第164話 黒龍のお仕事。1
トカトントン、トカトントン。
領地の開拓事業、その為のお仕事を十全が執務室でこなしていたら、窓の外から職人たちが作業する音が聞こえてくる。
町の基礎工事だが、現在の居住区から離れた今後の街の中心となる場所の作業に入っている。
主に下水道、水道管やガス管などのインフラライン、それらの埋設作業が進んでいる。
それらは地震や川の氾濫などで地盤沈下を起こさないように、耐震、隊浸水性を何度も会議して納得のいくレベルのモノを用意している。
主な技術はドワーフの技術と地球の科学、それに十全と暁の未来知識を用いている。
とはいえ、十全も暁も専門家ではないので聞きかじりの知識をツィマットたちが実現できないか試行錯誤した結果であるが。
トカトントン、トカトントン。トカ――――ドーーン!ドーーン!
「な、なんだぁ!」
突如、窓の外から聞こえてきた爆発音に、何か事故でも起きたのではないかと十全が慌てる。
「ふむ、向こう側の山間で爆発が起きたようですな。」
今日の仕事はヴォルテールと一緒に男性陣のお仕事をどうするか、それを決めるための話し合いだった。
だから部屋にはヴォルテールと数名の屋敷の執事が集まっていた。
十全が窓から外を眺めると、確かに対岸というべき山間で黒い煙が上がっていた。
「あそこは今日、ヤーガたちが魔法の実験をするとか言っていた場所じゃないか。」
「どうします。確認を出しますか。」
ヴォルテールがそう聞いてきたところに、
「ミツル君、今すごい音が――――。」
ドアを開けて雫が飛び込んできた。
「ナイスタイミング。ご覧の通り、あそこで爆発が起きた。」
「その割に落ち着いているわね。」
「今日はあそこでヤーガたちが実験をするって言ってたからな。」
「実験?」
「そう。魔法と甲種兵装などの新技術を用いて発酵の実験。」
「何で発酵。」
「下水なんかあるだろ。アレの浄化作業で出るヘドロをさらに加工して、可燃性ガスの精製実験を頼んでたんだ。」
「じゃあそれで爆発が。」
「可能性があるから十分注意するよう言っていたけど、すまんが無事か確認してきてくれ。ここから見る限り山火事の心配はなさそうだが気を付けてな。」
「分かったわ。言ってくる。」
そう言って雫は執務室から出ていった。
「心配じゃないんですか?」
ヴォルテールがそう聞いてくるが、
「あの4人の時点で落ちは見えているからな。もしかしたら……と思うと怖いが、大丈夫な気がする。」
「楽観的ですな。」
「根拠はあるぜ、火の手が上がってないとか爆発と煙の向きから作為的なものを感じるから、ってところだけど。」
「なるほど、それでしたら納得です。」
「納得したならこっちの仕事を続けるか。それで、翼竜の調教はできるのか。」
「はい、騎乗用に調教するのは拙以外でもできます。」
「それなら、屋敷の男性使用人のお仕事に、騎乗竜の世話を入れますか。」
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