番外編
俺は今非常に厄介な事に巻き込まれていた。 それは涼の頼み事から始まった。
「頼む、啓! 俺のためだと思って人肌脱いでくれ!」
「いやいや、俺に頼むより本物の女に頼んだ方いいだろ!?」
「ダメなんだ! 本物だと俺我慢出来そうにない! 」
「我慢出来そうにないって…… じゃあ始めから意味なしだろ! なぁ柚?」
「えへへ、啓ちゃんが女の子……」
柚はだらしない顔で変な妄想をしている、ダメだこいつ……
涼の頼みとは涼は前から柚に女の子紹介してくれと頼んでいたのだがその元は涼が親に可愛い彼女くらい俺にもいると啖呵を切ったせいである。
だが涼ががっつき過ぎるせいで柚が紹介した女の子とは尽く破局していた。 そしてじゃあそろそろ家に連れてきたら? と言われ引くに引けなくなったんだろう。
「頼む! 本物だと俺興奮しちゃってそれどころじゃなくなるから啓が最適なんだ、言いたくないけど幸いお前は可愛い、それに声も高いから声色変えれば完璧女だ!」
「ふざけんなよ! なんでそんな事に巻き込むんだよ!」
「へぇ、面白い話してるじゃん! やってあげたら? 啓」
いつの間にか香里も話を聞いていた、どいつもこいつも面白がって……
「なぁ、俺たち友達だろ? 助けると思って」
「ぐっ……」
「啓ちゃん! 私が女の子にしてあげるよ! だから面白…… じゃなかった、可哀想だから協力してあげようよ」
お前ただ俺に女装してほしいだけだろ?
「啓、私も朝日奈さんに賛成! やってあげなよ?」
こいつらグルだわ……
「さすが朝日奈たちは話がわかる!」
「でも遠藤君! いくら遠藤君が男でも私の啓ちゃんとあまりにもベタベタしてたら許さないからね!」
「ははッ、大丈夫だよ朝日奈さん、何が悲しくて男とベタベタしなきゃいけないんだ」
おい! その台詞俺だから……
「遠藤君、啓ちゃん女装させた事ないからわかんないのよ。 私より可愛くなっちゃうんだから、この私より可愛くなるとかありえなくない!?」
「朝日奈さんより可愛くなるなんてさすが啓! 決めた、私もその日ついてってあげる!」
「はぁ!? 香里はお呼びじゃないわよ! 」
「あれぇ? 朝日奈さん不安なんだ〜? 私に啓がとられるんじゃないかもって」
「ねぇ啓ちゃん、やっぱりやめようか? 絶対ろくな事ないよ……」
「どっちだよ!?」
「はいはい、もうここまで決定!」
なぜか香里がその場を取り仕切ってしまった。 そして俺は強引に女装させられる羽目になった……
そして当日柚の家に寄ると……
「よぉし啓ちゃん! 私が可愛くしてあげるからね! 髪も大分長くなったしセットしやすいし、もともと背丈も私と似た様なもんだし私の服で大丈夫だね!」
「おい、あんまり気合い入れるなよ、さっさと行って帰ってくるんだから」
「啓ちゃん! 今からそれじゃダメだよ! 女の子っぽくして、女から見ればわかっちゃうのよ?」
「マジかよ…… やっぱ引き受けるんじゃなかった」
そして柚は俺に化粧を施していく。 柚の顔がだんだん恍惚としていくから怖い。
「よし、こんなもんね。えへへ、啓ちゃん可愛すぎてヤバい、スカートにする? それとも……」
「おい! いくらなんでもそれはやめろ!」
柚と服であーだこーだ言って無駄な時間をくってしまった。
「え〜、わかったよ、じゃあこのスキニーパンツで我慢するよぉ」
「いや、我慢してるのはこっちなんだからな? 」
「うーん、スカート履かせようと思ってたのになぁ、じゃあ寒いから上はダッフルね、まぁこれでも十分可愛いからいっか」
支度が終わり駅に着くと香里が待っていた。
「遅ーい! って啓!? こうなるとは思ってたけどヤバい、可愛すぎ!」
「ダメ! 啓ちゃんから離れなさいよ!」
「いいじゃん朝日奈さんは。 いつもバカみたいにくっついてるでしょ?」
「お、おい、ここで喧嘩するなよ。 さっさと行って帰るんだから」
そして電車に乗り向かっている最中チラチラ見られている。 何か変なのか?
