第二部

一章

大盾使いの少女のパーティーは新たなメンバーを募集するが……

  自分達のパーティーに新たなメンバーを加入させる。そう決断したティファとリッカは、ティファが事前にエルーシャに募集をかけて欲しいと頼んだので、ティファ達は早速冒険者ギルドに向かった。

  ティファのパーティーは発足してまだ間もない。なので、そんなパーティーに入りたいと思う人はそうはいない。とは言え、ホウオウ討伐とガブリィとの決闘で自分達は少しぐらいは有名になったと自負している。だから、1人や2人ぐらいはいるだろうティファは予想していたのだが……



「残念だけど、ティファちゃんのパーティーに入れる人は1人もいないね」


「えぇ!?そんなぁ〜!!?」


まさかのエルーシャからの1人もいない発言に、ティファは涙目でそう叫ぶ。少しは自分達も名が売れたと思っていたのに地味にショックだった。しかし、リッカはエルーシャの言葉のある部分が引っかかっていた。


「入れる人がいない?入りたい人がいない訳じゃなくて?」


リッカがそこを指摘すると、エルーシャは苦笑を浮かべた。


「流石はリッカ君。確かに君達のパーティーに入りたい人はそれこそ昨日頼まれてから今まで沢山の応募があったよ」


「えっ?だったら……」


「残念だけどそういう訳にはいかないさね」


ティファが入れる人がいない理由を尋ねようとしたら、後ろから聞き覚えのある声がして、ティファ達はすぐに声がした方を振り向くと、そこにはやはりSランク冒険者のシャーリィーがいた。その隣には仲が悪いのにいつもいるマウローの姿もあった。


「悪いけど、ティファ達の新しいメンバーには私達から更に条件を付け加えさせてもらったよ」


「えっ?条件……ですか……?」


「お前達と同じ規格外の物を持っている者だ」


マウローの言葉を聞いて、ティファとリッカは2人して引きつった笑みを浮かべる。

  ティファとリッカは冒険者になってまだ1年で、その上16歳という若さで規格外のステータスを持っている。

  

  ティファは、HPとMPを除く防御力以外のステータスは0なのだが、防御力だけは∞というあり得ない数値を持った、超強力なタンクである。

  

  リッカは、魔力数値900000という数値を誇り、攻撃魔法も回復魔法も極め、『聖賢女』という異名を持つ魔術師である。


  そんな規格外のステータスを持つ2人なので、当然新しいメンバーも2人と同じような規格外さを持ってくれないとつまらないというのが、シャーリィーとマウロー、いや、ギルド内にいる冒険者達全員の意見である。

  正直、自分達の将来にも繋がる話なので、面白いかどうかで決めて欲しくないと2人は思う。しかし、リッカはある程度この展開を予想していた。自分達という規格外のステータスを持つ者のパーティーだから、新たに参加するメンバーも同じ規格外の持ち主が求められるという事は。だから、リッカも新しいメンバーはきっちり厳選するつもりでいたが、すでに条件を付け足された結果、誰もいないという事態は予想外であった。まぁ、その条件を付け足された時点で該当する人物がいないのは予想はしていたが……


「あの……本当に誰もいないんですか……?」


「少なくともティファ君達みたいな規格外の能力を持つ子はいないね。一部のステータスが高い子は沢山いるけど、それでも飛び抜けてではないね」


エルーシャは苦笑を浮かべながらそう答えた。このギルドディアにいる冒険者の数はかなり多い。他国に比べてもその数は圧倒的である。そんな数ある中で、自分やリッカのような規格外のステータスを持つ者が2人もいたのだから、他にもいるんじゃないかとティファは思ったが、エルーシャの答えば残念ながらノーだった。


「別に1人もいない訳じゃないだろう。あの娘なんかどうだい?」


「確かに。あいつならある意味でティファ達と同じように規格外だな」


Sランク冒険者の2人が心当たりがあるらしくそう言ったので、ティファは希望を込めた眼差しをエルーシャに向けるが、エルーシャは困ったような表情で首を横に振った。


「彼女なら確かにティファ君達同様の規格外だよ。ただ、彼女はティファ君達が望む近接戦闘タイプという訳ではないし、色々と訳ありな子でね……あまり人と関わりをもとうとしないんだ」


エルーシャの言葉に、ティファはガックシと肩を落として座り込む。そんなティファを見てエルーシャは苦笑を浮かべ


「まぁ、今の所いないだけで、ギルドディアに次々と冒険者にないたい子達がいるから、その中に条件が当てはまりそうな子がいたらすぐにティファ君達に教えるし、何だったら他国の冒険者ギルドにも話して募集をかけてみるよ」


エルーシャの言葉にティファ達は頭を下げてお願いし、2人は冒険者ギルドを出た。とりあえず、2人は自分達でも情報収集して条件に当てはまる冒険者がいないか探してみる事にした。

 

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