20日目 ショートショート
彼曰く、短い時間で永遠を。
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ショートショート、という小説のジャンルがある。
可能な限り短くまとめた小説のこと。
文字数で言えば1万文字にも満たない、だいたい1000文字から5000文字くらい。
現代ドラマ的なもの、異世界でのちょっとした事件、昼下がりの窃盗の結末、ある日の夢での出会い、骨肉の争い、子供を産まない母親―――。
不思議な世界観のものも、意味不明な文字の羅列も、しっかり芯の通った推理でも。
何でもかんでも短くまとめればいいってもんでもないのだけど、様々なテーマを語り口に発展させて、発想できるのはものすごいことだ。
大したことのない日常も、人生で初めての出来事も、あらゆる角度から眺めてみて知らない世界の事件に変えてしまう。
現実では許されないことも、空想の中だったら何でもござれ。
自分の想像の赴くまま、好きなように世界を解放させて楽しむことができる。
小説と言えば、やっぱり長編でしょ。
そう思っていた時期が私にもあったが、長編ばかりが物語の形式ではないことを教えられた気がする。
このカクヨムでもそうだし、「なろう系」発祥のあの場所も、YOASOBIが生まれたあの空間も、『星の王子様』だってその教科書だ。
『星の王子様』を読んだこともないのに何を言っているんだと思われるかもだけど。
いろんな作品の中に『星の王子様』は語られる。
ショートショートについてまとめた本の導入で、作者が尊敬する作品として必ず紹介されているのだから、読んだことがなくても教科書と言って差し支えないだろう。
読まないと義務教育を受けていないのと一緒、と言われたらぐうの音も出ないのでやめてほしい。
とはいえ、短い時間で世界観を披露してくる演出は素晴らしいと思う。
朝登校してからの10分間、授業が始まるまでに短いお話を読み進める。
読み切れなくても構わない、ただ物語に身を委ねて時間を流す。
そして現実から引き離されて、物語世界に意識を完全に持っていくと、たったの10分が永遠に感じてしまう。
私はその瞬間が好きだ。
ここではないどこか、ただ夢想するだけでは届かない見知らぬ場所。
新感覚のアトラクションのような面白さ。
ショートショートの魅力は、つまるところそういうものなんだと思う。
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