レインボースライムドラゴンはキマイラを圧倒的に凌駕する

  マリーの目の前に現れた、大量のスライムが集って出来たレインボースライムドラゴンの咆哮に、キマイラは怖気づくように後ずさる。レインボースライムドラゴンのドラゴンの咆哮は、本物のドラゴンと変わりない物だと、キマイラは本能的に悟ってしまったのだ。


「何をしている!?あれはただのスライムの集まりだ!?そんな物に怯えるんじゃない!?」


ニールセンの言葉に、その事実を思い出したからなのか、ドラゴン相手だろうと舐められる訳にはいかないと思ったのか、キマイラはレインボースライムドラゴンへ石化のブレスを放つ。


「ふん!所詮はスライムの集まり……これで……何ッ!!?」


キマイラが放つブレスをまともにくらったレインボースライムドラゴンに、所詮はただのスライムの集まりとバカにしたニールセンだったが、ブレスが放たれ終わった後も、石化する事なく堂々と仁王立ちしているレインボースライムドラゴンに驚愕する。


「石化が効かないのは貴方のその不細工な合成魔獣だけだと思っていたのかしら?それとも、ギルドディア中のイエロースライムを全て集めきったと思っていたのかしら?イエロースライムだって石化無効を持ってるわ。なら、当然そのイエロースライム達を有しているレインボースライムドラゴンにも石化攻撃は通用しないわ」


「なっ!?そ……!?そんなバカな……!?」


ただ、スライムが集まって形作っただけのドラゴンに、そこまでの能力と効果があるとは思わず驚愕するニールセン。


「さて、次はこちらの番ね。やってしまいなさい」


『グガオォォォォ〜ーーーーーンッ!!!!』


レインボースライムドラゴンは、マリーの言葉に応じるように口からブレス……ではなく、真っ白ないくつもの粘液を吐き出し、それをキマイラにかける。


ピシピシッピシッピシッ!!!カキンッ!!!


「なっ……!?なんだとぉ……!!?」


真っ白な粘液をかけられたキマイラは、一瞬で氷漬けにされてしまう。その事実に若干腰を抜かして驚愕するニールセン。


「北の帝国ブリュンヒルデ帝国との国境付近では、極寒の地域の近くというのもあって、アイススライムちゃん達が生息しているの。そのアイススライムちゃん達の粘液は凍結効果があるのよ」


「なっ……!?では……!?先程吐き出した粘液は……!!?」


「そう。私がその国境付近で家族にしたアイススライムちゃん達の粘液よ。石化は無効に出来ても、凍結までは無効に出来なかったみたいね」


マリーはクスクスと笑ってそう答える。ニールセンはそんなマリーを忌々しい表情で睨みつけ、すぐに凍結となったキマイラに命じる。


「おい!しっかりしろ!?たかが、アイススライムの粘液で凍っただけだろうが!?それぐらいにどうにかしろ!?」


「残念だけど!スライムを!!家族の絆を舐めた貴方の負けだよ!!『シールドスロー』!!」


ティファは、氷漬けになったキマイラの至近距離まで近づいてそう叫ぶと、取り外した自身の大盾を氷漬けになったキマイラめがけて投げた。その大盾が完璧にヒットした瞬間、キマイラは


パリィ〜ーーーーーンッ!!!


  と、音をたてて氷共に砕け散り、キマイラの姿は完全に消え、その場にあったのは、床に数個の魔石が転がってるだけだった。


「なっ……!?そ……!?そんなバカなぁ〜ーーーーー!!?私のキマイラがぁ〜ーーーーー!!?」


自身のキマイラが倒された事で、ニールセンは愕然となり膝から崩れ落ちる。そんなニールセンの様子をチラッと確認しながらも、ティファは魔石に近くに転がっている自身の大盾を拾う。


(ふぅ〜……マリーさんがいて良かったぁ〜……。マリーさんとスライム達の協力が無かったら、『シールドスロー』を命中させるなんて絶対に出来なかったし……)


ティファが新しくスキル書から覚えたスキル『シールドスロー』は、1番大盾使いが使っている大盾使い専用の攻撃スキルである。

  『シールドスロー』は、自身の防御力を大盾に込めて、それを投げて相手にぶつける事で、相手に込めた防御力分のダメージを与えるスキルである。防御力を込めるので、込めた分の数値は減るが、再び大盾を装備すれば元の数値に戻るので『シールドパニシュ』より非常に使いやすいスキルである。

  ただ、難点ももちろんある。防御力を大盾に込めるのに時間がかかるのと、防御力を大盾に込めているせいで防御力が減って、無防備な状態の時を攻撃されたら大ダメージをくらう恐れがあり、そうなるとスキル発動は失敗に終わる。まぁ、ただティファの防御力数値は異常値なのでそこの問題は大丈夫だと思われる。

  もう一つ問題はティファ特有の問題で、ティファの攻撃力が0である為、ティファはどんだけ頑張って大盾を投げても10cmしか飛ばせないのだ。故に、超至近距離で、相手の動きを封じた状態でしか当てられないし。飛んでる相手に当てるのは絶対不可能である。  

  なので、ヒルダも本当は『シールドパニシュ』と『シールドスロー』どっちを先に覚えさせるかで悩んだが、スキル研究家としての興味が強かったのももちろんあったが、あまり投げれない上に時間がかかる『シールドスロー』よりは、『シールドパニシュ』の方が時間がかからない分良いのではと判断して先に習得させたのである。


(今は、『シールドパニシュ』が使えないし、『シールドスロー』が1番の武器だね。まぁ、リッカかアヤに魔物の動きを封じてもらう必要があるけど……)


爆発を起こす『シールドパニシュ』に比べ、時間はかかるが込めた数値分のダメージを与えるだけの『シールドスロー』の方が被害を出さずに済むので、ティファはこのスキルをしばらく活用する事を決めた。


「ティファ!?大丈夫!?無事なの!!?」


「リッカ!?それに、アヤに!?みんなも!?何でここに!!?」


『シールドスロー』の活用法を色々考えていたら、リッカとアヤ、更にはエルーシャ達冒険者ギルドの面々や、依頼人のレオらしき人や王太子殿下まで扉を開けてやって来たので、ティファは目を見開いて驚いていた。

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