第193話 領内紹介。5
さて、ウルトゥムによってさえぎられたにせよ、ちゃんと双方の紹介はしなければならない。
「まずは改めてこちらの方を紹介します。」
十全は少し畏まった態度で自分の連れてきた人物を紹介する。
「カダス連邦のウルタール王国から来ていただいた魔法教導員であり、親善大使でもあるチャオ・チュールさんだ。」
「初めまして。ウルタール王国から来ましたチャオ・チュールです。」
「あ”ぁ”。」
スパーン!
これでもかと友好的に笑顔を浮かべたチャオに対してクームがガンを付けたので、ヤーガがどこからか取り出したハリセンでひっぱたいたところだった。
「すみません。うちの子が大変失礼しました。」
「いえいえ大丈夫ですよ。」
「ちょと、これじゃあクームだけが悪い子みたいじゃない。」
スパーン!
「みたい、じゃないの。ヤーガまで恥ずかしくなるじゃない。」
「ちょっと、それじゃあクームが恥ずかしいやつみたいじゃない。」
「こちらの恥ずかしい子がボリア帝国から来たクームです。」
「ちょっとミツル。」
と漫才みたいに紹介してやる。
「でこちらの青髪がクームの双子のヤーガです。」
「初めまして。クームの保護者のヤーガと言います。」
「ヤーガまで。」
「くすくすくす。」
「ほら、2人のせいでカダスの亜人に笑われたじゃない。」
スパーン!
「なんで叩くの。」
「亜人と言うのが失礼だからですよ。」
「亜人は亜人じゃん。」
スパーン!
「ソレはボリア帝国だけの言い分です。」
「でも、宰相閣下はカダス連邦に舐められないようにしろってい言ってたじゃん。」
スパーン!
「すみません。こんな幼稚なことばかり言ってる者がまだまだ多いから舐められるということが分からない者が多くて。」
「いえ、差別意識はカダス連邦にもある事、あまり妹さんを叩かないでやってください。」
「ちょっと、あんた。クームはヤーガの妹じゃないわよ。」
「おや、失礼しました。クームさんがお姉さんでしたか。」
「ソレも違うわよ。クームとヤーガには上下はないのよ。」
「つまり対等だと。」
「そうよ。」
「分かりました。」
くすくす笑いながらそう答えるチャオだが、その顔は明らかにヤーガの方を姉とみている顔だった。
その後、双方の付き人の紹介も済ませて昼食となった。
「ねぇ、雫たちは?」
「他の皆は仕事だよ。紹介は夕飯の時にするつもりだから。」
「それじゃあまるでクームたちが暇人みたいじゃない。」
スパーン!
「暇人なのはクームだけ。ヤーガは大和の文化を日々勉強している。」
「何でさっきからクームの頭をスパンスパンと叩くのよ。」
「これぞ大和の伝統文化、ツッコミよ。ところで、チャオさんでしたか。」
「はい。そうです。」
「こちらお近づきの印に大和の伝統工芸ハリセンです。どうぞお納めください。」
「これはありがとうございます。」
「クームがふざけたらそれで遠慮なくたたいてください。」
「え?これで。」
ヤーガが渡したハリセンは真っ白なそれではなて、豪華な絵が描かれており、かつ、宝石が付いていたりする。
それで叩かれたらかなり痛そうだった。
「試しに一つどうですか?」
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