18日目 おさぼり

彼曰く、おさぼりする日もたまにはよし。


 ***


起きられない日にどうしているか。

つまるところ、起きなければいい。


学生時代は強制的に起きなければならなかった。

部活に勉強に朝ごはんに。

今となってはどれとも縁がない。

運動する機会もなくなってしまったし、勉強するにはまだ寒い。

朝ごはんという名の昼ご飯を食べては、ご飯の時間がどんどん後ろにスライドし、気づけば12時、20時、25時の3食になっている。

本来であれば9時、13時、20時くらいのサイクルで食べていたはずなのに、どうしてこうなった・・・。

私の中の健康生活サイクルがどんどんとずれていってる。


起きれないのにはいくつか理由があるはず。

寒いのは冬だから当然として、私の中での生活リズムが影響しているのは間違いないのです。

では生活リズムがずれているのは何故なのか。

なぜか忙しくなってきた仕事の影響で帰る時間と寝る時間が後ろ倒しになり、結果的に起きるのが遅くなって、ご飯のサイクルもずれているのだ。


なんだ仕事のせいか。

じゃあ仕事をしなければ、私の理想の生活サイクルを取り戻すことができるのではないか?


「行きたくないなぁ」と起きた時にふと思ったとて仕方がない。

私にとっての仕事はそのていど。

ぼーっとすっかり見た記憶のない家の天井を眺めながら、「仕事に行かなきゃ」という気持ちと「別に今すぐいかなくてもいいか」という気持ちが争っている。

しばらく脳内の白い私と黒い私が争っていると、休憩時間になって調停者が現れた。

私の脳内に時々現れる道徳者、どちらにも偏らず、どちらにも公平な意見を置いて見定めさせるもの。

灰色の私。

こいつが現れると、私の中で自分は観察対象になる。

まるで写真の中にいるようにモノクロになって止まった世界に閉じ込められた中で、一人だけ動く灰色の私が、白い私と黒い私、そして本体の私を薄目でさらりと、ゆっくりと見通して、そして最終的に決定する。


「仕事、行くかぁ」

根は真面目な私なもので、一度やると決めたことを中途半端に投げ出すことはしない。

とはいえ、いつもいつも気を張り詰めているのは大変だ。

たまには息抜きで何もしない時間を作って、私自身を見つめ直すことも大切。

私にとってのおさぼり、というのは自分を再認識するのに有効な時間だ。

だからこれは必要なことなのだ。

そう自分に言い訳しながら、ゆっくりと体を起こした。

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