14日目 デート

彼曰く、それはもはやデートでは?(食い気味)


   ***


特に予定も決めていなかった日。


誘われるままにご飯の約束。


あえて平日ではなく、時間の融通が利きやすい休日に。


異性とのお出掛けなんて久しぶりだなー。


彼は職場の後輩だけど、年齢が一緒だから気安く話せる気がする。

人と話すことはあまりない私だけど、

向こうが割と喋ってくれるから話しやすいのよね。


元々人に合わせるのは得意だし、

誘われればいつでも行くよと言ったのは私だし、

いい具合に予定がなかったものだからちょうどいいや。


彼とは単なる仕事仲間とも言いづらいし、私は友達だと思っているけど、

彼がどう思っているかは未知数。


落ち着いていて大人っぽい印象の人だけど、

同い年とは思えないくらい賢いし、あまり真の正体を見せないっていうか。


素をさらけ出すことがめったにない人なのかなーって、ずーっと思ってる。


私はそんなに積極的じゃないから、話しかけてくれる彼は貴重。


もう少し仲良くなりたいな、なんていうのは私のわがままなのかな?


でも話す人が固定化されちゃいがちだから、

たまには彼みたいな人ともご飯に行きたいし、

あわよくばもっと仲良くなりたい。


男女の仲なんて成立しない、なんていうのはよく聞く話だけど、

そもそもまず休みを楽しむ時間を一緒に過ごせてない状態で、

男も女もないと思う。


単純に人として一緒にいてもいいと思えるか、

それが人間関係のスタート地点なんだもん。


以上、陰キャこじらせた私の客観的理論。

ソースは私調べ、異論は認める。



でも彼とのご飯ももう何回目だろう。

何かのきっかけで行くようになってそれから月に1回くらいのペース。


前回は珍しく私から誘ったけど、

それは毎回誘ってくれるからたまには私から、って思ったからだった。


そして今日も誘われて、待ち合わせの駅に向かってる。


別に腕周り気にしてるわけじゃないけど、羽織りを着てきたし、

雨が降ったら困るから、傘も持ってきたし、

特にお店は言われなかったから、気になるお店を調べてみたし、

いろいろ言っててて楽しみなのかもしれない。


それは否めないと思う。


休日に、男の人とご飯・・・。


こういうのって、なんだか新鮮だな。


こういうのってなんて言うんだっけ?


・・・週末サバト?


   ***


特に考えてなかった休日の過ごし方。


今週も疲れて終わったから、きっと疲れたーって言いながら寝るんだろうな。


俺のことだ、そうに違いない。


この体と25年一緒に過ごしてきたんだ。

地球のことよりも詳しく知ってるさ。


休日に晴れる予報なんて、どうせ当たらないんでしょ?

知ってるんだぜ、天気予報が当てにならないことくらい。


自分の体じゃなくても分かるんだ。


西の方に黒い雲が見えたら雷が落ちることくらい、

母さんの胎の中にいた頃から知ってたさ。


そんな俺でも、休日の過ごし方は分からない。

路頭に迷うどころか、スタート地点にすら付けない始末だ。


したいことはいろいろある。


この前買った漫画やら小説やら、

気になってた映画とかアニメとかがたくさんあるから見ないとだし、

平日はなかなかできない部屋の掃除をしておきたいし、

料理しようと思って結局冷蔵庫の肥やしになってる食材を片付けないとだし、

足りなくなったものの買いだめしないと平日になんて絶対行かないし、

まして美味しいご飯屋さんには這ってでも行きたいと思ってる。


大体はするべきというか、しなきゃいけないことなんだけど。

その中でもご飯はこの上なく欲している。


なんというかもう、細胞レベルで。


地獄のような連勤術をこなしたあとの楽しみとして、

事前にリサーチするくらいはしているんだから、

やっぱりたまの外食くらいは許してほしいもんだ。

ぽちぽちスマホをいじりだす。



今日はどこに行こうかなー、なんて考えてLINE眺めてたら、

女性のアカウントが目についた。


会社の先輩なんだけど、同い年だからという理由だけで、

よく話したりする仲だ。


俺的にはその先に行ってもいいかも、と思ってるけど、

職場の人だし、何より立場が立場だから一歩踏み出す勇気はまだない。


人間関係となると、嫌な噂になっても困る。

俺も、その女性もきっとそう。


お互いの同意の上ならまだしも、向こうがそうとも限らないし。


月に1度くらい一緒に食べに行く機会があるし、

なんなら映画に行ったりもするけれど、

その先を果たして求めてるかと言われたら、

これまた不思議と分からない。


あんなに色々分かってるつもりでいたのに、

自分の気持ちとなると、とんと分からなくなる。


ご飯は食べたいし、そこに人がいると楽しいだろう。

それが知っている人であればそうに違いないし、

仲が良ければなおさらだ。


味の感想も言い合えるし、

好みのお店だったらまた一緒に来ようって話もできるんだから。


交友関係が広いわけじゃないから、狭いテリトリーでも大事にしたい。


でも、彼女と出かけるとなると、

なんだか言いようのないモヤッとしたものが心にかぶさる。


彼女が怖い?そうじゃない。

来ないかもしれなくて不安?そんな人じゃない。

話が続かなくなるんじゃないかって?最近は沈黙が来てもあまり気にならない。

たぶん、気にならないくらい、黙ってる時間が減ったから。


彼女は優しいし、良い人柄だ。

控えめな性格だけど、破顔したときはギャップもあってかわいらしい。


単なる会社の同世代、というには割と話してる気がする。


でも「友人」、とも言い切れない何かがある。


そんな職場の女性と、休日にご飯を食べに行く。


こういうのを、道を同じくするっていうんだったか。

なんか意味が違う気がするけど、今はちょっとわかんない。


俺は彼女と・・・どうなりたいんだろう?

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