第202話 仲間探し
「でも、急に仲間って言われても難しいと思わないかしら」
「なんだよ藪から棒に」
依頼を受ける『二人の仲間を見つける』という条件を達成するために、ギルドのホールで冒険者の観察をしていた。
「今回向かうのは『帰らずの森』。まぁ私は一回行ったことあるけど、でもその時はタマナさんと二人だったから良かったんだけど、人数が増えるってことはそれだけリスクが増えるってことでしょ」
「おい、お前。今さらっととんでもないこと言わなかったか」
「それは気にしないで。とにかく、仲間が増えるのにはメリットもあるけどデメリットもあるって話。せめてリントレベルの人ならいいけど、それ以下なら連れて行くだけ足手まとい。いっそ適当な人に声をかけて、依頼を受ける時だけ一緒に居てもらって、後は私達二人で行くって手も……」
「いや、それはバレるだろ。それにそういうのを含めてフォローし合うのが仲間ってもんだろ。仲間がいないのはこれまでそういうのサボってきたお前の責任だしな。良い機会だ。この際頼れる仲間ってのを見つけてみたらどうだ?」
「めんどくさい」
「あ、あのなぁ……冒険者稼業がリスクだらけってのは知ってるだろうが。仲間がいなくてこの先やって行けるほど甘くないだろ」
「それを決めるのはあなたじゃないわ」
「確かにそうかもしれないけどなぁ。でも、それが一般常識だ。そんで、その常識があるせいで今依頼を受けれてないんだろうが。だったらこの先のことも考えて今のうちに仲間を見つけておくべきだ」
「はぁ。リントもお節介というか、なんというか。お人好しよね」
「別にこれくらい当たり前だろ。お人好しなんて言われるほどのことじゃねぇよ」
「十分お人好しだと思うけど。私なら勝手にしたらって言って終わりだもの。それで相手がどうなろうと知ったことじゃないし」
「それはそれでつめたすぎんだろ」
「人ってそういうものよ。自分の利害の外ならどこまでも冷淡になれる。それに私は他人の事情に踏み込んでいられるほど余裕があるわけでもないもの」
「? どういうことだ」
「……こっちの話。まぁ、でもそれじゃあ今回だけはあなたの言う通りにしてあげる。友人からの忠告くらいは聞いてあげる器量はあるもの」
「っ!」
「どうしたの? 変な顔して」
「いや、お前……俺のこと友人だと思ってたのか」
「? 当たり前でしょ。今さら何言ってるの。というかむしろどう思われてると思ってたの?」
「いやまぁ、せいぜい使い勝手の良い駒とか、奴隷とか、下僕とか、そんな感じの考えかと」
「…………」
「いや、そんな引いたような顔すんなよ!」
「引くわよ普通。え、だってそう思われてるって思ってたのに、私に付き合ってたってことでしょ。それってつまり、そういう扱いされたいってことでしょ? 普通にキモイ」
「そんなわけねぇだろうが! 今のは言葉の綾みたいなもんだ。俺だって奴隷とか下僕とか思われたくねぇよ」
「だったらいいんだけど。良かった。もしリントにそういう性癖があったら今後の付き合いを考えるレベルだったもの」
半分本気でそういうリリア。リントは妙な誤解が生まれなかったことに安堵していた。リントにとってもリリアは友人だ。友人から変な誤解をされるなどたまったものではない。
「それじゃあちょっとくらい真面目に探してみましょうか。私は前衛、リントは後衛よね」
「まぁそうなるな」
「となると、中衛が一人。後は後衛がもう一人かしら」
「後衛増やすより前衛増やしたほうがよくないか? なんだかんだ前衛が一番危ないわけだからな」
「確かにそういう考えもあるかもしれないけど、私の邪魔されるのが嫌なのよ」
「邪魔ってお前な……」
「その点後衛なら私の動きが阻害されることはないでしょ」
「確かにそうかもしれねぇけどな。まぁいいか。とりあえず探してみようぜ」
「でも、私達についてこれるレベルだものね。新米じゃ話にならないし」
「俺達も新米ではあるけどな」
「そこがネックよね」
リリア達は、実力だけで見れば上級冒険者にも匹敵する。しかし、冒険者の歴で見れば新米もいいところだ。強くなることが目的のリリアにとって、上級冒険者を仲間にする選択肢はない。しかしだからといって新米冒険者を連れて行っても足手まといにしかならない。
「そう考えると結構難しいわね」
「そもそも『帰らずの森』に行けるようなレベルの冒険者はチームを組んでるし、行けない冒険者は実力不足か。やっぱ今回は素直に諦めるしか」
「却下よ。最悪適当な冒険者を選んででも行くわ」
「そこまでするか」
「ちょうどいい二人組の冒険者はいないかしらね」
そうリリアが小さく呟いた、その時だった。
「よう嬢ちゃん、なんだい。臨時の仲間でも探してるのかい?」
「あなた達……誰?」
「おっと、そう警戒しないでくれよ」
「わたし達も冒険者」
声を掛けてきたのは無精ひげの生えた、リリア達よりも若干年上の青年と、リリア達と同い年か少し下くらいの少女だった。
「俺はロウ、こっちは妹のライってんだ。仲間探してるってなら、話くらいは聞くぜ?」
そう言ってロウはニヤリと笑みを浮かべた。
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