大盾使いの少女は元貧弱格闘家のスキルを知る
冒険者ギルドで依頼達成報告をしに来たティファ達。ギルド内には、ティファ達が加入させようとしている大型新人の戦い様が見たいとかなりの冒険者が集まっていた。
そんな冒険者達の様子に、ティファは苦笑を浮かべつつも、アヤと一緒に依頼達成の報告をし、シンシアによって依頼をこなすアヤの先程の映像が流された瞬間、ギルド内がシンと静まり返った。先程まで騒がしくしていた冒険者達が急に静かになったので、アヤはもの凄く動揺する。
「あわわ……!?やはり私のような未熟者では不合格でしたでしょうか……!?」
「違うわ。貴方のヤバさにみんな言葉が出ないだけよ」
だが、そんな冒険者達の中で、シャーリィーはゲラゲラと笑い声をあげ、マウローは腕を組み難しい表情で映像を見つめていた。
「あははははは!!こんな事されちゃあ!文句のもの字も出ないさね!これを見て文句をつけるとしたらあのバカぐらいかねぇ〜。いや、あのバカはアヤも好みのタイプだから言わないかねぇ〜」
「俺も全力で剣を振るえば……いや、流石にこれだけの規模を一振りでは難しいか……ここは素直に称賛すべきだな。やはり、冒険者とはまだまだ面白い者が多いな」
シャーリィーとマウローはそれぞれそんな感想を口にしているが、アヤをパーティーに入れないとは一言も口にしていなかった。ティファはエルーシャに期待の眼差しを向ける。エルーシャはそんなティファを見て微笑みを浮かべ
「うん。あの2人があぁ言ってるなら、アヤ君は合格だね。アヤ君は今日からティファ君のパーティーの一員だ」
「やったぁ!!やったね!!アヤちゃん!!」
「はい!!ありがとうございます!!これでティファさん達に受けた御恩をしっかりお返し出来ます!!」
エルーシャの言葉を受け、ティファとアヤは手を取り合って喜びあう。リッカはそんな2人を見て苦笑を浮かべていたが、その表情は喜びの感情が浮かんでいた。
「ただ、一応ギルドマスターとして警告すると、アヤ君はもっと力加減をコントロールすべきだな。登録時より攻撃力は格段に上がっているから、その時のように振る舞っていたら、色々と破壊しかねないからね」
「うぐっ……!?精進します……」
エルーシャから釘を刺され、喜びから一転苦い表情で俯くアヤ。アヤが力加減をコントロール出来なければ、冒険者の依頼には、町の中での活動もある為、関係ない建物等を破壊する可能性が先程の映像からも明らかなので、エルーシャとしては釘を刺さなければいけないところだろう。
「まぁ、最も力加減のコントロールだけでいい分、ティファちゃんの『シールドパニシュ』よりはまだだいぶマシかな」
「うぐっ……!?私も精進します……」
ティファの最強スキルとなった『シールドパニシュ』については、王都で使えば王都を半壊させる威力がある為、現在ティファの『シールドパニシュ』については、当面の使用禁止と、スキルマニアでスキル好きが高じてスキル書専門ショップを開いてるヒルダと、ティファやリッカの装備品を作製してくれた武具屋兼鍛治職人のコックルの2人が、『シールドパニシュ』を被害を出さないようにする為の装備品開発を進めている。が、今のところはまだ開発は難航している。
「ところで……何で彼女はこんな異常な攻撃力を得たのかしら?聞いた感じだと、最初はそんな異常な攻撃力って感じではなかったみたいだし……」
リッカはずっと疑問に感じていた事を口にする。アヤの話によると、最初は普通ぐらいの攻撃力で、ティファやリッカのように登録時から異常値ではなかったようである。なので、何かのきっかけでこの数値に至ったのは間違いない。
「それは、恐らくアヤ君が今会得しているスキルが関係していると思うよ」
エルーシャは苦笑を浮かべそう説明する。エルーシャは「スキルを2人に見せても構わないかい?」とアヤに確認をとる。アヤがそれを了承すると、シンシアがそれを予期していたかのように一枚の紙を持ってきた。
「これがアヤちゃんのスキルよ」
アヤ・サクライ
スキル
『不屈の拳』……状態異常時に拳を振るえば振るう程攻撃力のステータスが上昇する。更に、状態異常時に戦闘を行うとその攻撃力は2倍となる
『不屈の修練』……修練を積めば積む程ステータス値が上昇。状態異常時に修練を積めばステータス値は更に上昇。1番得意とするステータスなら3倍上昇する
アヤのスキルを見てティファもリッカも、アヤのステータス値の異常な上がり具合に納得した。この二つのスキルがあるなら、アヤがあれ程の攻撃力を得てもおかしくはないだろう。何故なら、アヤは状態異常の呪いがかかった状態で修練や拳を振り続けたのだから。
「『修練』のスキルは東方国の冒険者は割と多くの者が習得しているスキルだけど、アヤ君の『不屈の修練』よりは効果が薄いスキルだから、ある程度ステータスが上がったら外す人が多い。けど、アヤ君が呪われながらも『修練』を重ねた結果、『修練』のスキルが異常進化したんじゃないかなと推測してるよ。『不屈の拳』も多分似たような形で会得したんじゃないかと思ってるけど、詳しくはヒルダに調べてもらった方がいいかもね」
エルーシャは苦笑しながらそう説明する。呪いで散々苦しんだアヤだが、その呪いの結果自分が強くるきっかけを得たと思わず、呆然と立ち尽くすアヤ。
「まぁ、何はともあれ……アヤ君。君は今日からこの王都ギルドディアで活躍を許された冒険者で、ティファ君達のパーティーの一員だよ」
エルーシャはニッコリ笑ってそう言った。アヤは若干戸惑いながら、ティファやリッカにエルーシャ、それからギルド内にいる人々が、皆自分を歓迎してくれていると実感し
「アヤ・サクライ!!不束者ではありますが!何卒!ご指導とご鞭撻をお願いします!!」
アヤはギルド内にいる皆に、土下座のような姿勢で深々と頭を下げ挨拶した。アヤのまさかの挨拶の仕方に、ティファ達だけでなく、ギルド内にいる全ての人がポカンとした表情になった。
だが、色々あったがティファ達は早くも希望通りのメンバーを得る事が出来たのであった。
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