ガブリィsideストーリー2
ヒルダの店でスキル書を得てスキルを習得したティファ達はコックルが製作した装備品が出来上がるまで「山猫亭」で宿泊しながら待つ事にした。
そして、一方ガブリィはと言うと……
「ちきしょおぉ!?何で俺の訴えが正当じゃねえんだよ!?」
冒険者ギルドから逃げるように去った後、ガブリィはギルドの対応に納得がいかず、今度は監査ギルドへ足を運んだ。ガブリィは監査ギルドに自分が冒険者ギルドで不当な扱いを受けたと主張したのだが
「お調べしました。が、冒険者ギルドの対応に不備はなく、むしろ正当な判断です。よって、あなたの訴えは受理出来ません」
と、淡々とした声で返された。それが余計にカチンときて、怒鳴り声をあげて訴えを受理するように主張したが
「……冒険者ギルドへ不備を申し立てないなら出来ない事もありませんよ。貴方という存在を放置していたという件で。その際もちろん貴方が1番の処分対象になりますがどうされますか?」
などと言われ、ガブリィは顔を真っ青にして退散するしか出来なかった。
「クソがぁ!?どいつもこいつも!?あんな役立たずの味方しやがって!!?」
ガブリィの怒りの矛先は今度はティファに向いた。あいつのせいでリッカには逃げられ、周りからバカにされるんだと愚かな想いを抱いた。こうなったらティファには自分のように痛い目に合わせなきゃ気が済まない。
そう思ったガブリィは自分のメンバーに招集をかけた。リッカも探してもらい、ティファに痛い目をみせるには人手がいるだろうと判断したからである。そして、ガブリィは集合場所に到着してみれば……
「んなぁ!?何でこんだけしかいないんだよ!?」
集合場所には男性冒険者が3人いただけである。しかも、3人はお金で雇用契約をした者で、冒険者ランクはFより一つ上のEランクの冒険者である。その3人は若干かやる気が無さそうに座っていた。
「おい!?お前ら!?他の奴らは!?まだ来ないのか!!?」
ガブリィが3人にそう尋ねると、長身のちょっとガリガリの冒険者が溜息をつきながら
「メンバーはもう俺達だけです。他の皆さんは全員辞めていきました」
「な!?なんだとぉ!?」
ガブリィのパーティーにはティファ達がいた当初10名程在籍していた。なので、後4人程メンバーがいて、その内2人は元シャーリィーとマウローのパーティーに所属していた凄腕冒険者である。
そして、3人の内1番身長の低いメンバーが、手に持っていた大量のお金をガブリィに渡す。
「これ。4人さんの違約金です。ちゃんと規約通り渡した分の倍の金額であるのもギルドを通して確認したそうですから、多分間違いないと思います」
身長の低い冒険者はそう言ってガブリィに多額のお金を手渡した。そのお金が本当に自分のパーティーを抜けたんだという事実に全身が震えるガブリィ。
実は、先程の実力ある2人を含め4人の冒険者はお金を渡すからパーティーに入れて欲しいと向こうから言ってきたのである。元シャーリィーやマウローのメンバーはもちろんだが、他の2人も下手したら自分より名のある冒険者が、自分のパーティーにお金を出してまで入りたいと言ってきたので、俺も有名になったもんだと、ガブリィの自尊心は大いに膨れ上がったが、結果はこの有り様である。
「な……!?何であいつらは俺のパーティーを抜けたんだ!!?」
ガブリィはそう叫ぶと、3人の内の1人、まるっと太った冒険者が溜息混じりに口を開いた。
「元々あの4人さんの目的は、リッカさんとティファさんを、自分達が所属していたパーティーに招き入れるのが目的なんです」
「なっ!?リッカだけじゃなく!?ティファもだと!?」
正直、リッカを誘い入れる為に自分のパーティーに入ったのでは?とは考えてはいたが、まさかその中にあの役立たずのティファまで含まれてるとは思わず驚愕するガブリィ。が、更に3人から思いもよらない言葉が告げられる。
「いや、むしろティファさんがメインのようでしたよ」
「リッカさんを勧誘してるのは、あくまでティファさんを獲得する為でしたね。まぁ、リッカさんそれが分かっていたから全然誘いに乗りませんでしたけど……」
「ガブリィさんがティファさんの実力を知られないよう色々手を回してもいましたね。まぁ、ガブリィさんはリッカさんに夢中で、途中からする必要ないと判断したみたいですけど……」
3人の言葉に、ガブリィは口をポカンと開けて驚愕する。前から、リッカをメンバーの者が何か誘ってる場面は目撃していた。リッカはそれを突っぱねていたので、ガブリィは一安心していたが、まさかそれが全てティファを勧誘するものだとは思ってもみなかった。
しかし、ガブリィとは対照的にメンバーの3人は「そりゃティファさんなら当然だよな」と思っていた。
この3人は、ヒヨッコレベルの冒険者というのもあり、よくティファと組んで低級魔物の討伐依頼をこなしていた。その際、ティファが1人で魔物を引き受けてくれるので、ティファに群がった魔物を攻撃するだけなので、3人の腕前でも簡単に討伐出来た。
3人は自分達が魔物を討伐出来たのはティファのおかげだと十分理解しているので、いつもティファに感謝の言葉を述べると
「そんな!?むしろ3人がいなきゃ私1人ではとても討伐出来ませんでしたし!私の方こそいつもありがとうございます!!」
と、逆に丁寧に感謝され、おまけにティファは料理を作るのが趣味であった為、「こんな物でお礼になるかどうか……」と言って手作り料理を3人に渡してくれたのだ。正直、3人はこの時ティファを天使か女神の生まれ変わりだと確信した。
このエピソードでも分かる通り、ティファが1人いれば新米冒険者達に無傷で魔物討伐の経験を積ませる事が出来る。その重要性をまるで分かっていないのは、未だに驚きすぎて口をポカンと開けっ放しの愚かな冒険者だけである。
本当なら、実はティファを心底慕っている3人も辞めたいのだが、いかんせん3人はまだ低級ランクの冒険者で、4人のようにバンと違約金を出せるお金がない。3人は未だに情けなく口を開けてるリーダーを見て溜息をつくしか出来なかった……
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