21日目 わんこ

彼曰く、はっぴーばーすでーとぅー小春さん。


 ***


小春さんが誕生日を迎えられた。

2歳。めでたい。

この善き日に世界が平和であることに感謝します。

今日も平和でありがとう。


小原さんはうちのわんこ。

生まれて間もない頃、実家にやってきた。

実は私はまだ2回3回しか会ったことがない。

大学卒業後のGWに初お目見え。

母が寂しさに負けて飼い始めたらしい。

私たち子供3人はもういい大人なので、その気持ち、わからなくない。

返ってきたときの癒しが欲しかったんだろう。


実家の家族からはたびたび小春さんの写真が送られてくる。

毎日毎日笑顔ばっかり。

なるほど、仕事で疲れきった私の脳を癒してくれる。

母の言わんとすることがよくわかる、これも大人になった証拠か。


動物は癒しだ。

人間とは関係ないところで生きていて、人間とは関係のないことを考えて、人間と理解し合おうなんて言う気も全くなさそうなのに、ずっと見つめて一緒に過ごすだけですべてを忘れさせる。

散歩ではしゃぐ姿やがっつくように餌を食べる姿を見ているだけで、この世の難しいこと全てがどうでもよく感じてくる。


仕事がつらい。

恋人がいない。

世間の目が厳しい。

生きていること大変なことばっかり。

もういやだ、死にたい。


深刻に感じる1つ1つの物事が、わんこの姿を見つめるだけでだんだんと薄れていく気がする。

気が軽くなるというか、ふわっとした心地になる。


残念ながらわんこは実家にしかいない。

わんこは確かに心安らげるのに有用だが、近くで見ないと癒しが半減してしまう。

私はその癒しを家族からの写真を通して享受しているだけ。

むしろ写真と言う文化をもたらしたこの世界に感謝すべきなのかもしれない。

システマチックの世界は苦手だし、その社会に関わる仕事はつきたくもないのだけど。

ある意味それをもたらしてくれたのは今ある技術だと思うと、なんだかとても皮肉な感じがする。


とは言え私はスーツを着るつもりはない。


私にとって幸せなのは食べたいもの食べて、いいなぁと思う人と一緒にいて、寝たい時に寝て、ゲームをしたい時にして、好きなアニメや小説、漫画を読んで。

あたりさわりのない普通の生活を送れさえすればそれでいい。

お金があることに越した事は無いけれど、そのために普段の生活を犠牲にしたくはない。


今の生活を見るとそんな理想は叶っていないが、ちゃんと学べばもっと上手い生き方ができるだろう。

まあ、それはそれとして。


今日のうちのワンコもとてもかわいい。

そんな現実も「何とかなるか」と思わせてくれる。

わんこに会いたいです。切実に。

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