第三部

一章

大盾使いの少女は『シールドパニシュ』を使う

  王都ギルドディアよりかなり離れた北の山岳地帯。そんな場所をティファは1人で歩いていた。いつもの水色に輝くフルアーマーの鎧を着ているが、一つだけ違う物があった。それは大盾だった。

  その大盾は漆黒のティファの身の丈程あろうかというほど大きな盾で、もはや大盾というより壁盾だ。盾の縁には紫色の球がいくつもついており、更に真ん中にも青色の球が一つ付いていた。


  そんな壁盾を持ったティファに、数体のオーガがティファの存在に気づいて近づいてきた。ティファもオーガ達の存在に気づき盾を構えると


「『挑発』!!『真・強結界』!!」


ティファはいつものように、『挑発』でオーガ達を自分の元に引き寄せた後、更なるスキル『真・強結界』を発動した。すると、ティファから半径数kmに紫色のドーム状の結界が張られると、その結界に覆われた景色の色が無くなり、結界内で色があるのはティファとオーガ達だけになった。

  オーガ達はその現象に驚いたものの、自分達を害する物でないと分かると、ティファに攻撃を仕掛ける。ティファはあえて壁盾を構えて防御せず、オーガ達の攻撃をそのまま受ける。普通ならば自殺行為だが、防御力数値∞のティファにとって、オーガ数体の攻撃など痛くも痒くもない。


  そして、準備が全て完了したティファはあのスキルを発動する。


「『シールドパニシュ』!!」


ティファは『シールドパニシュ』を発動させ、壁盾を自分に攻撃してくるオーガにぶつける。すると、ティファとそのオーガを中心に巨大な爆発がおこり、ティファが張った結界の範囲までその爆発は広がる。

  数分後、ようやくその爆発が収まると、爆破の中心地には、平然と立っているティファと、ティファの周りに数体のオーガの魔石と、オーガがドロップした素材がいくつか転がっていた。


『OKだよ!ティファちゃん!実験大成功だよ!!』


  ティファの耳元に付けていた魔道具から吉報の声が聞こえ、ティファは結界を解除する。すると、そこは、結界を張る前の光景が広がっており、先程ティファの『シールドパニシュ』による爆発が起きたとは思えない程、何一つ破壊されていなかった。


「……すごい!本当に『シールドパニシュ』使ったのに何も被害を出さず済んでる!?」


「あぁ、私達も頑張った甲斐があったよ!」


ティファが喜びと驚きが混じった歓声を上げると、上空からそんな声が聞こえ、ティファは見上げると、そこには幼馴染のリッカの魔法で文字通り飛んで来た、リッカとアヤとマリーのティファの大切なパーティーメンバーと、ティファのこの壁盾の製作者のコックルと、そのコックルに協力したヒルダが、ゆっくりとティファの前に降り立った。

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