3日目 終わらない

彼曰く、始まったものは終わるまで。


 ***


世間は休日。国民の祝日なるものがあるらしい。


11月3日。

カレンダーを見ると文化の日。


文化に感謝し、文化を称え、文化に関心を持ちましょう、みたいな。

多分そんな感じの日だと思う。

普段見ないような絵画に興味を示して美術館に行ってみたり、

家に転がっていたペンとノートを持って近くの公園に出かけて、ボールで遊んでいる親子や犬と散歩しているカップル、ランニングマンを観察したり、

人気の小説とコーヒーで緩やかな午後の時間をお気に入りのカフェで過ごしたり、

今に流行る文化を取り入れることが奨励される日でしょう。


何か特殊なことをしていても「文化の日だから」と言えば許される。

そう、それがコスプレであっても、小説を書くことであっても、

漫画を描くことであっても、ゲームを作ることであっても変わらない。

すべて日本を代表する文化なのだから。

きっとこの日はオタクに優しい日だ。

オタクのオタクによるオタクのためのオタクデー。

ビバ、サブカル。

いな、メインカルチャー。

もはや日本文化のメインを張るのはアニメや漫画なのだ。


幸運なことに、私はその系列の仕事をしている。

文化を生み出す現場にまさに身を置いているのです。

日々面白いものを作るために奔走する人と接し、

様々な考え方を通じて交流し、

互いに切磋琢磨するアツい現場。

不和も協調も日常茶飯事。

いつでも何かが起こりうるし、いつでも何かがうまくいくかもしれない。

半分は博打、半分は予定調和なこの世界。

面白さを求めるなら悪くない。

これからの展望が気になる業界ではある。


とはいえ、生き残るにはつらい事実も立ちはだかる。

給料がいいとは言い難いし、普段の労働時間も短く抑えることは難しい。

今年から色々と変化を強いられた日本でも、

古くからの業界の体質を変えるにはまだまだ時間がかかりそう。

とはいえ反抗ばかりはしていられないので私たちも変わるべきでしょう。

何かを作るのに、何かを犠牲にするのは自然の摂理かもしれないけれど、

他人の命まで犠牲にするほどのことはなかなかできない。

まして自分のやりたいことを犠牲にしているようでは変革の時は訪れないでしょう。


休日、誰もいない会社の部屋で、

自分のPCを前に、色々と打ち込みながら、

自分の将来と会社の未来について、変わりそうもない無念を考えていました。

そんな文化の日。

私たち文化生成者を労わる日にしてくれませんかね?

ついでに業界へ流れるお金をもっと増やしてください。

ほんと、頼むから・・・。

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