最終話
「ねぇ啓ちゃん、結局初詣とかには行けなかったね」
雪が降る中学校への道のりで柚はそう呟いた。
「それ何回目だ? よっぽど行きたかったんだな」
「知ってるくせに〜!じゃあさ、春休みになったら2人でどこか旅行に行かない?」
「お前、そんな事する金あるなら貯めとけって。 でもまぁいいかもしんないな」
「お金の面ではご心配なく!」
「ああ、俺もそれまでに貯めとくよ。 鈴菜とかも呼ぶか?」
「なんでそこに鈴菜とかが出てくるのかな?」
「柚の見張りかな、何しでかすかわからないしな」
「せっかく2人きりで行こうと思ったのに何それぇ!?」
「冗談だって! それにして柚と出会ってからしばらく経つけどめちゃくちゃ濃かったな、去年は」
「そうだね! 私なんか死にかけちゃったし」
「お前の中ではもうそれ笑い話になってるなんて恐ろしいわ」
「それは啓ちゃんが居てくれるからだよ」
「それにしてもこんな早くに学校に行くなんて珍しい事するな、お前も」
「へへん、だって学校じゃイチャイチャするの控えろって言うから誰も居ないうちに登校すればいいんじゃんって思ったんだ」
「まさかその為だけに俺まで早起きさせたのか?!」
「え? そうだけど ?」
「はぁ、勘弁してくれよ……」
「ふふッ、諦めなさいって」
学校に着き柚は誰もいない事を確認してバフっと俺に抱きついた。
そして柚はここぞと言わんばかりに甘えてきた。
「おい、いつまでくっついてるんだよ?」
「ダーメ!啓ちゃん可愛いから抱きつきたくなるんだもん」
「誰か来たら恥ずかしいんだけど?」
「見せつけちゃえば?」
「ん?それとも…… 啓ちゃんムラムラしてきちゃったのかなぁ? いけないんだぁ」
「ムラムラしてんのは柚の方だろ?」
「うーん、そうかも!」
そうしてしばらく他愛のないやり取りをしていた。
「ああん、もう誰か来ちゃったみたいね」
それを聞いた俺は柚からパッと離れた。
「むぅー!せっかく啓ちゃんに私を抱きしめさせてあげたのに離れるなんていい度胸ね!」
「お前が勝手にくっついてくるんだろいつも」
「いいもんね!そんな事言うなら私に触るのお預けね!」
「そう言ってお前いつも自分からくっついてくるじゃねぇかよ……」
綺麗な長い茶色い髪をくるくると指に巻きつかせながら柚は色っぽく俺を誘惑しようとしてきた。
「んっ!」
「なんだよ?」
「啓ちゃんチュー!」
「するかよ!」
すると俺のクラスにもようやく人が入り始めた。
「ほうら、啓ちゃんが意気地なしのせいでもう来ちゃったじゃない」
小声で柚は言う。
「お預け言ってたくせにすぐ自分から破りやがった奴がよく言うわ」
俺は窓から見える風景を見て柚と出会った頃を懐かしげに思い出した。
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