第92話 新しい仲間。7

 昼ご飯を食べた十全は午後からウルトゥムウとニャルを伴って、ある人の元へと伺った。

「おや、領主様じゃないかい。いらしゃい。」

「領主様とかかしこまった言い方はよしてくださいよ。ツィマット所長。」

「そうかい、それじゃあいらっしゃい、ボッキ君。」

「すいません。領主様でお願いします。」

 十全の素早い手のひら返しに、ツナギ姿のツィマットが「カカッ。」と笑う。

「……ボッキクン?」

「ご主人様のあだ名ですよ。ニャル。」

「ご主人様はボッキクン。……憶えた。」

「ウルトゥム、ニャルに変なことを教えないでもらおう。」

「カカカッ、相変わらず仲が宜しいようで。」

「そんなに良く見えますか?」

「ああ、いいねぇ。ウチも仲間に入れてもらいたいくらいだよ。」

「……冗談ですよね。」

「さぁ、どっちだろねぇ。」

「冗談ならやめてくださいよ。本気にするのが出てきますから。」

「出世街道まっしぐらの若き領主様。そりゃぁ側室に成れるならと一花咲かせようってえ女子はいるだろうね。」

「だから煽る様なことはしないでください。」

「りょーかいりょーかい。で、今日は何の用で来たんだい。」

「新しい開発の企画書を持ってきた。」

 そう言って紙の束をツィマットに渡す。

「へ~、どれどれ。って、陛下の許可が下りてるってこれ企画書じゃなくて発注書じゃん。」

 彼女は文句を言いながらも資料を読む。

演算機コンピューターの個人端末化?……それを高速情報通信でネットワーク化ねぇ。―――――ははぁ、サーバーとか言うホストコンピューターでのでネットワーク内の情報管理。それから――――、ねぇ。」

「はい。」

「これってさぁ、軍の情報部がやることだよね。」

 書類を手の甲でパンパンとしながらツィマットが十全に訊ねる。

「何でこっちでやるの?」

「理由は軍の予算削減が1つ。」

「あぁ、表向きは軍備は減らしてます。てか。」

「で、ウチでやる理由は表向きに陛下から予算がいっぱい送られてくるから。」

「期待の若き領主の開拓事業だもんね。」

「大変なんですよ。」

「こっちだって大変だよ。」

「好きでやっているんでしょう。」

「そっちだってやりたいことがあってやっているんだろう。」

「分かりますか。」

「そりゃぁな、この企画書見れば何となく。陛下とはそれで気が合うんだろ。」

「まぁそうですけど。」

「それでもう一つ質問。この企画だけど、趣味だけじゃないよな。」

「もちろんです。」

「じゃあこの領でどう使うんだ。」

「あぁそれなら、この領は今後他の惑星に対して玄関口にするんですよ。港って言ったら分かりますか。」

「ああ、関所か。」

「そうです。関所、税関のことです。人の入出国、モノの輸出入を管理するデータベースを作るつもりです。」

「現場と管理部門での情報の共有、関所抜け対策にはいいな。」

「更に他の部署でも参照できるようにすることで一部の汚職に対しての抑止力にもなります。」

「なるほどなるほど、合点が言ったゼ。」

 所長は棟梁と気が合いそうだな。と、十全は思った。

「こいつの重要性は分かった。――――だがな、一つ問題があるんだわ。」

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