大盾使いの少女はスキル書でスキルを習得する

 次にティファ達が訪れたのはスキルショップ「ヒルダ」だ。ティファ達は早速店の扉を開けると


「いらっしゃい!!ティファちゃん!!待ってたわよぉ〜!!」


「わっぷぅ!?ヒルダさん!?」


店を開けた途端、この店の主たるヒルダに抱きつかれ息苦しさでもがくティファ。と言うのも、ヒルダは先程会ったコックルさんやリッカよりも胸が大きい女性なのである。しかも、身長も高く若干小柄なティファは抱きつかれたらあっという間にヒルダの胸に埋もれてしまうのだ。


「ヒルダさん。嬉しいのは分かりますが落ち着いてください。私の幼馴染がリアルに窒息死しそうですから」


リッカが溜息混じりに注意すると、「あら、いけない私ったら。つい」と言ってティファを解放する。解放されたティファは酸素を求めて荒く深呼吸する。


「ティファちゃん!ランクアップおめでとう!」


ヒルダはそれはもうとても自分の事のように、ティファのランクアップを喜んでいる。ティファは思わず苦笑を浮かべ「ありがとうございます」とお礼を言う。


「それで!ランクはDになったんだよね!つまり!スキルが使える枠が5つになったんだろ!スキル3つ覚えられるんだろ!」


そう言ってグイグイと、その誰もが一度は振り返りそうな美貌をティファに近づける。ティファはもう何と言っていいか分からず乾いた笑みを浮かべるしかなかった。



 そもそも、リッカの予定ではコックルの武具屋に寄る予定しかなかったのだが、パーティー登録を終えてギルドから出ようとした時に、エルーシャに呼び止められ


「あぁ、そう言えばティファちゃん。たった今ヒルダから連絡がきて今日のいつでもいいから店に来てだってさ」


エルーシャは苦笑を浮かべてそう言った。どうやら、ティファのランクアップの情報を掴んで連絡をしたらしいのだが、ついさっきランクアップしたばかりなのにどうやってその情報を掴んだのかは謎である。



「あぁ!もう!早くティファちゃんに試してもらいたいスキルが沢山あったからね!何度ティファちゃんのランクアップを待ち望んだ事か!」


ヒルダはそれはもう恍惚な表情でそう言った。

 

 冒険者ランクが上がると、スキルが使用出来る枠が増える。Fランクで2つ。Eランクで3つ。Dランクで5つ。Cランクで8つ。Bランクで10。そして、Aランクになると、その人次第でスキル枠を覚える上限枠が決まる。

 ヒルダは前々からティファの能力を高く買っており、早く自分が色々入手してきたスキルを覚えさせたいといつも言っていた。そして、この度ようやくティファがDランクに上がったと聞いて早速ギルドを通じて呼び出したのである。


「それで、一応聞くんだけど……ティファちゃんはどんなスキルを習得したいとかあったりするのかい?」


「えっと……その辺よく分からないのでヒルダさんのお任せでいいですか?」


「あぁ!もちろん!今持ってくるから待っててね!」


ヒルダはそう言ってもの凄いスピードで奥へと消えて行った。


「……相変わらずだよね。あの人……」


「あはは……」


ヒルダはとにかくスキルが大好き過ぎて、自分でスキル書専門店を立ち上げる程のスキルマニアである。本当は冒険者になって自分がスキルを使いたかったらしいのだが、冒険者は誰にでもなれる訳でなく、冒険者適応能力がないと冒険者にはなれない。その点はティファとリッカはクリアしたのだが、ヒルダはクリア出来なかった。

 だが、それでヒルダは諦める女性ではなかった。自分がオススメするスキルを冒険者さんに使ってもらおう。その想いからこの店を立ち上げたのである。まぁ、半分は彼女の趣味も高じた店になってる訳だが……


「お待たせ!!私がティファちゃんにオススメするスキルはこれよ!!」


ヒルダはもの凄いスピードでティファ達の所に戻ってきた後、3つのスキル書を手にしてやって来た。その内の一つを手に取り、ヒルダはスキルの説明をし始める。


「このスキルは『サーチアイ』。目で見た相手のステータスや弱点なんか探れるスキルよ」


「へぇ〜!凄い便利なスキルですね!」


「だろう!まぁ……今じゃ不人気のスキルなんだけどね……」


「えっ!?どうしてですか!?」


ヒルダは苦笑を浮かべながら『サーチアイ』のスキルが不人気である理由を説明した。

 『サーチアイ』はその目で見た者のステータスやら弱点やら探れる非常に便利なスキルであるが、探るの数分の時間を要する。その間、攻撃を受けダメージを受けたら『サーチアイ』の効果は切れてしまうのである。おまけに、最近では安価で『サーチルーペ』という『サーチアイ』と同じ効果で、『サーチアイ』よりも早く探るアイテムが出来たので、ほぼ不要になったスキルなのである。


「いや、そんな不要スキルを何でティファに……ぢて、あぁ……そういう事か……」


「リッカちゃんの想像通りよ!ティファちゃんの防御力は桁外れ!どんな魔物の攻撃も受けつけない!つまり!ダメージを受けないティファちゃんなら『サーチアイ』を使いこなせるって訳!」


ヒルダの説明にティファはなるほどと頷く。自分は防御力∞で、大半の魔物の攻撃のダメージは通らない。そんな自分ならこの『サーチアイ』はうってつけだろう。


「ティファちゃん!お願い!せっかくのスキルをゴミとして捨てられたくないの!どうか使ってくれない!?」


なにより、ヒルダのスキル対する熱い想いに、ティファも共感するところがあったので、ティファは首を縦に振った。こうして、ティファは新たにスキル『サーチアイ』を習得した。


「そして残る2つのスキルだけど……2つともある意味でティファちゃんだと超強力攻撃スキルになるかもね」


ヒルダがウィンクしてそう言った。大盾使いであるティファに超強力攻撃が結びつかず、ティファは首を横に傾げた。

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