「柚、なんかチラチラ見られるんだけどなんか変?」
「ああ〜、それは啓ちゃん可愛いからでしょ? いちいち気にしない気にしない」
そして電車から降りると涼が待っていた。
「啓!? お前啓なの? ヤバッ、惚れそうだわ……」
「ね? だから言ったでしょ、啓ちゃん可愛いって」
「あれ? ちょっと待ってよ、あんたらこのまま啓を啓で紹介するの? いくらなんでもバレるんじゃない?」
「ああ! そうだった、啓どうしたらいい!?」
「いや、そんなの今更聞かれても……」
「簡単だよ、鈴菜って事にすればいいじゃん! それならバレないでしょ?」
「あ、なるほど! 鈴菜には悪いけどそれで行こう」
そうして涼の家に着いた。 緊張する、バレないで済むのか?
「ただいま〜。母ちゃん連れてきたぞ、あと友達も」
「あらあら、いらっしゃい! みんな凄く可愛いじゃない、涼にこんな可愛い子たち勿体無いわねぇ、それで? 誰が涼の彼女?」
きた! もう勢いで乗り切るしかない!
「私です、涼君とお付き合いさせていただいている鮎川 鈴菜と申します」
「へぇ、鈴菜ちゃんって言うんだ、よかったじゃない涼、こんなに可愛い子で! ささ、上がって上がって!」
そして俺たちはリビングに行き涼の母親にもてなされた。
「こんなのしかないけど食べて食べて!
やっぱり美人のお友達は美人なのねぇ。涼ったら隅に置けないわねぇ」
「まぁ俺が本気を出せばこんなもんさ」
涼の勝ち誇った態度に若干イラッときたが冷静になれ、心なしか柚と香里は笑いそうになっている。
「あ、それにしても柚ちゃん大変だったわねぇ? 怪我大丈夫?」
「はい! 啓ちゃんのお陰ですっかり! アッ!」
柚が俺の肩に手を置きながら言った。
バカだこいつ、ほんとバカだ……
「あら? 」
「柚と鈴菜とっても仲良しだもんねぇ」
香里が慌ててフォローするがなんか不自然だぞ……
「母ちゃんお茶お代わり!」
「柚! お前バラす気かよ!?」
「ひぃ〜、ごめんなさい」
「鈴菜ちゃん、鈴菜ちゃん」
「ちょっと! 啓の事よ!」
香里が俺の脚を蹴り気付かせる。そうだった、今は鈴菜だった。結構ヤバいな……
「どうしました?」
「涼とどこまで進んだの〜?」
「ちょ!? 何聞いてんだよ母ちゃん!」
「あら、いいじゃない?」
「えと、まだ手を繋いだくらいで……」
「あら! 初々しくていいわね、応援してるわよ」
「あ、ありがとうございます、頑張ります」
その後は涼の部屋へ行きなんとかなり無事に帰れる事になった。 涼の母親と鈴菜には悪いけどとりあえず成功したようで安心した。
「またいらっしゃいねぇ!」
「今日は楽しかったです、ありがとうございました」
そして帰りの最中……
「無事に誤魔化せて良かったね! 啓ちゃん」
「お前のお陰で何度かヤバかったけどな」
「ごめんごめん、お詫びに帰ったらチューしてあげる」
「それはお前がしたいだけだろ?」
「あはは、そうかもね」
その後柚は鈴菜に大目玉を食らったのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます