23日目 帰りません

彼曰く、今年帰るのはやめておくよ。


 ***


2020年のカウントダウンが始まります。

大みそかまであと1週間。

この7日間の間に何があるかはわかりません。

何か起こるなら面白いものが起きてほしい。

起こらないならそのままで。

いずれにせよ、平和に新年を迎えられたらいいな。

何でもかんでも嫌な方向に考えがちな年でしたが、

年の瀬くらいは穏やかな気持ちで終えたいものです。


年の瀬と言えば帰省をするのが世間一般の常識かと思います。

私も年末年始は実家で迎えるのが常でした。

大学に入ってもやはり餅つきをしないと1年を終えた気になれない。

農家に生まれた人間の性なのか、

農家らしいことをしておかないと気持ちが休まらないのです。

餅つき、今年も参加したかったんですけどね。

つきたてのお餅が実に美味しいんですよ。

うちの餅つきは昔ながらの臼と杵でつくタイプ。

もち米が熱いうちに潰しこねて、

まとまりだしたところで短時間でつきあげる。

ひと臼つくのに大体100~150回くらい杵が振り下ろされます。

ずっと1人でつくのはなかなかに苦しいので途中で交代しながら、

うちの場合は6臼くらいやります。

自分ちのお飾りさん、親戚の分のお飾りさん、

それぞれ家用の伸し餅、餅つきしている間のご飯用。

友達が手伝いに来てくれた時にはおすそ分け用に少しあげたりしてました。

地方ならではの交流で、最近の人はそういう経験もないかもしれませんが、

昔はこれが当たり前だったんだなと思うと、

今の人は随分とさっぱりとした人付き合いだと感じてしまいます。

私もその中の1人に今はなっていると思いますが。


毎年のように餅つきをしていた年の瀬。

今年は残念ながらその機会はなさそうです。

なにせ1年ぶりの帰省。

年始以来顔を見せていないのですから当然です。

それから世間の状況は随分と変わりました。

どこに行くにも注意が必要で、○○へ行った、○○から来た、

なんて言うものなら自粛警察に逮捕されます。

自粛自粛というなら逮捕も自粛してほしいものですが。

私も対抗して無理に帰省するつもりもありません。

私が戻って誰かが感染したりすれば、

私に白羽の矢が立てられるわけですから。

そんなの私には耐えられません、即メンブレ闇落ちです。

家族と会えないのは残念ですが、今年は東京で密かに年を越えようと思います。

もちろん帰れる人は帰るのがいいです。

いつ死ぬか分からないんですから。

考えたくないですけどね。

願わくば新年へのカウントダウンが、1年のカウントダウンになりませんよう。

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