第120話 男たちの楽しみ

「ヴォルテール、アレはどうなっている。」

 十全がヴォルテールを執務室に呼び出して例の件を確認してみる。

「はい、今のところ出した案の中から2つほどが実行可能な感じですね。」

「それは。」

「これとこれ。で御座います。」

「ふむ、どちらも実現できれば領地の利益にはつながりそうだな。」

「はい、特にこちらは料理長から是非に実現してほしいと頼まれました。」

「まあ、これに関しては料理の幅を増やすことにもなる。企画としては予算を組むのは容易い。――――だが、問題はヴォルテールの権限に納められるか、だな。どうだ。」

「そうですね、こちらは拙の知識もありますが、事業として行うならば大和の職人を誘致する必要がございます。」

「そうなると、俺が大和に出向くのがいいか、……一度お前と2人で大和にでも行ってみるか。」

「ウルトゥム様がどう言われるかですな。」

「近藤もつれていければいいから、嘘を言わずに普通に人材発掘とコネ作りだ。っと言えばよさそうだな。」

「ウルトゥム様もついてこないでしょうか。」

「俺が領を離れる間の代理が務まるのはウルトゥムだけだ。問題はないだろう。それと、ヴォルテールを今後俺の代理に派遣できるように顔出しさせるとも言っておく。」

「ふむ、確かに今後の身動きの自由度を上げるにはお2人だけで交渉される状況は避けたいですな。」

「そう言う意味では松永家の爵位が上がれば、その下に下部貴族を作っていくことになる。」

「領主の下で働く土地をお持たない貴族ですな。」

「または俺の領地の一部を貸し与えて管理させるとかな。」

「確か予定では公爵にされるようですが。」

「あぁ、だから帝都の北部、実はこのまま日本海側まで広げていくらしいぞ、俺の領地。」

「拙は日本の地理にはまだ疎いですが、やはり大変ですか。」

「大変だと思うよ。琵琶湖までは平地も多いし、ボリアとの戦争で多少の道ができてる。けどその北は山ばっかだ。俺の前世の日本でもどちらかというと田舎だからな。」

「まだ開拓はできてないのですか?」

「北にある若狭湾は漁場としても有名だから早く開拓したいだろうが、街道が出来なきゃ宝の持ち腐れだ。だから北側の探索に騎士団を回したら――――」

「例の異界ですか。」

「そう言う事。陛下もここを足掛かりに街道作りを計画してただけに、こいつの問題は重要になっているらしい。」

「調査のための人員は出るのですよね。」

「最初に過剰要求してみたらそれがそのまま通りそうな様子だ。」

「ふうむ、実はですな……」


「ハァ、お前らにとっての邪神の気配がするだぁ。」

「ハイ。まだ微かにですが。」

「むしろ俺からしたらボリア帝国が邪神なんだけどな。」

「それはどういう。」

「前世の地球にあったファンタジー小説に出てくる邪神の名前とかが、ボリア帝国の名前と被ってるんだよ。」

「なるほど。」

「フーム、ヴォルテール、悪いが話の趣旨変えるぞ。お前の言う邪神の話くわしく教えてくれ。」

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