第137話 異界探索。3

 とりあえず、十全の感想は置いといて、双子にクン=ヤンについて説明してもらった。


「クン=ヤンとはハイパーボリアの地下に広がる禁忌の土地だ。」

「あそこは初代皇帝と7体の帝竜がハイパーボリアを統一する際に、邪悪なる神々とその民との決戦の地になったらしいです。」

 双子が交互に喋りながら説明してくれるのを十全は黙って聞く。

「かつての戦いにおいてその地への入り口は汚染されて、入ることはできなくなっていました。」

「しかし、その地からは異形の生物たちがたびたび出てくるもんだから、放っておくことができなかった。」

「異形に対して守りを固めるだけじゃなくて、研究がすすめられました。」

「その結果、クン=ヤンの地に入ることができるようになった、――――んだけど。」

「その地は地上とは全く異なる法則が働く異世界でした。」


「それはまるで、太陽系からこのアザトース星系に転移した地球のようなモノか。」

 十全は話を聞いてきりのいいところで質問をする。

「アンタたちのことは知らないけど、ちょっと違う感じかしら。」

「ダーリンたちのカガクは未知の力だけど、あれが人の力だということは理解できる。」

「でもクン=ヤンの力は全然違った。」

「俺達地球人もこちらに来てから、元の能力より強くなったぞ。」

「それでもその力は人の力。あそこの力は人が爬虫類になる様なものだった。」

「でも、ボリア帝国にはミノタウロスやオーガ、ゴブリンとか居るじゃないか。」

「あれらは亜人種、純粋な人種ではないけど人に分類できるもの。」

「アンタらからしたら、アイツらは人間じゃないってか。」

「そこは断言しないでおこうかな。」

「まぁ、亜人種のことはどうでもいい。」

(さすがは奴隷扱いしてるだけあって、扱いはひどそうだ。だが、確かにオレ達地球人からして実際に亜人種と呼ばれるものとの交流をすることになった時、その感情はどういう判断をするのだろう。)


「何にしても、クン=ヤンでは人が人でなくなることがあるんだ。」

「形が変わったり、中身が変わったりする。」

「そんな場所にわざわざ調べて、入っていくつもりか?」

「すでに何度か調査はしている。」

「クームたち皇立学院の研究の成果だ。」

「ほっときゃいいのに。」

「言ったはずだぞ。あそこからは異形の生物が出てくる。その伐根的対策を講じてるんだ。」

「あと、クン=ヤンには豊富な鉱脈が確認されている。」

「あっ、そっちが目的ね。」


「それで、クームたちの意見を聞いてアレはどうするの。」

「ソレはもちろん調べるよ。できればクン=ヤンでの注意点や対策などをまとめといてもらいたいのだが。」

「えぇ~、なんでクームがそんなことしなきゃ。」

「は~い、ダーリンのヤーガにお任せ。でも、なにかご褒美が欲しいな。」

「抜け目ないなぁ。ならば特甲技研の――――」

「そっちじゃなくて、ダーリンからのゴ・ホ・ウ・ビ♡が欲しいんだぞ。」

「……具体的に何が欲しいんだ。」

「甘えさせて。」

「……善処しよう。」

「ダメだ、ダメだ。何2人でいちゃつこうとしてるんだ。」

「だって、クームは手伝てくれないんでしょ。」

「うぐっ、~~~~~~~分かった手伝う、手伝うから二人きりになるなよ。」

「うん、クームも一緒に甘えよう。」

「クームは甘えたりしない。」


 何だろう。

 義理の妹がいる身でありながら、なんだか妹ができたように感じるのだった。

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