第175話 閑話、ハンバーグ。7
「ウルトゥムと、」
「ニャルの」
「「ワクワクcooking。」」
ウルトゥムは血まみれのエプロン姿――――ではなく、白く清潔感のある、フリフリのエプロン姿である。
ニャルも小柄な体に似合う、ネコの肉球がプリントされた可愛いエプロンを付けている。
その2人が笑顔で包丁を十全につきつけていた。
「なんぞこれ?」
十全とウルトゥムが狩りに行ってから1週間後のことだった。
十全が約束していたハンバーグづくりのためにキッチンにやってきたらそんな感じで出迎えられたのだ。
「料理教室ではこういう感じで始めるものだとあの悪魔が申してましたが。」
フラットな表情で横ピースでウインクしながら片足を上げて体をくねらせるポーズをとったウルトゥムが十全に包丁を突き付けながら訪ねて来た。
「ワタシたち何か間違ってますか?痛いですか?」
「わ~、2人共カワ(・∀・)イイ!!」
「何かキャラが変わってる気がしますがまぁいいでしょう。」
「それで、なんで今更になってから料理教室デスカ?」
エプロンを着用して手を洗っている十全にニャルが質問した。
「ふむ、いいところに気が付いたねニャル。」
パチンッ。
「ウルトゥム君説明してあげなさい。」
十全が指を鳴らしてそう言うと傍に控えていたウルトゥムが十全にタオルを手渡してからニャルに向かった。
「はい。かしこまりました。」
こうして見るとウルトゥムは流石にメイド服を着てるだけはあると感心させられる。
「ニャル、先日ワタシとミツルが狩りに行ったのが何のためか分かりますか?」
「確か料理を教えてもらうなら、どうせなら自分たちで狩った肉を使いたかったからとお姉さまが――――」
「そうです。料理に使うお肉を自分たちで調達しに行きました。そして、1週間後の今日に料理教室を行う意味が分かりますか。」
「―――――まさか、まさか先週狩ってきたお肉を使うつもりなんデスカ。」
「そうです。」
「なっ、なにをかんがえているのですか。一週間デスヨ。お肉なんて腐ってしまっているのデスヨ。」
「普通ならそうですよね。」
「何を言ってるのデスカ。…………まさか、」
「そう、そのまさかです。大和、いえ、ご主人様の居た前世には一週間お肉を腐らせない方法が、いえ、一週間かけてお肉を美味しくする技術があったのです。」
「……頭おかしいのですか。そこまでして、いえ、ふつう腐るデショウ。なのにそこを美味しくするなんて……。」
「ミチルの故郷は食に対する探究心が秀でていたらしいです。正直ワタシもドン引きです。ナットウとかいうどう見ても腐った豆にしか見えないものを食べても大丈夫だとか言う発見をしたとかありえません。」
「デスよね。」
「でも納豆は美味しかった。」
ニャルは貧血を起こしたようにふらついた。
ここに納豆を食ったことがある者と無いものの差が現れている。
「発酵、熟成というものらしいです。食物を腐らせずにさらに美味しくする技術だそうです。」
「ま、まさか……」
「はい、今回、熟成肉を作っていました。」
ウルトゥムはドヤ顔でそう言った。
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