24日目 パーマ

彼曰く、たまにはいいじゃない、かっこよくても。


 ***


同期社員、男の人の話。


センター分けの似合うメガネ男子。

個人的にはそこそこいい感じだと思う、彼氏いなかったらこの人と付き合ってたかもしれない人。

初めて会った時は”話しかけるな”オーラが強くて怖かった。でも話してみると意外にポンポンと話してくれるし、聞き上手でこっちも話しやすい。構ってほしいな~って話しかけに行くと、ちゃんと話聞いてくれるし、見かけると声をかけてくれる、優しい人。


「でも顔がよくないからね、モテることは諦めてるよ。一人の方が楽だし」


それと卑下が多い人。別にそこまで自分を下げなくてもいいのに、と思っても気づけば自分のマイナスポイントを出してくる。「やめて!」って押し付けても次のマイナスを出してくる、もぐらたたきみたい。

イヤイヤ、求めてない求めてないそんな減点。それ以上は魅力が減ってくからやめて~~。仕事できるし、優しいし、話も面白いのに、自信なくしてるのはただただもったいないだけだよ……。

よくないのは、卑下することを面白いと思ってしまっているところ。そんな雰囲気の話し方をしているから、ちょっと露骨なマイナス披露が多い。それを聞くこっちの身にもなってほしい。なんて返せばいいのさ?


まあ、話は楽しいから今はいいけどさ。



そんな風に思っていたら、彼が美容院に行ってきたらしい。

昨日までは少し長めのセンターパートミディアム。前髪の長さなんて私よりも長い。見る人が見ればジョン・レノンみたいって言うと思う髪型。

それが今日、彼の部署に行ってみたら変わっていた。全体的に目線の高さくらいに切りそろえて、首後ろはスッキリ刈り上げている。何より新しいのは、頭全体をうねるように踊る髪だった。


「パーマ、かけたんですか?」

「そう、かけてみた。前からずっとかけて見たいなと思ってたんだよね」

「じゃあ伸ばしてたんですね。私より長かったですもん」

「そんなことなかったでしょ、肩まではなかったし。前髪に限れば確かにそうだったかも。下ろすと顎まで落ちてたからね」


今じゃ目がぎりぎり隠れるくらいかな、と前髪を軽くいじりながらはにかむ。少し恥じらいの見える横顔は、まだ新しい髪型に慣れていなくて困っているみたい。

思わずじっと見ていると、視線だけでこちらに向けてぼそりと言った。


「変じゃない、かな?」

「え、全然!いいと思います、なんか垢ぬけた感じで」


そっか、と安心したような顔は、それでもまだそわそわして不安そう。

そんなところもまたかわいくて、でもかっこよくなって。

そこからの会話では、珍しく自分を卑下することがなかった。雰囲気も少し柔らかく、でも男らしくなった気がする。


そうそう、それでいいの。

たまにはいいじゃない、かっこつけてる感じでも。

かっこよく見えればそれでいいの。

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