第28話 ドラゴンの目
『炎の巨人』をたおしたところ、巨人の炎も一緒に消えたので視力が慣れず、広間が急に暗くなって見えにくくなっていたのだが、そのうちに慣れてきて、以前同様辺りの様子が良く見えるようになった。
『ところで、ダークンさん、さっきから首をかしげてどうしたんですか? 何か心配ごとでも?』
トルシェが、自分の放った矢を回収しながら俺に声をかけた。
『俺の首?』
あれ、トルシェに言われるまで気付かなかった。言われてみれば、なんだかまた首がかしいでいる? どうりで
両手で、頭を持ち上げるようにしながら、グッと力を込めて、首が落ち着く場所に頭をはめ直した。
ゴクっといった振動がしたので、だいぶずれていたようだ。危ないよな、気付かないうちに頭が床に落っこちでもしたら大ごとだった。
チームメイトがいてくれて助かったぜ。
とにかくこの
目の前に転がっている、『炎の巨人』の
なにがあるのかと思い、リフレクターで大き目の炭の塊を適当にたたき落としながら、そのあたりをほじくって見たところ、
『ダークンさん、何だか
トルシェが言うように、水晶玉のような物が出て来た。大きさは、ちょうど両手のひらですっぽり覆えるくらいだ。
『何だかわからないが、何か特別な物の気がする、トルシェ、悪いがおまえのリュックに入れておいてくれ』
『まだ熱いみたいだから、もう少し冷めてから入れます』
俺は玉を持っても全然熱くなかったけれど、実際はかなり熱いのだろう。玉を床の上に置いてまだ何か炭の中に残っていないかと、リフレクターで残骸を粉々になるまでたたいてやったが、その玉以外何も出てこなかった。
重要アイテムらしきものが2つも3つもでてきたら、たいていの者は見逃すだろうし、そうしたら、ゲームクリアできないものな。これはゲームじゃないから
『もういいかな?』
トルシェが恐るおそる水晶玉を触った。
『あれ? 全然熱くない』
そう言って、トルシェはリュックに水晶玉をしまった。
そのあと、ざっと広間を見渡したところ、通路への入り口から見て左手奥の方の壁の真ん中あたりが、何か
『トルシェ、あそこの壁、ちょっと変じゃないか?』
『わたしには、よくわかりませんが、近くによって調べてみましょう』
二人で、
炭になった残骸のかけらを何個か拾い、トルシェと二人で、壁に書かれた線を炭でなぞっていくことにした。
でき上がったのは、結構大きな絵で、ドラゴンの顔を正面から見た絵だか図だった。
『この絵はドラゴンだよな?』
『ドラゴンですよね』
『何の意味があるのかな?』
『さー。でも、絶対何かありますよ』
二人ででき上がったドラゴンの顔の線画を眺めている。きっと何か意味があるはずだ。
『ダークンさん、このドラゴン、どうして両目の目玉がないんでしょう?』
トルシェの言う通り、ドラゴンの顔には目玉が描かれていない。目玉のありそうなところを良く調べてみても、線などは書かれていない。そんな感じで近くによってドラゴンの目の辺りを細かく調べていたら、なぜか、まわりが少し明るくなった。
明かりの出どころは、トルシェのリュックの中だ。リュックの中で何か光っている。
『おい、トルシェ』
トルシェが頷いてリュックのに手を入れて
『トルシェ、その水晶玉をドラゴンの目玉のあるハズの場所に近づけてみてくれるか?』
トルシェが水晶玉をドラゴンに近づけていくと、水晶玉の青白い光がますます強くなった。そして、目玉のあるべきところまで近づけると、そのままトルシェの手を離れ、壁に
ドラゴンに水晶の左目が出来た。水晶玉がドラゴンの目玉に収まったとたんに発光も止まってしまい、また視力が戻るまで辺りが暗くなった。
『きっと、もう片方の目がどこかにあるんだろうな』
『そうですね、これこそが冒険ですね』
C2-ポジティブのトルシェが暗がりでも分かるくらい目を輝かせている。
気持ちは分かるが、手掛かりなど何もないので今のところどうしようもない。運がよければ何かの加減で手掛かりが、もっと運が良ければ、もう一個のドラゴンの目玉が手に入るだろう。
気長にいこう。なにせ俺は『闇の眷属』、アンデッドだからな。
ところで、もう一人の『闇の眷属』のトルシェはアンデッドではないがどのくらい寿命があるのだろうか? 興味があるが今聞くようなことじゃないので、そのことは忘れることにした。
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