胃の中に人が居るのは鯨だけでは無い。


『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああぁぁああああああ!!!!』


 べろんべろんべろん。


 ごっくん。


 ごろんごろんごろん。


 ひゅーーーーーー、ぽふん。


『んあぁぁああああっぁ?』


 ゆらゆらゆらゆら。


 ここ何処?

 気が付いたら椰子の木の上に寝そべってるんですが?

 これどう言う状況??

 

 確かさっき振り返ったらクソでっかい口があって……………。


 うん。

 食べられた。

 確かに食べられた筈なんだけど、俺の眼の前に家があります。


 砂浜には波が寄せては返す。

 その先には白い壁赤い屋根の某○ハウス的な家があります。

 勿論椰子の木は風に揺られてカサカサと葉の擦れ合う音を立てている。

 ポロンポロンポロン。

 ナイロン弦の優しい音が聞こえてくる。

 音の方を見てみるとアロハシャツを着た少年がにこやかに此方を見ていた。

 少年はマンドリンの様な楽器を奏で此方に歩み寄ってくる。


「やぁ、いらっしゃい」

『あ、どうも』

「……………?あ、言葉が喋れないのかな?生まれたばかりだからなのかな??」


 アロハの少年は俺の全てを舐める様に見ていく。


「ふむふむふむ」

『なんてイヤらしい目、舐め回すようにアタイの裸を見るなんて!!』

「……………なんだか変な事考えてない?」

『ぎくっ!』


 勘の鋭い少年だ。


「ま、いいや。僕の名前はアラク。72柱の悪魔ゴェティアの一柱が一人。竜の王として27の軍団を率いる大総裁。よろしくね。それにしても僕ネームドの合成素材モンスターなんて初めて見たよ。もう胸熱だねっ」


 アラクと名乗った少年は何だかよく分からない事を喋り始めた。

 アラクが言うにはここはキングスカイドラゴンの胃の中でキングスカイドラゴンは雲を食べて生活しているので意図的に消化しない限り、消化されることは無いらしい。

 俺の一般常識では胃の中に人が居るのは鯨だけだと思っていたのだが、世界は広い。

 どうやらドラゴンの胃の中も住めるようだ。


 しかもこのキングスカイドラゴンはアラクのペットらしいので消化される事は無いとの事だ。

 しかしペットの胃の中で生活してるってどう言う事?

 意味分らないんだけど。

 そしてアラクは鑑定の様なスキルを持っている様で、そのスキルで俺の名前まで当ててきた。


「ニルって合成素材じゃない?あ、勝手にニルって呼んでごめんね。でもニルヴァーナって名前だと愛称付けるとするとやっぱり第一候補はニルになると思うんだよね。ニールってのばした方が良かった?あ、喋れないのか。まいっか。あのね普通合成素材って動き回ったりしないんだよ。何でって、合成素材が動き回ったらいざ合成だって時に逃げられちゃうじゃ無い。」


 喋れない俺の表情を察して何が言いたいか何となく分るらしい。

 コイツ凄いな。

 単眼の巨大ヒトデの表情で言いたい事を察するなんて絶対俺には不可能だわ。

 アレ?

 俺、そう言えば繁殖行動的な行為はどうするんだろう?

 嫁とか探さないと駄目なのかな?

 ヒトデの嫁とか俺無理だわ。

 だってヒトデの言いたい事なんて俺には分らない。

 愛があれば大丈夫?

 愛が芽生えれば良いけど、芽生えねーよ、普通。

 俺前世童貞だったんだ。

 素人童貞とかそう言う中途半端な童貞じゃ無く純然たる童貞。

 そう、純童貞。

 だからさ生まれ変わったらモテよう。

 そう誓っていたんだ。

 MMOではちょっとはモテたけどMMOって9割ネカマだと俺は思っている。

 話しが逸れた。

 そう、だからこう、俺、俺、生まれ変わったら―――――


 一発ヤリたかったんだ。


 だけどその夢も叶わない。

 何故なら俺ヒトデだから。

 こうなったら海洋生物のプライドに賭けて海中のアワビを食いまくってやる!!

 

『俺はアワビ王になる!!』


「何だか変な事企ててるよねニル」


 ギクッ。

 す、するどい。

 

 

「ニルってなんでかレベル高いよね。う~~~ん……あれ、スキル取ってる?」


 訝しむ俺にアラクはそう言ってきた。


『スキル取ってる?スキルって取れる物なのか―――――――ステータスおーーーぷん』



 名前 特殊合成用進化素材(虹)ニルヴァーナ

 種族 悪魔 LV48

 HP 999/999

 MP 999/999

 スキル 合体(LR)究極進化(LR)覚醒(LR)邪眼(UR)高速浮遊移動(SR)

 称号 転生者 

 SP 480


『ん?SP』

 

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