りを確かめる。
『近づいてきた。1、2、3で俺も飛び出すから。いくぞ、1、2、3』
俺は体を低くしていっきに飛び出して、両手の武器を斜め下に構え走り出した。
その横を、俺から見て、右側、少し遠い方のゴブリンに向かって白い
チュン!
白い閃光が当たったゴブリンの胸に大きな孔があいた。その孔から煙がわずかに上がっている。そのゴブリンはそのまま倒れ込んでしまった。それを見たもう一匹のゴブリンはおじけづいたようで、くるりと回れ右をして逃げ出していった。
その逃げ出したゴブリンに向け、トルシェが右手を突き出したところ、広げた手のひらから白い閃光が走った。
チュン!
と、さっきと同じ音がしたと思ったら、俺のすぐ脇を閃光が走って、逃げ出したゴブリンの頭が消えてなくなっていた。
トルシェのヤツ、ヤバいよ。
俺のコーチング能力もヤバいよ。
ちょっと
『トルシェ、すごいじゃないか。で、今のはなんていう魔法なんだ?』
『何も考えずに、白っぽい黄色の炎ってことだけ頭にあって、気が付いたら白い光が手のひらから出ていました』
『そうなのか? それじゃあ、魔法の名前がないのも仕方ないか。そしたら、カッコいい名前をつけなきゃな。簡単なところだと「レーザー・ビーム」だよな』
『レーザーって何ですか?』
『そうか、レーザーはないな。ごめん、そいつは忘れてくれ。それだったらそうだなー』
『それなら、「
『いいよ、いいよ。そいつもすごくいい。トルシェ、おまえその方面、ほんとに才能あるな。
『えへへ、それほどでもー。えへ』
だが、トルシェの『
『ダークンさんの指導のおかげ? かな?』
『なぜ、そこで疑問形? 俺のおかげに決まってるじゃないか。どんどんその魔法を使って、威力を上げていくぞ』
『はーい』
『返事は伸ばすな』
『はい』
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