大盾使いの少女は合成魔獣キマイラと対峙する

  合成魔獣キマイラの咆哮に、ティファは一歩後ずさる。複数の上級魔物をかけ合わせた異様な存在。そんな魔物に果たして勝てるんだろうか、ティファの背筋に冷や汗が一つ流れる。


「まずは……邪魔者から消してやるッ!!」


  ニールセンはキマイラにマリーを攻撃するように指示する。キマイラはニールセンの指示に従いマリーの方を向く。肝心のマリーは未だに石化したスライム達を元に戻そうとしていて動こうとしない。


「マズい!?『挑発』!!」


ティファは咄嗟にスキル『挑発』を発動。キマイラは吸い寄せられるかのように、ティファの方を振り向く。上級魔物を組み合わせたというとんでもない魔物に効くかは分からなかったが、いつも通りにうまくいってホッと安堵するティファ。


「『オートガード』!!」


ティファはBランクに上がった事で習得したスキル『オートガード』を発動する。このスキルは、数時間の間、敵からの攻撃を受けた時に瞬時に自動的に大盾を構える事が出来るスキルである。最も、素早い攻撃や不意打ちなどの攻撃には瞬時の対応に失敗する事もあるのだが……

このスキル書を渡された時、もっと早く渡して欲しかったとティファはヒルダに訴えた。そうすれば、あのガブリィの試合の時もあんな作戦を実行せずに済んだのだから。だが、肝心のヒルダの回答は


「ごめんなさい!あの3つのスキルをどうしても託したくてすっかり忘れてたわ♡」


ヒルダはペロッと舌まで出して可愛らしい感じの答え方に、ティファはガックリと肩を落としたのをよく覚えている。


  そして、その『オートガード』が功を奏し、キマイラのブレス攻撃がきた瞬間に瞬時に大盾を構えられた。後は、これでいつも通りにやるだけだ。


「『プロリフレ』!!」


ティファは『プロリフレ』を発動。これで、キマイラの攻撃よりも自分の防御力が高ければ、反射攻撃の波動が出る。どうやら、流石に上級魔物を組み合わせ魔物でも、ティファの防御力には勝てないらしい。大盾から反射攻撃の波動が飛び出しキマイラを包む。


  が、しかし……


「えっ!?嘘!?全く効いてない!!?」


キマイラは『プロリフレ』の反射攻撃の波動を受けても、無傷の状態で立っていた。すると、ニールセンは狂気じみた高笑いを上げる。


「残念でしたねぇ!あなたの『プロリフレ』のスキルは調査済みですよ!このキマイラは石化攻撃を得意とする魔物の組み合わせ!全ての攻撃が石化攻撃なのです!石化攻撃を得意とするんですから!当然!石化攻撃は無効なんですよ!!」


それを聞いたティファは愕然とする。この魔物には完全に自分のスキル『プロリフレ』が効かないのだ。あちらの攻撃もこちらに通じないとはいえ、下手に時間をかけると、向こうが今度どんな手段をうってくるか分からない。ここは、マリーと連携して素早く撃退すべきだと、ティファはマリーをチラッと見る。


「……もうこれで大丈夫。貴方達はここで大人しくしていてちょうだい。イエロースライムちゃん達の仇は……家族の仇は……!私が討つ……!!」


石化スライム達を元に戻せたようだが、マリーの瞳は未だに怒りに燃えて、冷静さを完全に失っていた。剣を持ったマリーはその怒りの矛先をキマイラに向けたようだが、あきらかに冷静さを失った突貫故、キマイラの後脚に蹴られて軽く吹っ飛ばされる。


「きゃあぁぁ!!?」


マリーは吹っ飛ばされたが、スライム達が集まってマリーを受け止めたのでマリーは特に怪我をせず、幸運にも石化の状態異常にもかからず、ティファはホッと安堵の溜息をつく。


  しかし、その突貫のせいでティファに意識がいっていたキマイラが、マリーに意識を向けてしまい、キマイラはマリーに向けて石化効果のブレスを放つ。ティファは慌てて『挑発』を発動するも間に合わず、キマイラのブレスはマリーを包む。


「えっ……?あっ……!?」


今度こそマリーは石化するとマリー自身も思ったが、再びスライム達がマリーを囲ってガードした。先程よりも多くのスライム達が石化して、マリーの目の前にゴロゴロと転がり落ちた。

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