17日目 集中

彼曰く、今日の私は絶対仕事終わらせるマンと呼んでくれたまえ。


ひたすらパソコンに向かい何やらやっている様子の私。

いつの間にかいて、いつの間にか帰っていった私。

今日の私は、社内の人から見たら、

まるでいなかったものかのように思われているかもしれません。


朝はそれなりに早く来て一日の作業を整理して、

やるぞ!、という気力が途切れないうちに始めます。

「おはようございます」

先輩が出社してきて、普通に挨拶はしたけれど、

反応の声を聞くわけでもなく、

ただ目の前の画面に目をくぎ付けにして、

手元の書類整理に追われています。

それが済めば各工程の進捗状況を確認して、

それに応じて全体のスケジュールを見直して。

一通りデスク作業が片付いたところで手早く食事を済ませ、

軽くニュース記事を2本くらい目を通してから、

時間のかかる素材づくり。

専門的にやったことがなくても、仕事上必要な作業のためやらざるをえません。

一度作り切ってからすべてのファイルをもう一度開き、

ヌケモレ、ミス、補足を入れた方がよさそうなところをチェックして、

催促されている優先の資料を先方にメールで送信。

「遅れておりまして大変申し訳ございませんが、

引き続き何卒よろしくお願いいたします。」

常套句を空目で打ちながら、

「ほんと遅れてすんません、ようやく前工程の人がチェックしてくれまして」

なんてことを心の奥で思っている。

いったん考えを放棄していたスケジュールを印刷して、

必要な人のところに行って近況を伺いながらこうしたいという意思表明。

軽い雑談を挟んだらようやく今日の仕事は終了。

全くしゃべらなかったわけでも、

心休まるタイミングがなかったわけでもないけれど、

集中の途切れるタイミングが訪れたわけです。


人間の集中は15分くらいしか保たないと聞いたことがあります。

心理学か何かで聞いたのですが、

目の前のことに対して興味を持ち続けることは常人には難しいことなんだとか。


そんなことありませんでした。

現に私は今日、会社に来てから帰るまで、

携帯をいじって仕事以外のことをすることがありませんでした。

休憩時間はもちろん除外していますが、

仕事をする間は回さないといけないことをきちんと回し、

目標通りのタスクを終了させています。

この場合は集中の定義を変える必要がありそうですが。

個人的に集中できたという実感がありました。

受験勉強にかまけていたころや、

強敵にぶつかって死なないようにゲームをしていたころのように、

妙な達成感があったのです。

体にまとわりついていた見えない布みたいなものが、

まるでドライアイスのようにふわっと溶けて落ちていく、

乗っかっていた場所から重力が解放されて、

不思議な心地よさが体から感じました。


言ってしまえば感情を殺して作業をしていた一日。

達成感で喜びも一入なのであれば、

感情をなくすこともたまにはいいな、なんて思いました。


とはいえ仕事は毎日ちゃんとやるべきこと。

メリハリつけてやっていきたいものです。

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