第43話
俺たちが付き合ってしばらく経ち文化祭の時期になっていた。
「はぁ〜!? イチャイチャするなってどういうことよ!!」
「だから、お前のスキンシップは異常なんだって! 目に余るから先生も席替えした方がいいんじゃないか?って言ってるんだぞ? お前と俺のために!」
柚は授業中でも構わず俺に見境なくタッチしたり肩をくっつけたりキスを迫ろうとしていた。
周りもまた始まったかと呆れ顔だ。
柚の気持ちが爆発して本人も止められないようだ。
「……う、だってそれは今まで我慢してきた欲求が濁流みたいに押し寄せてきて……」
「お前って本当に極端なんだよなぁ」
「涼なんか見てみろよ、いちいち後ろから俺たちがイチャついてるのを聞いていて授業に集中出来ないんだぞ? な、涼」
「朝日奈、俺にも可愛い子紹介してくれ! なら許すから」
「だって遠藤君には前に紹介してあげたでしょ? だけど遠藤君ががっつき過ぎてキモいって」
「なぁ、柚それって自分に当てはまらないか?」
「私の場合は公認だもん! ね! 啓ちゃん」
「だからそれをやめろって言ってんだよ」
「あらあら、あんたたち本当に仲良いわねぇ。 ま、柚が一方的なだけなんだけどね」
騒がしいのを聞きつけて坂木たちも来た。
「そうなのよ、啓ちゃんったら2人でいる時くらいしかイチャイチャしてくれないんだもん」
「へぇ? 2人でいる時はどんななの?」
「えへ。 知りたい?」
「教えて教えて!」
「啓ちゃんたらね、私を押し倒して…ムガッ」
また柚が余計な事を言いそうなので急いで口を塞ぐ。
「なんだかんだでどっちもイチャイチャしてるじゃん。お熱いことで」
「でも授業中はやりすぎよ、あんたら。見てるこっちが目に毒よ」
「俺は何もしてないだろ?」
ため息を吐き俺は次の授業の準備をしていた。
「あ、そういえば文化祭でうちのクラスの出し物お化け屋敷だって! 」
「なんだ、定番のメイド喫茶かと思ったらお化け屋敷か。柚がお化けやったら迫力ありそうだな」
「啓ちゃん、それってどういう意味かなぁ〜?」
包丁持って怒り狂う柚ならお化けより怖いなんて言えないな。
「柚は可愛いからなんでも似合うって事だよ」
「もう啓ちゃん! やっと私の魅力がわかったのね」
ここまでデレると柚は意外にチョロい……
そして昼休み。
柚が作ってきた弁当を食べてると香里もうちのクラスの教室に来た。
「あ、また2人で見せつけちゃって」
「香里ちゃんもいい加減諦めたら? 啓ちゃんは私から離れないよ〜」
ギュッと俺にしがみついて来るが食べてる時はやめて欲しい。
「その啓がげっそりしてるのはどういう事かなぁ? ね、啓」
「ちょっとぉ! 私と啓ちゃんの間に割り込んで来ないでよ」
「朝日奈さん、私はいつでも啓に隙があったら奪いに行くからね!」
「隙なんか私が作らせません!」
「あ、そうそう、文化祭うちのクラスでメイド喫茶になったから啓は是非来てね!」
「ダメ! 文化祭は私と啓ちゃんはずっと一緒なんだから」
そして放課後になるとクラスでは残って文化祭の準備を始めていた。
柚もお化け屋敷に使う看板を作っていた。
「啓ちゃんもこっち来て一緒にやろ〜?」
「俺が柚と一緒だと仕事にならないから離されたんだろ? 作業に集中しろ」
「むぅ〜、私もそっちに行きたい」
俺はみんなが使う道具の管理をしていた。
絵の具がなくなったので美術室の倉庫に取りに行っているといつの間にか柚も抜け出し俺の所に駆けつけて来た。
「おい、なんで柚がここに来てるんだよ!?」
「にしし、トイレって言って抜けてきた」
「はぁ、だったら早く戻った方がいいぞ? 大の方だと勘違いされるぞ? 」
「いいよ、全然! 啓ちゃん以外にどう思われたって関係ないもんね! 啓ちゃんチューしよ?」
「まったく……」
そして俺も柚の強引さには勝てずキスをした。
「啓ちゃんも私とキスしたかったんじゃん。 口ではあんな事言っといて」
「いや、お前キスしないとずっと俺の邪魔するつもりだっただろ?」
「あ、バレちゃった?」
仕方なく俺たちは絵の具を調達し一緒に戻る……
なんて事は出来るわけないので柚が最初に戻って俺は少ししたら戻る事にした。
よし、そろそろ戻ろう。
「あ、啓! こっち見て!」
廊下を歩いていると後ろから香里の声が聞こえたので振り向くとメイド姿の香里がヒョコッと出てきた。
「どぉ、 似合う? 」
香里はクルッと俺の前で一回転しスカートの裾を少し持ち上げた。
「いいんじゃないか? 凄く似合ってるよ」
「やったぁ! 啓に褒められた、これでメイド喫茶やるから来てね!」
「啓ちゃん! 遅いと思ったらこんなとこで浮気して!」
「ふふ、朝日奈さん、啓が私を可愛いって!」
そんな事言ってないぞ!?
柚を見るとワナワナと震えていた……
「啓ちゃん、帰り道気をつけた方がいいかもね」
柚は顔だけ笑って目は怒りの炎を迸らせていた。
こうして文化祭前の準備が着々と進んでいった。
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