13日目 一気通貫

彼曰く、大変なことは一気にやるのがいい。


 ***


打ち合わせしかない日でした。

朝起きるのが心配なこの仕事。

昼過ぎから始まるとはいえ、早めに起きて準備をしておきたい。

でも普段起きる時間は昼前、正午にようやく起きて出かけることも。

時間にルーズな業界ですからすっかり染まってしまった感があります。

目覚ましかけても気付かないし、早めに寝ても睡眠時間が長くなるだけ。

しかも今は冬、布団の中の暖かさからは逃れられないのです。

ぬくぬくの魔力は私のような弱い人間を捉えて放してくれない。

いつまでたってもこたつから出てこない猫と一緒です。

彼らは気楽でいいですねぇ、羨ましい生活をしていますよ。

来世は猫にでも生まれられたらいいな。


でも今は、今日に限って言えば。

自分が猫になるよりは、猫を連れてきてほしい!

そう思いながらの仕事でした、まさに猫の手も借りたい。

あっち行ったりこっち行ったり、部屋の移動もそうですが、

打ち合わせ中に次の打ち合わせ相手と連絡を取って開始の連絡。

メモを取ることもあるし、資料も見せないといけないし。

確認事項はその場でいいけれど、後になって必要な資料が出たりもする。

あとで探せるようにメモを取らないと相手が困るし、自分が痛い目を見る。

下っ端みたいなことをしていても責任者ですから。

何が起こるかは分からないけれど、分かるうちに対処できることは準備しておく。

何が起きてもいいように。

それがこの仕事での極意で、責任者としての務めです。

大変な目に合うかどうかは自分次第、私はやってて楽しいです。

色んな人がいてたくさん話ができて面白いし。

愚痴をあまり言わない性格がいいのかな、痛みにも鈍感になりました。

ちょっとやそっとのことでは慌てなくなりましたし、

面倒ごとが起きたら相談できる先輩もいる、良い環境です。

ときどき面倒くさくなってすべてを放っておきたくなる時もあるけど、

それはまあそのときの気分で。

気分で仕事をされては責任者として立つ瀬がありませんが。


でもやれることはやれるうちに一気に片づけた方がよきです。

後になると「いまさら!?」と言われて大変な目に合うからです。

大変なことはドミノ倒しのように一気に襲ってきますが、

実は倒す人次第で印象が全然違いますね。

自分が倒し始めたならいざ知らず、他の人が間違えて倒したり、

別の要因で倒されてしまったら、面倒を被るのは自分です。

途中で倒れると一気にやる気をなくしてしまう。

自分のせいでも他人のせいでも、その他のせいでも気の失せ方は一緒かもだけど。

いっそ全部一気に作れればいいですが、それができるのはフィクションだけ。

ノンフィクションらしいことは若いうちに経験として積んでおくべし。

そのうち一気にできるようになるから。


後輩にも言いたいけれど、今の後輩にその余裕はない。

大変な目に合ってるからね、ドミノが途中で倒れて。

渦中に後輩はいままさにいるのです。

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