大盾使いの少女と愚かな冒険者の決闘は決着する

「な……!?なぁ……!?どうなってやがんだぁぁぁぁ〜ーーーーー!!!?」


ケルベロスがティファに突進をかました時はそれで勝利を確信したガブリィだったが、突然起きた波動にケルベロスが包まれたかと思ったら、ケルベロスは魔石になってしまい驚愕するガブリィ。

  観客席の観客達も、何が起こったか分からずガブリィのように動揺している。そして、その光景を間近で見て慣れているリッカだけは、「勝ったわね」と呟いて、売店で買ったポテトを食べていた。


「ふむ。まさかあの不遇スキル扱いされた『プロリフレ』がティファちゃんによってあんな風に化けるなんてね。間近で初めて見ると本当に驚きだよ」


「今頃、観客席にいるヒルダは興奮してるだろうさねぇ」


「違いない」


  エルーシャ・シャーリィー・マウローはティファの『プロリフレ』のスキルを見てそうコメントする。そして、シャーリィーの予想通り、観客席にいるヒルダは


「凄いわぁ!?ティファちゃん!貴方に『プロリフレ』を託して正解だったわ!やっぱりスキルの可能性は∞よ!!」


と、艶かしく身体を動かしてそう言った。そんなヒルダの近くにいた、男性陣は皆ヒルダに目がいってしまい、彼女と一緒に来た男性は思いっきり叩かれていた。



「ぐっ……!?ちきしょおぉ!?あの男!?最もらしい事言って俺に偽物を与えやがったな!?金返しやがれぇ!!?」


ガブリィは自分が金を出して買った魔物が偽物だと思いそう発言する。そうでなければ、あんな役立たずのグズ娘に負けるはずがない。だから、ガブリィはあのケルベロスが偽物だと判断していた。



「なぁ、お前はケルベロスと一度遭遇した事があるんだろ?だったらアレは偽物か?」


「いや、あの背中に冷や汗が伝う程のプレッシャー……間違いなく本物だ。だが、俺からすればそのプレッシャーを与えたケルベロスの牙を、防御の高さ故に折り、あまつさえ一瞬で消滅させたティファちゃんが1番恐ろしい……」


「そうか?俺はそんなティファちゃんを未だに下に見てるガブリィの方が恐ろしいと思うが」


「それもある意味で間違ってないな」



などと、観客席の冒険者が会話している声が、ガブリィの耳に届くはずかなく、ガブリィは忌々しそうに舌打ちをしながら剣を構える。


「チッ!あんな男の口車に乗った俺がバカだったぜ!いいぜ!お前みたいなノロマなグズは俺の力だけで倒してやらぁ!?」


ガブリィはそう言うと、自身の素早さを上げる技を連発する。ガブリィの得意パターンがきた事を察したティファは、昨日一晩考えた作戦を実行に移した。


「『7色の盾』!!」


  ティファはホウオウを討伐した事で会得した技『7色の盾』を発動させる。ティファの両隣に計6色の盾が出現する。突然出現した盾に、観客もガブリィも何が起こるんだ?とティファの行動に注目する。6色の盾はティファを囲うようにし、一つ盾だけは、ティファの真上に行き、そして、真上にある盾以外は何故かグルグルと回り始めた。ティファの謎行動に観客もガブリィも困惑する


「……ハッ!?そうか!幻覚の盾を出して俺を混乱させようって魂胆か!甘いな!そんな手に乗る俺じゃねえ!」


ティファが出現させた盾を幻覚の盾だと勝手に思い込み、グルグル回っているのは自分を混乱させ油断させるだけの物だと判断したガブリィは、素早く動き回りながらティファへと攻撃をしかるが


「チッ……!固い……!?」


幻覚だと思っていた盾があまりにも固く、自分の剣では砕けないのに少し動揺するガブリィ。盾は幻覚ではなく、ティファの防御力の数値と同じ防御力を誇る盾なので、ガブリィ程度の攻撃で砕けるはずがない。それでも、ガブリィは諦めず幾度も攻撃を繰り返す。


「ちくしょおぉ……!?このぉ……!?いい加減にしやがれ……!?」


何度も何度もガブリィは素早くあちこち動き、攻撃する場所を変えながら攻撃するも通じない。真上からならばとジャンプして攻撃を仕掛けるも、それも真上に設置された盾に防がれてしまう。


「クソッ……!?いい加減にしやがれよぉ……!?」


ガブリィは再びティファに攻撃を仕掛ける。が、それも盾によって阻まれる。しかも、その盾は水色の盾だった。


  突如、水色の盾から巨大な波動が放たれて、ガブリィは避ける間もなく、その波動をもろに受けてしまい、ガブリィはその波動による攻撃で吹っ飛ばされ目を回して倒れる。


『きゃあぁぁぁぁぁ〜ーーーーーーーーーー!!!?』


そんな吹っ飛ばされ倒れたガブリィを見た大半数の女性観客者達から悲鳴が上がる。男性観客陣は悲鳴こそ上げないものの、嫌なもの見たと言わんばかりの表情になる。

  それもそのはずで、ガブリィはあの波動を受けてHPだけでなく、武具に服すら砕け散ってしまったのだ。故に、今のガブリィは全裸で目を回して瀕死状態になっているのである。

  王太子アルフレッドは、なるべくガブリィの方を見ないように、入場ゲートに控えていた騎士に、ガブリィを運んで蘇生を行うよう指示。騎士達は若干嫌そうな顔をしながらも、裸のガブリィを担架に乗せ、用意した布でガブリィの身体を覆って、アルテミス教へと運んで行った。

  王太子アルフレッドはそれを確認した後、勝者であるティファの名を告げる為にティファの方を見たのだが


「へっ?」


王太子アルフレッドは思わずそんな素っ頓狂な声を上げてしまった。何故なら、ガブリィへ『プロリフレ』をして倒したであろう肝心のティファも、目を回してその場に倒れていたのだから……

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