3日目 何度でも

彼曰く、また観たら泣いてしまうんだろうな。


 ***


『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

泣いていると分かっていながらまた観に行ってきました。


いい作品は何度でも観たくなる。


好きな音楽は何度でも繰り返すように。

お気に入りの言葉は何度も口に出してしまうように。

愛する人には何度あっても飽きないように。


自分がどうなるかを分かっていてもそこに向かってしまうものです。

本当にいい作品でした・・・。


友達と観に行ったのですが、出会いがしらに質問。

「あれ、美容院行ってきた?」

「うん、ちょっと決めとこうと思って」

「そんなに髪の毛伸びてたっけ?まだそうでもなかった気がするけど」

「ヴァイオレットちゃんに会いに行くんだから、ちゃんとしないとアカン」

「・・・確かにそうだ!」

オタクな会話を繰り広げてしまいました。


というか観るのはまだ一回目のはず。

会いに行く前から素晴らしい覚悟をお持ちらしい。

さすがはオタク仲間、話の分かる人間だ。


さて会場入り。

私はちょっと特殊な能力を持っていて、

自分の記憶を操作することができるのです。

一度観たからと言って差し支えはありません。

記憶リセットで初めての気持ちで観ることができるのです。

これでも一度泣きはらした身。

同じ轍は踏みません!


 ***


流れました、涙。

もうバケツ一杯くらい。

手持ちの手ぬぐいでは足りませんでした。

なんであんなに泣けるんですかね。

私の涙腺は我慢というものを忘れてしまったのでしょうか?

即刻ダム建設が必要みたいです。


友達も泣いてました、当たり前のように。

「いい話だった~~!ヴァイオレットかわいい~~!!」

完全に虜ですね、やられてしまったらしい。


ラスト、2人が走る勢いに乗せて抱き合ってほしかったらしいですが、

私としてはあのラストで正解。

ヴァイオレットの縋りつきたいけど一度断られた気持ち、

ギルベルトの抱き寄せたいけどその資格はないと諦めてきた想い。


自分の生きる意味を与えてくれた言葉であり、

自分の気持ちを表す言葉を理解もできるようになったけど、

かつての主人に向けることで拒まれるかもしれない怖さ。


自分にとって大切な存在には変わりないけれど、

自分のもとに置いておくと傷つけてしまう、失ってしまう。

そうすることが彼女の幸せを削ぎ落していくようで、

強い気持ちとは裏腹に遠ざけてしまうもどかしさ。


そのせめぎあいの結果が2人の涙で、乗り越えた先にあったのが、

静かに抱き合うという締めだったのです。


私の解釈はこう。

企画や脚本でも議論はあったと思いますが、

いいお話には変わりありません。

また観たら泣いてしまう。

泣きたくなったら観たいと思います。

ああ、また観たいなあ。

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