29日目 Fate/stay night [Heaven's Feel]

彼曰く、これで1つの物語がまた終焉を迎えた、いいことだ。


今日はどの話題の日記にしようか非常に悩みましたが、

やはりメインとなった行動を書くことといたします。


映画を見に行きました、久しぶりに。

『Fate/stay night [Heaven's Feel]』第3章。

本来であれば春に公開を迎えていたはずの作品。

副題の「spring song」が映える時期、

帰り道に桜満開の通りを歩きたかったな、

なんて思わせてくれる満足感がありました。

原作をやっていないことが悔しくてしょうがないですが、

映画でここまで追ってこれたのは、

一重に作品に魂を込めたクリエイターの方々のおかげだと思います。


簡単に内容を残しておくと。

「聖杯戦争」というマスターと従える英霊との戦いに、

図らずも参加することになった衛宮士郎。

縁があり召喚することになったセイバーとともに、

この戦いを終わらせるために参加する覚悟を決めます。

本作は数あるルートの中でも最も長い、

通称「桜ルート」と呼ばれているもの。

高校、部活の後輩であり、このルートでは恋人にもなる間桐桜、

士郎は彼女だけの味方になるため、

闇に落ちてしまった桜を救うために、

参加者たちと戦い、ときに協力して、

聖杯戦争に挑んでいきます。


戦いは緩やかに、しかし士郎にとっては突然の出来事として始まり、

あれよという間に戦いが勃発します。

しかし間桐臓硯の企みによって戦いは混迷を極め、

サーバントの奪い合い、暗殺が横行し、

さらには謎の存在である、「黒い何か」が一般人さえ巻き込んで、

大量の死者が発生してしまう事態となります。

士郎は自らのサーバントであるセイバーを失い、

同盟を組んだ遠坂凛のサーバント、アーチャーも消滅。

対抗手段を無くした彼らは、バーサーカーを失ったイリヤスフィールと協力。

聖杯を破壊することを目標として、元凶である聖杯の正体と、

その存在の意義と目的について知っていくことになるのです。

一方、同じく戦いに巻き込まれる形で参加した桜。

戦いを拒む彼女でしたが、どこか歪な部分が見え隠れし、

士郎や凛たちに心配されています。

その実、夜な夜な街を徘徊しては殺戮を繰り返し、

ひそかに生きていたギルガメッシュも喰らう、

理性のかけらもない聖杯の中身、

この世すべての悪アンリマユ」を受け入れた不完全なもう一つの聖杯として、

臓硯にいいように操られていたのです。

次第に壊れていく自分を自覚して士郎たちと離別する桜。

それでも彼女を救わんとする士郎は、

教会の神父、言峰綺礼に協力を仰ぎます。


本作ではここからストーリーが展開され、

作品の謎とされてきた部分を解き明かしながら、

士郎の生き方、救われる道の1つが示されていくことになります。

正直なところ、1章2章と言わず、

テレビアニメ版からすべてぶっ通しで見たかったです。

ゲームは最初から最後まで通しで遊べば楽しみも一入、

なんていうことは私と弟の間で共通の認識なんですが、

原作がゲームというのもあり、

まさにその通りにしないと楽しみが半減してしまう、

そんな感覚がありました。

次にシリーズもの観に行くとしたらすべてを観てからだ・・・。

そう決意した8月末のことです。

しかしこれまでの物語の内容を全く覚えていないわけではないですし、

展開がちんぷんかんぷんな訳では全くないので、問題なく楽しめます。

欲を言えば、という程度のお話です。

とっても面白く鑑賞することができましたよ。


まず作画が圧倒的。

制作のufotableは『空の境界』『Fate/Zero』と、

TYPE-MOON作品のアニメ化企画を続々と世に出してくれています。

線の細かい、緻密なデザインでありながら、

ガンガン動かすアクションは手に汗握る迫力。

宝具による圧倒的な力と美、超人的なバトルは必見です。

タメと動きをうまく使い分けてスピード感と破壊力に納得感のある戦闘シーン、

普段の生活の様子や、キャラの表情芝居が活きる日常シーン。

色遣いもさることながら、会社の十八番ともいえる撮影処理のオンパレード。

いずれも日本のデジタルアニメの神髄が宿っていると感じました。

そして音楽。

戦いが起こる前の冷たく残る重低音、

戦闘シーンでの覚悟を決めさせるような一節、

決意と敵対をこめたスピード感のある音源。

どれもが作画の良さと相乗効果を成し、

映像に華を持たせていました。

私の好きなアーティスト、Aimerが引き続き主題歌を担当しているのもgood。

余韻の残るエンディングは素晴らしかったです。

それを導くストーリーは言わずもがな。

原作を知っていればなお楽しめたでしょうが、

そうでない私でも楽しむことができました。

人々のため、正義のためと言っていた士郎が、

ただ唯一、「桜のため」と己の夢を、理想を捨てて、

誰かのために生きようとした、その結末。

他のルートとはどこか違う、

人間らしいと言えばらしいけれど、

どこか歪んで見えてしまう。

そんな矛盾を抱えながら、しかし強い信念をもって、

巨悪の根源、言峰と対峙する姿はカッコよかったです。


今回は士郎の雄姿が映えるシーンが多かったです。

忘れてました、彼、主人公でしたね。

そんな士郎が消えた世界で、

守られた桜がどう生きているのか、

何年後かの世界で生きる桜や凛、高校時代の人々が、

桜の花見をしに来た場面で幕切れ。

聖杯とは何だったのか、サーバントたちそれぞれの思惑とは、

言峰の真の目的は、戦いのその後の桜たちは。

それぞれはなるべくぼかして残しておきました。

この日記を見返した時に、きっと見たくなるように。

迫力ある映像、圧倒されるような音楽、涙不可避のストーリー。

すべてを堪能するのに理由はいらない。

ただ、観る、それだけ。

今ならまだ劇場で観れるのだから、もう一度行くもよし。

円盤が出てからすべてを観返すのもよし。

何にせよ、1つの物語がまた終幕を迎えたのです。

それを賛美せずして何がファン、何がオタクか。

コミケだけでなく、1つの時代を作った作品群。

改めて見直して堪能してはいかがでしょう。

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