第7話 詐欺師はこの世界を楽しんでいきると決めたようです






「さてと、これからどうしたものかね」


 リポップ狙いで時間を置くため再び屋上に戻った。 

 屋上から見渡す景色はとても爽快さを感じさせるもので、本日は晴天なり。なんちゃって。

 学校周辺を見渡すと、所々から黒煙が立ち上っているし、明らかにこの学校と同じような状況になっているみたいだ。

 イヤーココロガオチツクナー(白目)


「とりあえず、ここにいても変わらないか」


 もう今までのように平和な生き方は出来ないのかもしれない。

 モンスターが出現するなんていうデタラメな状況だ。今までの常識が通じると思う方が可笑しい。

 自分の身の振り方も変えるべきだと思う。何せ死と隣合わせだ。


「楽しんでるな僕……」


 不謹慎かもしれないけど、正直に言えば僕は楽しんでいる。この変わった世界を。

 こんな感覚は久しぶりだ。

 今まで理不尽に虐められるだけの日々を過ごしていた。全てを諦めて、うずくまり、終わるのを待つだけの日々。

 ただ、心を殺し続けて何も辛く思わないように努めていた。

 どうして?

 抵抗しても無駄だったからだ。

 だって1人だった。多勢に無勢だ。敵うわけなかった。しかも、裏切りにもあった。

 どうでもよくなって、諦めて日々を怠惰に過ごしていた。


 そんな僕が今この状況を楽しんでいる。


「なら、僕は今どうしたいのかな……」


 自問自答する。

 自分の内から込み上げる感情に少し困惑する。別に嫌なわけじゃない。むしろ、いい気分だ。

 そうだ、僕は今、力を得たんだ。

 自由に生きるための力を。

 だったら、自由に生きたい。

 そう思った。自然に浮かびストンと胸の中に収まったと言うべきか。


 ほんと、可笑しな話だ。モンスターが出るような理不尽な世界になったんだ。今までより辛くて厳しいことの方が多いに決まっている。


「でも、やっぱりそう思うんだよなぁ……」



 僕はーーー

 

 この世界を楽しんで生きよう、生きてやる。



ーーーー



 屋上で少年漫画主人公ばりの決意をしたところで、やる事はさして変わらない。

 今まで通り、臆病に慎重にレベルアップをしていくだけだ。いくら楽しんで生きようとしても、敵が強すぎて即死とかもあり得るし。


 レベルが6まで上がると、ゴブリンに手間取ることもなくなった。戦闘に慣れてきたというのもあるだろうけど、強くなったという実感を持てるのは正直嬉しい。体が軽すぎでヤバい。

 倫理観的には正直よろしくないのだろうけど、そこはもう考えないことにした。この世界を楽しく生きる決めたのだから。



『レベルアップしました』

『身体能力Lv3を取得しました』


「お、またレベルアップした」


 リポップしたゴブリンを倒し続けてたら2レベルも上がった。もう何体のゴブリンを屠ったか分からない。これ称号得れるじゃないの? ゴブリンスレイヤー的な。

 いいねいいね。順調すぎて怖いぐらいだ。

 これでこの階のモンスターは全て倒した。しばらくはリポップもしないだろうから安全だろう。


「さてと、お宝探しと洒落込みますかね」


 安全になったところで、何か役に立つものがないか探索してみよう。

 まあ、モンスターが出るようになったからって、RPG見たく宝箱的なのがそこら辺に転がっているわけでもないんだけどね。RPGになったとか言ってる割には変に現実よりというか、シビアというか。

 もっとこう、難易度を低くしてほしい。


 探索といってもこの階は空き教室ばかりで、何かありそうなものは家庭科室ぐらいだ。

 まあ、その家庭科室にそもそも用がある。


「お、あったあった」


 やはりというか家庭科室には狙い通り包丁が何本もあった。

 せっかく、投擲スキルを持っているのだから活用しない手はないだろう。いや、さっきまで忘れてたけどさ。

 うまく使いこなせば戦闘に幅を持たせられるだろうし。


「出来れば沢山持って行きたいけど、かさばるしなぁ」


 RPGとかだとご都合主義というか、魔法のボックスで何でも格納できて持ち運べるというチートなんだけど……あ、そっか。

 そういえばアプリの機能にボックスがあったような気がするな。


 アプリのボックスを開くと四角い枠がズラリと画面いっぱいに並んだ。

 細かい仕様は分からんな。こういう時は解説スキルにお任せ☆


『ボックス』


 その名の通り色々なものを収納出来る。カメラ機能で映した物品をボックスを収納可能。

 最大20kgまでしか入らないのでドラえもんにはなれない。




 この説明どうなのよ。

 著作権的にやばいんじゃないの?消されても知らないよ?

 まぁ、ともかくボックスについてはよく分かった。重量制限はあるものの、いい機能だ。


「お、本当に入った。しかも、簡単に取り出せるのか……」


 包丁が消えたり、出たりする様は新鮮だ。オーバーテクノロジーっぽくてワクワクする。

 ついでに、ボックス内にゴブリンの牙とか謎の素材みたいなのが入っていたので売った。

 こういう素材はショップで売れるようだ。1Gとかいう二束三文だけど。

 合計所持金37G……

 これじゃポーションも買えないなぁ。ひもじい。


 ともかく、武器の調達は出来た。そろそろ、下の階に降りてみよう。



ーーー



 3階は4階と比べて誰もいなかった。

 人どころか、モンスターすら見当たらない。ただ、ちらほら窓ガラスとか割れてるし、少し違和感がある。


「いやっ! やめなさい!! 何考えているの!? 近寄らないで!!」


 と思ったらいきなり女の子の悲鳴。

 声の方向に視線を向けると、奥の方の部屋にゴブリンたちが大勢駆け込んでいる。

 え?あれヤバイな10体以上いるよ?

 ゴブリンたちが棍棒でドアを殴りつけていることを考えると、あれは多分人が籠城してるな。

 さて、どうするか。一応助けるべきかな? 経験値も稼げるし。

 でも、女の子の悲鳴が聞こえる時点で碌な予感がしないなぁ。

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