18日目 『楽園の烏』
彼曰く、ぜひこれは読んでほしい、和風ファンタジー小説です。
***
『八咫烏』シリーズ。
ご存じでしょうか?
もちろん私は知っているんですけど。
山神が住むと言われている世界”山内”と、その周辺に住む人々のファンタジーです。
舞台の参考としているのは平安時代の人々でしょうか、
宮殿に住まう貴族の華々しい暮らし、
地方貴族の住む大きな街や、庶民の住む村落での簡素な暮らしなど、
中世日本の意匠をちりばめた世界観です。
古きよき日本文化を内包しつつ、
どこか現代的な気質を感じる人々がとても個性的。
作者の阿部智里さんがお若いこともあると思いますが、
古風な言葉遣いや振る舞いの節々に、
若々しさ、みずみずしさが溢れています。
ここ5年くらいで一番ハマった小説と言っても過言ではありません。
シリーズ全巻通して非常に面白く、ぜひとも皆さんに読んでほしい1作です。
***
初めてこの本を見かけたときは、単純に装丁に惚れたからです。
私は文庫本派です。
持ち歩きしやすくて、いいですよね。
たいていの作品は単行本と文庫本で装丁が変わるものです。
このシリーズもその例に漏れず。
当時単行本の絵は見ていないのですが、そちらも素敵です。
ですが私を虜にしたのは文庫本の装画でした。
淡い色使い、墨絵のような濃淡。
描かれた人は佇まいが慎ましやか。
顔を見せない美徳はまるで貴族の姫が、
美しく見せるために顔に扇をかざしているよう。
『烏に単衣は似合わない』
シリーズ初弾に出会ったときの私は、
まさに深窓の麗人の姿をちらと見て、
瞼に焼き付いて離れなくなってしまった、
ただの一般庶民の男と同じになっていたのです。
シリーズものを買うときはいつも恐々としてしまいます。
思っていたものと違ったら、ちょっと残念だったりするものですから。
1日で読み切ってしまいました。
休日に帰宅したそのままの勢いで読み入ってしまいました。
恐々と震えていたと思ったら、感動で震えていたようです。
いっそ大作を見つけることへの恐怖だったと捉えてもいいかもですね。
宮中の女性たちの愛憎渦巻く世界のなか、
それぞれの姫たちがどのような思いで若宮へ嫁ごうと登殿したのか。
影のちらつく若宮の正体とは、その真意とは。
抱えた想いや堪えた涙を披露しながらも、
なお美しくあろうとする女性たちの姿が鮮烈に映りました。
個人的にはラノベ的な感覚で読めた、大ボリュームの歴史小説。
ファンタジーには変わりありませんが、そう思っても相違ないものです。
しかも1,2巻は表裏一体で、
両方読んでようやく事の次第がわかるという面白い仕掛けが。
そんな遊び心を持った阿部さんには一度お会いしたことがあるのですが、
言葉遣いや話し方、どれも理知的で麗しい人でした。
実際に会った人で、尊敬している数少ない人です。
機会があるならまたお会いしたい・・・。
***
タイトルの『楽園の烏』は、シリーズ待望の新作。
全6巻で様々な想いと衝撃の事実が暴かれた第1部。
それに連なる第2部の始まりとして、先日発売されたばかり。
時間を経た”山内”に迷い込んだ異界人。
彼がもたらすのは、楽園のような救いか、はたまた地獄のような悲劇か。
仕事の合間を縫ってゆっくり読んでいましたが、
大分早く読んでしまいました。
めちゃ面白かったです。ほんとに。
次巻が楽しみで仕方がない。
次への期待で今度は震えてます。
アニメ化したら面白いだろうなぁ。
そんな期待をひそかに抱きつつ、布教していきたい。
そんな魅力的な作品です。ぜひ。
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