第93話 新しい仲間。8
「問題……ですか。」
十全が深刻な問題だったらどうしよう、と思い訊ねると、
「簡単な話なんだけどね、これだけのシステムを稼働させるにはエネルギーが足りないんだわ。それも1か所で使うやつじゃないから広範囲にエネルギーを行きわたらせる必要もある。」
「ああ、なるほど。」
聞いてみて納得だった。
平成の世界ならば発電所から潤沢な電力が供給されていて、一般家庭などでは節電だ、と言っても大きな困りごとにはならないものだった。
しかし、前世の世界だって最初は電気は贅沢のものだったはずである。
そしてこの世界は戦争を長くやっていたのだ。
一般へのエネルギーの供給システムはまだ未発達だ。
それはこのフルボッキ領ならばなおさらである。
十全はこれまで軍の施設で生活していてそこそこの供給があった。
しかしこの地には電柱の1本どころか民家すらなかった未開の土地だ。
十全が住んでる屋敷は悪魔が作ったのでいろいろご都合的な性能があったが、新しく作っている家には上下水道すらないのである。
そのことに気が付いた十全は考えてみた。
「インフラを最初っから徹底的に仕上げて行くだぁ。」
十全の意見にツィマットが吠える。
「あぁ、特に上下水道や燃料に変わるガス管など地面の下に埋めるものは先に作っておきたい。」
「いやでも……」
「ウルトゥム、すまないが棟梁を呼んできてくれ。」
「分かりました。」
「――――なあ、思い付きなら……」
頭をガシガシしながらため息をつくツィマットが十全に吐き出すように言う。
「思い付きじゃないさ。最初にインフラを敷設しておかないとダメだって気が付いたんだ。」
「気が付いたって、何がダメなんだ。」
「後付けでインフラを広げよとしても中央に集中していたら、人口もそこに集まる。そうなると再開発がしずらくなりできるのは中と外の格差だ。そうなればスラム化やゴミ溜が生まれて開発にかかる予算や手間が増える。」
「あぁ、なるほどね。最初にインフラを必要以上に広げておけば管理費は無駄にかかるように見えるけど、人口が分散するから長い目で見れば安くつく、か。」
「そうゆう事。しかもこっちは陛下から国家予算を組んでもらっているわけだし、贅沢にやらせてもらおうってね。」
「でも陛下から許してもらえるかい。」
「こっちのインフラが整えば首都からの移住者を増やしていって、首都の人口密度を下げて再開発しやすくする、って言えばまず降りるだろう。」
「なるほどね、それなら賛成だ。して上下水道とかはどんなのにするんだ。」
「それは俺がアイディアを出して、敷設する棟梁の意見を聞きながら、必要な技術を所長に開発してもらうんですよ。」
「おいおい、最初のオーダーはどうするんだ。」
「どっちにしろインフラが伴わないと使えないならゆっくりでいいですよ。通信網と発電所が先ですからね。」
「ウチの仕事だけ多くないかい。」
「全部所長1人でやることないですよ。部下を使ってください。そのための部下ですよ。」
「おけーおっけー、分かりましたよ。ならばさぁ、もうちょっと遊ばせてくれないか?」
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