第30話 カムイの正体
「ラグナ、それにリコ!?」
「久しぶりね。案外早く見つかってよかったわ」
「リコお姉ちゃん、無事だったんだね!」
ミソラはリコの姿を見て思わず抱き着いた、
「もちろん無事よ。私が死ぬはずないでしょう」
「……うん」
「ラグナ、城に行ってたんじゃないのか?」
「少し事情があってね。君を探していたんだよ」
ラグナは王城での出来事をリクトに話した。
「……というわけなんだ。よかったら君の力を貸してくれないかい?」
「もちろん構わない。力になれるんだったらいつでも協力するぞ」
「ありがとう」
ラグナは礼を述べた後、ちらりとカムイの方へと視線を向けた。
「それにしても意外だね。君たちが一緒にいたとは」
「え?」
「これはラグナ王子、無事にラゼルド王国に辿り着けたようですね」
カムイがラグナに向かって言った。
「カムイ殿、リント王からあなたの力を借りるようにと言われました」
「なら、既に話は聞いているようですね」
「なあ、二人は一体何の話をしているんだ?」
リクトとミソラは何が何だかわからない状況だ。
「……もしかして、あんたこの人が誰なのか知らないの?」
「ああ。素性を聞いても話してくれないんだよ」
「リクト、この方はカムイ殿。ヴィクリード帝国の直属騎士の一人だ」
「直属騎士?」
「まずそこからなのね」
リコはヴィクリード帝国について説明した。
「じゃあ、カムイはかなりすごい奴ってことなのか」
「表現が子供っぽいけど、端的に言えばそうね」
「じゃあ私たち、結構失礼なことしちゃったんじゃ……」
「そんなの、気にしなくていいよ。直属騎士には階級がないんだし、位的には一般兵と変わらないんだから」
「とはいっても……」
ミソラは申し訳なさそうにしている。
「ところでラグナ王子、リント王からあなたに力を貸すように言われたということは、私も山賊退治に参加すればよいということでよろしいですか?」
「そうしてもらいたいのは山々ですが、あなたには私の監視をしてほしいと頼まれまして……」
ラグナはリント王から言われた試練について話した。
「なるほど、では私はあくまでも監視として関わった方がよさそうですね」
「カムイは参加しないのか。カムイほどの力があれば山賊退治は余裕なんじゃないか」
「それじゃラグナ様の試練の意味がないだろう。彼がどうやって山賊を対処するのか、それを問うているんだから」
「そう、それについて少し疑問があるんだけど」
突然、リコが口を挟んだ。
「ラグナ様、あなたリント王から言われた内容を覚えてる?」
「山賊討伐だろう」
「違うわ。リント王は山賊の対処をしてほしいと言っていた」
「同じ意味だろう?」
「討伐は倒すとか、殺すという意味があるけど、対処なら、それ以外の方法もあるはずよ」
「それ以外の方法ってなんだよ?」
リクトが尋ねる。
「それはラグナ様が決めることよ。あなたがどういう結論を出すのか、私たちは見届けることしかできないでしょうね」
「……」
リコの言葉を聞いて、ラグナは以前戦ったロクスの言葉を思い出していた。
ラゼルド王国と山賊たちに何があったのかは詳しくはわからない。ロクスからある程度のことは聞いているが、彼の言葉を全て鵜呑みにすることはできない。しかし、王に問いただしても詳しくは話してもらえなかった。となれば、自分はどうするべきなのだろうか。
「とりあえず、今はその問題は置いといてまずは仲間を探しましょう」
「そうだな。シュウとアカネを探すんだよな。まだこの国にいるといいんだが……」
問題はそこだった。幸いリクトはすぐに見つけることができたが、シュウとアカネは傭兵だ。仕事をするために既にこの国から離れている可能性がある。そうなると見つけ出すのは非常に困難になるが……。
「心配はいらん。その二人ならいる場所はわかってる」
と、頭を悩ませていた三人に対してカムイが言い放つ。
「え、カムイはシュウとアカネを知っているのか?」
「直接会ったことはないが、名前くらいは知ってるよ」
「じゃあなんで今二人がどこにいるかがわかるんだ?」
「それは会えばわかるよ。さあ案内するから行こう」
と、カムイは四人を引き連れてシュウたちの元へと向かった。
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